The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PD(01-83)

ポスター発表 PD(01-83)

Sun. Oct 8, 2017 10:00 AM - 12:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 AM - 12:00 PM

[PD82] ルーブリックに基づく自己採点がレポートの引用文献の記載に与える影響(2)

認知心理学修了レポートにおける検討

林美都子 (北海道教育大学函館校)

Keywords:ルーブリック, メタ認知

問題と目的
 ルーブリックは学生らに主体的学習を促す手法の一つであり(松下, 2014),教員と学生とが同一の評価基準を共有することにより,より適切なメタ認知能力の向上に寄与する(今井・加藤, 2014, 2015)等の教育効果が期待される。
 林(2016)では,認知心理学に関する800字ミニレポートを取り上げ,7項目3段階の評価基準を示しただけの場合よりも,同内容をルーブリック形式で示した評価基準に基づいて自己採点を行わせた方が,引用文献の記載率が向上することを示した。本研究では,内容をさらに精査したルーブリックを用いて,認知心理学に関する2000字程度のレポートにおいても同様の効果が得られるか検証する。
方   法
調査対象者:
基準明示群:2014年度認知心理学受講生123名。
 ルーブリック群:2015年度同受講生73名。
手続き:いずれの群においても,修了レポート課題の〆切2か月前に,レポートのテーマ「日常生活の中における認知心理学」を示し,また引用文献に関して,表1に示した内容を教示した。その際,基準明示群に対しては口頭とパワーポイントによって,箇条書きで内容を示したが,ルーブリック群には,表1の通りルーブリック形式で示し,なおかつレポートと一緒にルーブリックでの自己採点も提出するよう求めた。
結   果
 表2には基準明示群並びにルーブリック群の各群における引用文献記載の有無と引用文献がある場合には,その件数別の割合を示した。カイ自乗検定を行ったところ,両群の偏りは有意であった(χ2(3)=11.05, p<.05)。残差分析の結果,ルーブリック群の方が引用文献なしが少なく,引用文献数3件以上は,ルーブリック群の方が多いことが示された。
 また,引用文献の種類に関して分類したところ,両群ともに「教科書」が最も多く,次いで「専門書」であった。基準明示群では3番目に多かったのは「WEBからの引用」ついで「一般書」であったが,ルーブリック群では「論文」ついで「WEBからの引用」となっていた。またルーブリック群独自項目として,「学生オリジナル実験」があった。
考   察
 本研究の結果,林(2016)同様,基準を明示するだけでなくルーブリックによる自己採点を求めると引用文献のないレポートは減ることが示された。引用数も3件以上と多く,論文や独自の実験を根拠とするなど,ルーブリックの活用により,レポートの引用文献が質・量ともに向上することが示唆された。