1:30 PM - 3:30 PM
[PE24] 大人の声がけが子どものやりとりに対する積極性や知識獲得に及ぼす影響
Keywords:知識獲得, 協同問題解決, ピア
目 的
課題を熟知させたとしても,子どもは,大人のように,相手の状態に合わせて方略の使用法を分かりやすく,具体的に伝えたりできない。そのため,課題を熟知していない大人と組んだ場合よりも相手の知識獲得を導けない(Radziszewska & Rogoff,1991)。このことは,大人は,相手のやりとりへの積極性を上手く引き出せることを示している。そこで,本研究では,大人が通常行っている子どもへの接し方が,やりとりへの積極性をどの程度引き出しているのかに関して,子ども同士のやりとり(子ども条件)と大人とのやりとりを比較していく。また,その中で,大人が如何に子どもの知識獲得を促しているのか明らかにする。なお,身体の積極性よりも思考の積極性の方がやりとりを通した知識獲得を促進する(Nada & Maruno,2017)。こういったことから,やりとりに個が思考の上でも積極的に参加していることを実証的に示せられるエラーバイアス(:やりとりにおいて自分がしたことを相手がしたと誤認識する以上に,相手がしたことを自分がしたと誤認識する傾向)を用いての検討を行う(Nada & Maruno, 2017)。
方 法
実験参加児 子ども条件:14名(平均年齢4.3歳),大人条件:14名(平均年齢4.3歳),大人意味づけ条件:14名(平均年齢4.2歳)。
研究の流れ 園児は,まず,ペアの相手と部品を組み立てていく順番を交代しながら構成玩具を作った。その後,構成玩具の各部品を“誰”が作ったのか尋ねられ,単独で再度構成玩具を作る(ポスト試行)よう求められた。なお,大人意味づけ条件では,部品の組み合わせ方に関して,大人独自の考えをペアの相手に伝えながら組み立てた。
結 果
Table1に各条件におけるソースモニタリングエラーの生起頻度を示す。I didエラー(実際には相手がしたことを自分がしたと誤った)からYou didエラー(実際には自分がしたことを相手がしたと誤った)を引いてエラーバイアスを算出し,1要因の分散分析を行ったところ,条件間で有意差が見られた(F(2,38)=4.84,p<.05)ため,多重比較を行った。その結果,子ども条件と大人条件,及び,子ども条件と大人意味づけ条件間で有意差(全てp<.01)が得られ,子ども条件で最もエラーバイアスが見られることが判明した。次に,協同活動セッションで行った手順通りにポスト試行時に各構成玩具を完成できるようになっている程度が知識獲得の程度を示しているとし,各実験参加児のポスト試行における玩具の組み立て方を分類した。その結果をTable2に示す。1要因の分散分析を行ったところ,知識獲得の程度は条件間で異なるという有意差が見られた(F(2,38)=3.97,p<.05)ため,多重比較を行った。その結果,子ども条件と大人条件との間(p<.05),大人条件と大人意味づけ条件との間(p<.01)に有意差が見られ,大人意味づけ条件におけるやりとりは,他の条件のやりとりよりも知識獲得の程度を高められるとはいえないことが明らかになった。
考 察
大人意味づけ条件におけるエラーバイアスの生起と知識獲得の程度を子ども条件のものと比較すると,エラーバイアスの生起程度は子ども条件よりも低く,知識獲得の程度は子ども条件と同程度であった。これらのことは,やりとりにおいて,大人が,自身の行為の意味づけを行っていくように子どもと関わっていくことは,子どものやりとりに対する高い積極性をそこまで引き出せないものの,子どもは,大人の発言内容を利用でき,やりとりに積極的に参加していった場合と同程度の知識獲得を促せることを意味している。人は,言語を利用することで,自己の行動に対するプランニングをより適切に行える(Berk,1992)。大人意味づけ条件の実験参加児は,相手が述べた部品の配置の仕方に対する意味づけを思い出しながらポスト試行時に各玩具を組み立てられたため,知識獲得の様相を示せられたということである。
