The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PD(01-83)

ポスター発表 PD(01-83)

Sun. Oct 8, 2017 10:00 AM - 12:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 AM - 12:00 PM

[PD77] 教師を志望する理由と教師の学習動機づけの関連

FIT - Choice Scaleを用いた検討

三和秀平1, 外山美樹2 (1.筑波大学大学院 ・ 日本学術振興会, 2.筑波大学)

Keywords:教師, 志望理由, 学習動機

目   的
 ベネッセ教育総合研究所(2010)が行った調査では,将来なりたい職業として“学校の先生”が上位に入っており,教師の人気の高さがうかがえる。その一方で,急速な社会の変化などから,教師の質の向上が問題となっている。中央教育審議会(2005)の答申で“国民が求める学校教育を実現するためには(省略)広く社会から尊敬され,信頼される質の高い教師を養成・確保することが不可欠である”と述べられているが,質の高い教師の確保のためには,教師のどのような点に魅力を感じ,何が教師を目指す理由となりえるのかを把握すること,またどのような理由が教師になった後の学びと関連するのかを検討することが重要だろう。
 そこで本研究では,様々な国において調査が行われているWatt & Richardson(2007)のFactors Influencing Teaching Choice Scale(FIT – Choice Scale)を用いて本邦の教師を志望する理由について調査し,教師の学習動機づけとの関連を検討する。

方   法
対象 楽天リサーチに委託し,現役の小学校教師および中学校教師計300名を対象にWeb調査を行った(平均年齢48.25歳(SD=9.50))。内訳は,小学校男性127名,小学校女性45名,中学校男性106名,中学校女性22名であった。
使用尺度 a. 教師を志望する理由については,FIT – Choice Scale(Watt & Richardson, 2007)の翻訳版(富田, 2016)を使用した(38項目7件法)。この尺度は,教師を志望する理由と,教職に関する考え方に関する項目で構成される。b. 教師の学習動機づけについては,教科指導学習動機尺度(三和・外山, 2015)を使用した(29項目4件法)。

結果と考察
 まず,FIT – Choice Scaleの各下位尺度の得点を見ていくと,教師を志望する理由としてはIntrinsic value (M=5.19)やShape future of children(M=5.06)の得点が高かった。教職に関する興味や,子どもの将来に関わる点が魅力と感じていることがうかがえる。
 次に,教師を志望する理由と教師の学習動機との関連を検討するために,相関係数を算出した(Table 1)。その主な結果としてIntrinsic value,Ability,Make social contribution,Prior experiences,Shape future of children, Work with childrenは適応的な動機づけであると考えられる“内発的動機づけ”“子ども志向”“熟達志向”と正の相関を示した。一方で, Time for familyは“子ども志向”や“熟達志向”と負の相関を“無関心”や“承認・比較志向”と正の関連を示している。日本の教師の時間的な拘束は他国に比べても長く,近年の問題である。時間に関する志望理由と教師の適応との関連は更なる検討が必要であろう。