10:00 AM - 12:00 PM
[PD56] 大学生の幸福感向上への介入課題
追試的研究
Keywords:幸福感, 介入, 楽観性
問 題
ポジティブ心理学の隆盛にともない,近年幸福感に関する研究が増加し,研究成果が積み上げられてきている。我が国においても幸福感研究は行われてきており,特に幸福感の文化差に関する研究成果は目覚ましい(Uchida & Kitayama, 2009など)。幸福感の介入研究の乏しさが指摘されていたが(山崎,2006),近年アメリカを中心として幸福感を向上させるための介入に関する心理学的研究が盛んに行われている(Lyubomirsky, 2007など)。しかしながら,日本人を対象にした幸福感の介入研究はいまだ乏しいのが現実である。本研究の目的はアメリカで行われた幸福感の介入研究について日本人を対象として場合の効果について追試的に検討するものである。
方 法
調査対象者 心理学を専門に学ぶ学科の1年生39名(連続3回の授業にすべて出席したもの)
介入課題
幸福感向上のための12の介入方法を紹介したLyubomirsky(2007 金井訳 2012)を参考に,①感謝介入法(過去二週間の出来事を振り返って,感謝したり,ありがたい,自分は恵まれていると思ったことを5つ以上書く)②楽観的思考法(○年後に最高の自分(最高の自分とは,自分の全ての目標を達成し,すべてがうまく行った自分)になっているところを想像させ,その特徴を書き出す)。➂他者への親切(最近2週間のうち,誰かを助けたこと(誰かが困っているときに助けた,何かを聞かれたときに教えてあげたなどを思いつく限り挙げる),の3つの課題を授業内に実施した。その後,各課題に関する心理学研究を紹介し,詳しく解説した。
調査項目:幸福感:西田(2001)による,Ryff (1989)の心理的well-being尺度日本語版(人格的成長,人生における目的,自律性,自己受容,環境制御力,積極的な他者関係の6因子からなる)。この尺度を,1週目の授業冒頭と,3週目の授業の最後の計2回に渡り,実施した。
調査手続き:授業の流れ
第1週:心理的well-being尺度の実施,・幸福感研究に関する講義,介入課題①(感謝介入法),ペアで共有後,クラス全体で共有,課題に関する説明,まとめ,振り返り
第2週:介入課題②(楽観的思考法),ペアで共有後,クラス全体で共有,課題に関する説明,まとめ,振り返り
第3週:介入課題➂(他者への親切),ペアで共有後,クラス全体で共有,課題に関する説明,心理的well-being尺度,まとめ,振り返り
結 果
介入前後の心理的well-beingの得点について,対応のあるt検定を行った結果,6因子すべてにおいて,授業前よりも授業後の方が高くなった(Table, Figure)。この結果からは,欧米で実施されている幸福感の介入研究の方法が日本人においても適応可能なことが示されたといえる。
考 察
一定の成果がみられたが,この研究はまだ試みの段階である。対照群がないため,精緻な実証研究とは言えない。また,長期的な影響について今後も検討していく必要がある。また,欧米と日本の幸福感のあり方についての文化差については繰り返し報告されている(大石,2009など)。今後は追試的な試みを超えて,日本的な幸福感を向上させるための方法を独自に見出し,洗練していくことが課題である。
ポジティブ心理学の隆盛にともない,近年幸福感に関する研究が増加し,研究成果が積み上げられてきている。我が国においても幸福感研究は行われてきており,特に幸福感の文化差に関する研究成果は目覚ましい(Uchida & Kitayama, 2009など)。幸福感の介入研究の乏しさが指摘されていたが(山崎,2006),近年アメリカを中心として幸福感を向上させるための介入に関する心理学的研究が盛んに行われている(Lyubomirsky, 2007など)。しかしながら,日本人を対象にした幸福感の介入研究はいまだ乏しいのが現実である。本研究の目的はアメリカで行われた幸福感の介入研究について日本人を対象として場合の効果について追試的に検討するものである。
方 法
調査対象者 心理学を専門に学ぶ学科の1年生39名(連続3回の授業にすべて出席したもの)
介入課題
幸福感向上のための12の介入方法を紹介したLyubomirsky(2007 金井訳 2012)を参考に,①感謝介入法(過去二週間の出来事を振り返って,感謝したり,ありがたい,自分は恵まれていると思ったことを5つ以上書く)②楽観的思考法(○年後に最高の自分(最高の自分とは,自分の全ての目標を達成し,すべてがうまく行った自分)になっているところを想像させ,その特徴を書き出す)。➂他者への親切(最近2週間のうち,誰かを助けたこと(誰かが困っているときに助けた,何かを聞かれたときに教えてあげたなどを思いつく限り挙げる),の3つの課題を授業内に実施した。その後,各課題に関する心理学研究を紹介し,詳しく解説した。
調査項目:幸福感:西田(2001)による,Ryff (1989)の心理的well-being尺度日本語版(人格的成長,人生における目的,自律性,自己受容,環境制御力,積極的な他者関係の6因子からなる)。この尺度を,1週目の授業冒頭と,3週目の授業の最後の計2回に渡り,実施した。
調査手続き:授業の流れ
第1週:心理的well-being尺度の実施,・幸福感研究に関する講義,介入課題①(感謝介入法),ペアで共有後,クラス全体で共有,課題に関する説明,まとめ,振り返り
第2週:介入課題②(楽観的思考法),ペアで共有後,クラス全体で共有,課題に関する説明,まとめ,振り返り
第3週:介入課題➂(他者への親切),ペアで共有後,クラス全体で共有,課題に関する説明,心理的well-being尺度,まとめ,振り返り
結 果
介入前後の心理的well-beingの得点について,対応のあるt検定を行った結果,6因子すべてにおいて,授業前よりも授業後の方が高くなった(Table, Figure)。この結果からは,欧米で実施されている幸福感の介入研究の方法が日本人においても適応可能なことが示されたといえる。
考 察
一定の成果がみられたが,この研究はまだ試みの段階である。対照群がないため,精緻な実証研究とは言えない。また,長期的な影響について今後も検討していく必要がある。また,欧米と日本の幸福感のあり方についての文化差については繰り返し報告されている(大石,2009など)。今後は追試的な試みを超えて,日本的な幸福感を向上させるための方法を独自に見出し,洗練していくことが課題である。