課題を熟知させたとしても,子どもは,大人のように,相手の状態に合わせて方略の使用法を分かりやすく,具体的に伝えたりできない。そのため,課題を熟知していない大人と組んだ場合よりも相手の知識獲得を導けない(Radziszewska & Rogoff,1991)。このことは,大人は,相手のやりとりへの積極性を上手く引き出せることを示している。そこで,本研究では,大人が通常行っている子どもへの接し方が,やりとりへの積極性をどの程度引き出しているのかに関して,子ども同士のやりとり(子ども条件)と大人とのやりとりを比較していく。また,その中で,大人が如何に子どもの知識獲得を促しているのか明らかにする。なお,身体の積極性よりも思考の積極性の方がやりとりを通した知識獲得を促進する(Nada & Maruno,2017)。こういったことから,やりとりに個が思考の上でも積極的に参加していることを実証的に示せられるエラーバイアス(:やりとりにおいて自分がしたことを相手がしたと誤認識する以上に,相手がしたことを自分がしたと誤認識する傾向)を用いての検討を行う(Nada & Maruno, 2017)。
方 法
実験参加児 子ども条件:14名(平均年齢4.3歳),大人条件:14名(平均年齢4.3歳),大人意味づけ条件:14名(平均年齢4.2歳)。
研究の流れ 園児は,まず,ペアの相手と部品を組み立てていく順番を交代しながら構成玩具を作った。その後,構成玩具の各部品を“誰”が作ったのか尋ねられ,単独で再度構成玩具を作る(ポスト試行)よう求められた。なお,大人意味づけ条件では,部品の組み合わせ方に関して,大人独自の考えをペアの相手に伝えながら組み立てた。
結 果
Table1に各条件におけるソースモニタリングエラーの生起頻度を示す。I didエラー(実際には相手がしたことを自分がしたと誤った)からYou didエラー(実際には自分がしたことを相手がしたと誤った)を引いてエラーバイアスを算出し,1要因の分散分析を行ったところ,条件間で有意差が見られた(F(2,38)=4.84,p<.05)ため,多重比較を行った。その結果,子ども条件と大人条件,及び,子ども条件と大人意味づけ条件間で有意差(全てp<.01)が得られ,子ども条件で最もエラーバイアスが見られることが判明した。次に,協同活動セッションで行った手順通りにポスト試行時に各構成玩具を完成できるようになっている程度が知識獲得の程度を示しているとし,各実験参加児のポスト試行における玩具の組み立て方を分類した。その結果をTable2に示す。1要因の分散分析を行ったところ,知識獲得の程度は条件間で異なるという有意差が見られた(F(2,38)=3.97,p<.05)ため,多重比較を行った。その結果,子ども条件と大人条件との間(p<.05),大人条件と大人意味づけ条件との間(p<.01)に有意差が見られ,大人意味づけ条件におけるやりとりは,他の条件のやりとりよりも知識獲得の程度を高められるとはいえないことが明らかになった。
考 察
大人意味づけ条件におけるエラーバイアスの生起と知識獲得の程度を子ども条件のものと比較すると,エラーバイアスの生起程度は子ども条件よりも低く,知識獲得の程度は子ども条件と同程度であった。これらのことは,やりとりにおいて,大人が,自身の行為の意味づけを行っていくように子どもと関わっていくことは,子どものやりとりに対する高い積極性をそこまで引き出せないものの,子どもは,大人の発言内容を利用でき,やりとりに積極的に参加していった場合と同程度の知識獲得を促せることを意味している。人は,言語を利用することで,自己の行動に対するプランニングをより適切に行える(Berk,1992)。大人意味づけ条件の実験参加児は,相手が述べた部品の配置の仕方に対する意味づけを思い出しながらポスト試行時に各玩具を組み立てられたため,知識獲得の様相を示せられたということである。