10:00 AM - 12:00 PM
[PD66] チーム支援におけるクラス担任のリーダーシップ
教職経験および特別支援教育経験年数による差の検討
Keywords:チーム支援, クラス担任, リーダーシップ
問題と目的
平成28年4月に学校における合理的配慮の提供が義務化されたのに伴い,インクルーシブ教育の一層の推進が期待されている。その中で,クラスに在籍する支援を必要とする子どもに対して,各教員がどのような支援を提供できるかが問われている。本研究では,チーム支援におけるクラス担任の役割に着目し,担任はどのようなリーダーシップを示すことが求められるのか,教職経験等による意識の差を検討する。
方 法
調査協力者 教職経験者480名から協力を得た。このうち養護教諭と,欠損値が多数あったものを除いた426名のデータを分析対象とした。
調査方法 特別支援教育に関する研修会等において,参加者である教職経験者を対象に無記名式の質問紙への回答を依頼した。質問紙は研修会等開始前に配布され,同意を得られた参加者からのみ終了後に回収した。調査時期は2015年7~8月。
調査内容 (1)フェイスシート 性別,年齢,教職経験年数(5年未満/5年以上10年未満/10年以上15年未満/15年以上20年未満/20年以上),特別支援教育経験年数(5年未満/5年以上10年未満/10年以上15年未満/15年以上20年未満/20年以上/経験なし)等について尋ねた。(2)「自分が担任を務めるクラスに支援の必要な子どもがいる状況」を想定するよう求め,支援チームにおいて自分はクラス担任としてどのような態度や力を示す必要があると思うか,チーム支援におけるリーダーシップ項目(谷,2015)を用いて6段階で回答するよう求めた。
結果と考察
天井効果が見られた項目を除く53項目について,特別支援教育経験年数と教職経験年数をそれぞれ独立変数とする分散分析を行った。
教職経験年数(講師経験含む) 「大きな課題を達成するために努力し続ける」(F(4,362)=2.88,p<.05),「たとえ困難であっても,やり遂げようとする意志をもって課題に臨む」(F(4,362)=2.04,p<.10),「メンバーの感情を逆なでせずに,合意に達するよう心掛ける」(F(4,362)=2.15,p<.10),「メンバーの力を借りて課題に臨む」(F(4,362)=2.58,p<.05)「新しい試みを積極的に取り入れる」(F(4,362)=3.55,p<.01),「課題にてきぱきと取り組む」(F(4,362)=2.51,p<.05),「重要な決断を下す時には,チームのメンバーの合意を得る」(F(4,362)=2.54,p<.05),「自分の仕事はこうあるものだという明確な形がある」,(F(4,362)=2.19,p<.10),「メンバーの要求が自分の意図に反しても,平常心で柔軟に対応する」(F(4,362)=2.18,p<.10)で有意差が認められた。多重比較(Bonferroni法)の結果,教職経験年数が5年未満の人は20年以上の人よりも「大きな課題を達成するために努力し続ける」「メンバーの力を借りて課題に臨む」「新しい試みを積極的に取り入れる」「課題にてきぱきと取り組む」「重要な決断を下す時には,チームのメンバーの合意を得る」ことの必要性を高く評価していた。
特別支援教育経験年数 「大きな課題を達成するために努力し続ける」(F(5,333)=2.21,p<.10),「自分が取り組んでいる課題は,やり遂げる価値のあるものであると信じる」(F(5,333)=2.22,p<.10),「メンバーとの間で対立を生じさせないようにする」(F(5,333)=2.98,p<.05),「仕事の節目には,振り返りを行う」,(F(5,333)=2.93,p<.05),「論理的に自分の考えを述べ,メンバーを納得させる」(F(5,333)=1.91,p<.10),「メンバーの質問に対して的確に答える」(F(5,333)=1.89,p<.10),「チームの課題を,常に多角的な視点で捉える」(F(5,333)=1.89,p<.10)において有意差が認められた。多重比較(Bonferroni法)の結果,特別支援教育経験が5年未満の人は20年以上の人よりも,チーム支援において「大きな課題を達成するために努力し続ける」こと,「論理的に自分の考えを述べ,メンバーを納得させる」ことの必要性を高く評価していた。また,特別支援教育経験が15年未満の人は20年以上の人よりも「自分が取り組んでいる課題は,やり遂げる価値のあるものであると信じる」ことの必要性を高く評価していた。
以上の結果から,教職経験及び特別支援教育経験が20年以上のベテラン群よりも,5年未満と経験が浅い群の方が,クラス担任によるリーダーシップ発揮の必要性をより感じている傾向があることが示唆された。
付 記
本研究は,国立大学法人運営費交付金特別経費「小・中学校における特別支援教育スーパーバイザー(仮称)育成プログラムの開発」(平成25〜27年度,兵庫教育大学特別支援教育モデル研究開発室)において収集されたデータの一部を分析・検討したものである。
