日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PD(01-83)

ポスター発表 PD(01-83)

2017年10月8日(日) 10:00 〜 12:00 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 〜 12:00

[PD67] 予備校生のストレスに関する研究

自由記述アンケートによる予備校生ストレッサーに関する探索的調査

竹内利光1, 近藤和也2 (1.河合塾, 2.河合塾)

キーワード:ストレッサー, 予備校生

問   題
 大学受験は,多くの受験生にとってストレスを伴う経験となっている。どのようなことが受験生のストレッサーになっているのだろうか。小山(2001)は,高校に在籍する大学受験生を対象とした研究で,「志望大学に合格するのに必要な学力と自分の現在の学力とのギャップ」,「志望校・成績・勉強法について教師から受ける指導」の2因子を大学受験生のストレッサーとして挙げている。本研究では,先行研究ではあまり扱われてこなかった,予備校に通学した経験をもつ大学生を対象とし,受験生生活におけるストレッサーについて時期別に検討することを目的とした。
方   法
1.調査対象
大学受験を経験した大学生1年生4名
2.調査方法
「大学受験前の1年間についてのアンケート」(自由記述式)を配布し,自宅での回答を依頼した。「大学受験までの1年間を振り返って,感じた辛さや大変さについて,また,それらの辛さや大変さにどのように対処したかについて自由に記述してください。回答はなるべく具体的にお願いします。」という質問に,A.夏まで,B.夏,C.直前期前,D.直前期の4つの時期別に回答してもらった。回答については,内容をまとめ分析した。
結   果
1. 夏まで
「社会的身分がないことについて辛さを感じた」「基本的な知識が身につききってないから焦る」などの記述があった。主にこの時期では,高校生という社会的に認識されている「身分」がなくなり,周囲が大学生や社会人になっている中で,自分の位置がはっきりとしない状況や,大学に合格できなかったことに対して自分の学力の低かったという認識がストレッサーとなり,不安や辛さを体験していることが推察された。
2. 夏
「成績が全く伸びないことに対する不安が大きかった」「一日が長く,メリハリがつけにくい」「だんだん外出する気が起きにくくなる」などの記述があった。予備校生として受験生生活を始めて3か月から4か月経過したこの時期では,成績が伸びていないという認識や,生活リズムのコントロールがしづらくなることなどがストレッサーとなり,不安や抑うつ的な感情を体験していることがうかがわれた。
3. 直前期前
「本当に現状のままで合格できるのか不安になった」「あまり出ないものがスラスラ解けない時がある」などの記述があった。試験が近づくこの時期では,問題が解けないことなどがストレッサーとなり,焦りや不安が高まっていた。
4. 直前期
「頑張ってもどうせ落ちるのではないか,という根拠のない不安」「計算ミスが怖くてスピードが落ちる」「一日一日が過ぎていくのがとても怖かった」「親に助けてもらってここまできたのだから,絶対に受からなければいけないというプレッシャーがある」などの記述があった。12月から2月にあたるこの時期では,試験が目前に控えていることから,合格しないのではないかという認識や,周囲からのプレッシャーの認識などがストレッサーとなり,怖さや不安を感じていることが示唆された。
考   察
本研究では,予備校生生活を時期別に検討することによってストレッサーの変化などの一端を見ることができた。このような大学受験生が持つストレッサーについて,さらに検討を加え,ストレスマネジメントプログラムの開発・実践をとおして予防的な心理教育的支援について研究を進めていければと考える。
引用文献
小山秀樹(2001).大学受験生のストレスに関する研究 日本教育心理学会第43回総会発表論文集,153.