10:00 〜 12:00
[PD65] 小中学生版臨床用セルフモニタリング尺度の検討
キーワード:セルフモニタリング, 尺度開発
問題と目的
発達障害児に対する認知行動療法的アプローチを実施する際,セルフモニタリングに対する苦手さへの配慮と工夫を的確に行う必要性がしばしば指摘されている。そのため,そのアセスメントツールとして,小中学生を対象としたセルフモニタリング尺度の開発が期待されている。日本における代表的な尺度としては桜井(1993)が客観的指標として活用が期待される児童用のセルフモニタリング尺度が存在するが,その内容は学習や対人関係に限定されているため,ここでは吉橋ら(2016)に引き続き,臨床的な介入を見据えてさらに広い対象を扱った尺度の開発を目指すこととした。本研究において,セルフモニタリングについては「社会的場面からの社会的な適切さに関する情報に基づいて,自分の行動を管理統制すること」というSnyder(1974)の定義を用い,セルフモニタリングの対象を「対人場面」に限定せず,「時間感覚」,「感情」,「身体感覚」まで範囲を広げ,新たに質問内容を構成することとした。また,「気づき・観察」,「評価・分析」,「対処行動」の3つの段階での測定が可能な小中学生用のセルフモニタリング尺度を検討することを目的とした。
方 法
対象者 公立小学校2校の3年生から6年生までの小学生のうち,保護者より研究の趣旨に同意を得た児童911名(3年生244名,4年生248名,5年生182名,6年生237名)を調査対象とした。
手続き 学級ごとに各担任教諭によってアンケート調査を実施した。項目は「気づき・観察」,「評価・分析」,「対処行動」の3つの段階×「対人場面」,「時間感覚」,「感情」,「身体感覚」の4つの対象×各5項目の合計60項目を作成し,4件法で回答を求めた。
結 果
作成した尺度について,因子分析を行うにあたり,2層の階層構造も想定されたが,まずは探索的因子分析(最尤法,プロマックス回転)を「気づき・観察」,「評価・分析」,「対処行動」の3つの段階のそれぞれに対して行うこととした。
スクリープロットより,いずれの尺度についても2~4因子構造が想定されたため,それぞれの因子数にて因子分析を行った結果,解釈可能性の観点から,いずれも4因子構造(時間・感情・身体・対人)から構成される尺度が適切であると考えられた。また,因子負荷量の低い項目と複数項目へのクロスローディングが見られた項目を削除した結果,各尺度が12項目となり,12×3=36項目の尺度が開発された。そのうち「気づき・観察」尺度の因子分析の結果は以下の通りである(表1)。
考 察
本研究で作成したセルフモニタリング尺度は,自らの状態に気づき,なぜそのような状態になったのかを分析し,その上で実際に対処行動を取れるかどうかまでを尋ねているという点で,段階ごとに教育や介入の効果を測定が出来るという利点を有していると考えられる。
また,対人関係面だけではなく,自分の健康状態や感情,さらには時間感覚という対象まで扱っている点で,幅広い測定が可能となるだろう。
今後はさらなる階層構造などを想定した因子構造の検討,外的な指標との関連,効果測定の実践などに基づいた妥当性や信頼性の検討が必要であると考えられる。
発達障害児に対する認知行動療法的アプローチを実施する際,セルフモニタリングに対する苦手さへの配慮と工夫を的確に行う必要性がしばしば指摘されている。そのため,そのアセスメントツールとして,小中学生を対象としたセルフモニタリング尺度の開発が期待されている。日本における代表的な尺度としては桜井(1993)が客観的指標として活用が期待される児童用のセルフモニタリング尺度が存在するが,その内容は学習や対人関係に限定されているため,ここでは吉橋ら(2016)に引き続き,臨床的な介入を見据えてさらに広い対象を扱った尺度の開発を目指すこととした。本研究において,セルフモニタリングについては「社会的場面からの社会的な適切さに関する情報に基づいて,自分の行動を管理統制すること」というSnyder(1974)の定義を用い,セルフモニタリングの対象を「対人場面」に限定せず,「時間感覚」,「感情」,「身体感覚」まで範囲を広げ,新たに質問内容を構成することとした。また,「気づき・観察」,「評価・分析」,「対処行動」の3つの段階での測定が可能な小中学生用のセルフモニタリング尺度を検討することを目的とした。
方 法
対象者 公立小学校2校の3年生から6年生までの小学生のうち,保護者より研究の趣旨に同意を得た児童911名(3年生244名,4年生248名,5年生182名,6年生237名)を調査対象とした。
手続き 学級ごとに各担任教諭によってアンケート調査を実施した。項目は「気づき・観察」,「評価・分析」,「対処行動」の3つの段階×「対人場面」,「時間感覚」,「感情」,「身体感覚」の4つの対象×各5項目の合計60項目を作成し,4件法で回答を求めた。
結 果
作成した尺度について,因子分析を行うにあたり,2層の階層構造も想定されたが,まずは探索的因子分析(最尤法,プロマックス回転)を「気づき・観察」,「評価・分析」,「対処行動」の3つの段階のそれぞれに対して行うこととした。
スクリープロットより,いずれの尺度についても2~4因子構造が想定されたため,それぞれの因子数にて因子分析を行った結果,解釈可能性の観点から,いずれも4因子構造(時間・感情・身体・対人)から構成される尺度が適切であると考えられた。また,因子負荷量の低い項目と複数項目へのクロスローディングが見られた項目を削除した結果,各尺度が12項目となり,12×3=36項目の尺度が開発された。そのうち「気づき・観察」尺度の因子分析の結果は以下の通りである(表1)。
考 察
本研究で作成したセルフモニタリング尺度は,自らの状態に気づき,なぜそのような状態になったのかを分析し,その上で実際に対処行動を取れるかどうかまでを尋ねているという点で,段階ごとに教育や介入の効果を測定が出来るという利点を有していると考えられる。
また,対人関係面だけではなく,自分の健康状態や感情,さらには時間感覚という対象まで扱っている点で,幅広い測定が可能となるだろう。
今後はさらなる階層構造などを想定した因子構造の検討,外的な指標との関連,効果測定の実践などに基づいた妥当性や信頼性の検討が必要であると考えられる。