平成28年4月に学校における合理的配慮の提供が義務化されたのに伴い,インクルーシブ教育の一層の推進が期待されている。その中で,クラスに在籍する支援を必要とする子どもに対して,各教員がどのような支援を提供できるかが問われている。本研究では,チーム支援におけるクラス担任の役割に着目し,担任はどのようなリーダーシップを示すことが求められるのか,教職経験等による意識の差を検討する。
方 法
調査協力者 教職経験者480名から協力を得た。このうち養護教諭と,欠損値が多数あったものを除いた426名のデータを分析対象とした。
調査方法 特別支援教育に関する研修会等において,参加者である教職経験者を対象に無記名式の質問紙への回答を依頼した。質問紙は研修会等開始前に配布され,同意を得られた参加者からのみ終了後に回収した。調査時期は2015年7~8月。
調査内容 (1)フェイスシート 性別,年齢,教職経験年数(5年未満/5年以上10年未満/10年以上15年未満/15年以上20年未満/20年以上),特別支援教育経験年数(5年未満/5年以上10年未満/10年以上15年未満/15年以上20年未満/20年以上/経験なし)等について尋ねた。(2)「自分が担任を務めるクラスに支援の必要な子どもがいる状況」を想定するよう求め,支援チームにおいて自分はクラス担任としてどのような態度や力を示す必要があると思うか,チーム支援におけるリーダーシップ項目(谷,2015)を用いて6段階で回答するよう求めた。
結果と考察
天井効果が見られた項目を除く53項目について,特別支援教育経験年数と教職経験年数をそれぞれ独立変数とする分散分析を行った。
教職経験年数(講師経験含む) 「大きな課題を達成するために努力し続ける」(F(4,362)=2.88,p<.05),「たとえ困難であっても,やり遂げようとする意志をもって課題に臨む」(F(4,362)=2.04,p<.10),「メンバーの感情を逆なでせずに,合意に達するよう心掛ける」(F(4,362)=2.15,p<.10),「メンバーの力を借りて課題に臨む」(F(4,362)=2.58,p<.05)「新しい試みを積極的に取り入れる」(F(4,362)=3.55,p<.01),「課題にてきぱきと取り組む」(F(4,362)=2.51,p<.05),「重要な決断を下す時には,チームのメンバーの合意を得る」(F(4,362)=2.54,p<.05),「自分の仕事はこうあるものだという明確な形がある」,(F(4,362)=2.19,p<.10),「メンバーの要求が自分の意図に反しても,平常心で柔軟に対応する」(F(4,362)=2.18,p<.10)で有意差が認められた。多重比較(Bonferroni法)の結果,教職経験年数が5年未満の人は20年以上の人よりも「大きな課題を達成するために努力し続ける」「メンバーの力を借りて課題に臨む」「新しい試みを積極的に取り入れる」「課題にてきぱきと取り組む」「重要な決断を下す時には,チームのメンバーの合意を得る」ことの必要性を高く評価していた。
特別支援教育経験年数 「大きな課題を達成するために努力し続ける」(F(5,333)=2.21,p<.10),「自分が取り組んでいる課題は,やり遂げる価値のあるものであると信じる」(F(5,333)=2.22,p<.10),「メンバーとの間で対立を生じさせないようにする」(F(5,333)=2.98,p<.05),「仕事の節目には,振り返りを行う」,(F(5,333)=2.93,p<.05),「論理的に自分の考えを述べ,メンバーを納得させる」(F(5,333)=1.91,p<.10),「メンバーの質問に対して的確に答える」(F(5,333)=1.89,p<.10),「チームの課題を,常に多角的な視点で捉える」(F(5,333)=1.89,p<.10)において有意差が認められた。多重比較(Bonferroni法)の結果,特別支援教育経験が5年未満の人は20年以上の人よりも,チーム支援において「大きな課題を達成するために努力し続ける」こと,「論理的に自分の考えを述べ,メンバーを納得させる」ことの必要性を高く評価していた。また,特別支援教育経験が15年未満の人は20年以上の人よりも「自分が取り組んでいる課題は,やり遂げる価値のあるものであると信じる」ことの必要性を高く評価していた。
以上の結果から,教職経験及び特別支援教育経験が20年以上のベテラン群よりも,5年未満と経験が浅い群の方が,クラス担任によるリーダーシップ発揮の必要性をより感じている傾向があることが示唆された。
付 記
本研究は,国立大学法人運営費交付金特別経費「小・中学校における特別支援教育スーパーバイザー(仮称)育成プログラムの開発」(平成25〜27年度,兵庫教育大学特別支援教育モデル研究開発室)において収集されたデータの一部を分析・検討したものである。