1:30 PM - 3:30 PM
[PE26] 習得回避目標が反応時間に及ぼす影響
Keywords:達成目標, 習得回避目標
問題と目的
達成目標理論には,習得目標―遂行(コンピテンスの実証)目標のどちらにも接近(成功やコンピテンスに接近を目指す)―回避(失敗やインコンピテンスを回避を目指す)の概念を組み合わせ,習得接近目標,習得回避目標,遂行接近目標および遂行回避目標を仮定する2×2達成目標モデルがある(Elliot & McGregor, 2001)。習得回避目標の典型例としては,間違いをしないようにする完璧主義者が挙げられている。
概念としては,習得接近目標と習得回避目標に分けられているが,習得回避目標の効果は不安や心配などのネガティブ感情との正の関連が示されているものの,課題成績や学習方略との関連については研究によって一貫しておらず,習得回避目標が学習にどのような影響を与えるのか明らかになっていないといえる。
習得回避目標が有能さの喪失回避を目指す目標であるならば,課題に対して失敗しないように慎重に取り組むことが予測される。また不安感情との正の関連が示されていることからも,習得回避目標は行動の抑制と関わることが予測される。
課題成績については,Van Yperen, Elliot, & Anseel(2009)が,統制群と4つの達成目標の比較を行っている。この実験では,言語課題を用いてその遂行成績を比較し,習得回避目標のみにおいて,課題成績の向上がみられない(実験1),もしくは課題成績の低下がみられたこと(実験2)を報告した。しかし,Van Yperen et al.(2009)では,課題成績のみを比較しているだけであり,なぜ習得回避目標群だけに遂行成績の低下がみられたのか,遂行成績の低下の背景にあると思われる使用した学習方略などについて明らかでない。
本研究では,Wisconsinカード分類課題を用いて,正答後と誤答後の反応時間の違いから,習得回避目標の学習行動へ及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。
方 法
実験参加者 大学生及び大学院生134名(女性86名,男性47名,平均年齢20.57歳,SD = 3.21)が実験参加し,習得回避目標条件,習得接近目標条件,遂行回避目標条件,統制条件の4群に割りてられた。
課題 Wisconsinカード分類課題を120試行実施した。課題はPsychoToolKitを用いて作成し,10試行ごとに分類基準が変わるように作成した。
達成目標の操作 達成目標を実験場面で操作した先行研究(Van Yperen et al., 2009)を参考に,4つの達成目標のそれぞれを強調する教示を課題の開始前に提示した。
手続き 本研究の実験では,達成目標を操作する教示と課題の教示を提示し,分類課題を実施し,最後に達成目標の操作チェックを実施した。
結果と考察
参加者ごとに正答後試行と誤答後試行の平均反応時間を算出し,各条件ごとの平均反応時間を分布をFigure 1に示す。反応時間を従属変数に,2(試行:正答後試行,誤答後試行)×4(条件:習得回避目標条件,習得接近目標条件,遂行回避目標条件,統制条件)の分散分析を行った。その結果,誤答後試行は正答後試行よりも有意に反応時間が遅いことが示された(F (1, 130) = 69.99, p < .001, η2 = .08)。また,条件の影響は有意傾向であり(F (3, 130) = 2.25, p = .09, η2 = .04),交互作用は非有意であった(F (3, 130) = 0.89, p = .45, η2 < .01)。Dunnettの方法により習得回避目標群とその他の3群をそれぞれ比較する多重比較を行った結果,習得回避目標群は,統制群よりも反応時間が速いことが示された(p < .05)。
本研究の結果,習得回避目標は何も目標を提示されない状況よりも素早く判断するようになることが示唆された。
達成目標理論には,習得目標―遂行(コンピテンスの実証)目標のどちらにも接近(成功やコンピテンスに接近を目指す)―回避(失敗やインコンピテンスを回避を目指す)の概念を組み合わせ,習得接近目標,習得回避目標,遂行接近目標および遂行回避目標を仮定する2×2達成目標モデルがある(Elliot & McGregor, 2001)。習得回避目標の典型例としては,間違いをしないようにする完璧主義者が挙げられている。
概念としては,習得接近目標と習得回避目標に分けられているが,習得回避目標の効果は不安や心配などのネガティブ感情との正の関連が示されているものの,課題成績や学習方略との関連については研究によって一貫しておらず,習得回避目標が学習にどのような影響を与えるのか明らかになっていないといえる。
習得回避目標が有能さの喪失回避を目指す目標であるならば,課題に対して失敗しないように慎重に取り組むことが予測される。また不安感情との正の関連が示されていることからも,習得回避目標は行動の抑制と関わることが予測される。
課題成績については,Van Yperen, Elliot, & Anseel(2009)が,統制群と4つの達成目標の比較を行っている。この実験では,言語課題を用いてその遂行成績を比較し,習得回避目標のみにおいて,課題成績の向上がみられない(実験1),もしくは課題成績の低下がみられたこと(実験2)を報告した。しかし,Van Yperen et al.(2009)では,課題成績のみを比較しているだけであり,なぜ習得回避目標群だけに遂行成績の低下がみられたのか,遂行成績の低下の背景にあると思われる使用した学習方略などについて明らかでない。
本研究では,Wisconsinカード分類課題を用いて,正答後と誤答後の反応時間の違いから,習得回避目標の学習行動へ及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。
方 法
実験参加者 大学生及び大学院生134名(女性86名,男性47名,平均年齢20.57歳,SD = 3.21)が実験参加し,習得回避目標条件,習得接近目標条件,遂行回避目標条件,統制条件の4群に割りてられた。
課題 Wisconsinカード分類課題を120試行実施した。課題はPsychoToolKitを用いて作成し,10試行ごとに分類基準が変わるように作成した。
達成目標の操作 達成目標を実験場面で操作した先行研究(Van Yperen et al., 2009)を参考に,4つの達成目標のそれぞれを強調する教示を課題の開始前に提示した。
手続き 本研究の実験では,達成目標を操作する教示と課題の教示を提示し,分類課題を実施し,最後に達成目標の操作チェックを実施した。
結果と考察
参加者ごとに正答後試行と誤答後試行の平均反応時間を算出し,各条件ごとの平均反応時間を分布をFigure 1に示す。反応時間を従属変数に,2(試行:正答後試行,誤答後試行)×4(条件:習得回避目標条件,習得接近目標条件,遂行回避目標条件,統制条件)の分散分析を行った。その結果,誤答後試行は正答後試行よりも有意に反応時間が遅いことが示された(F (1, 130) = 69.99, p < .001, η2 = .08)。また,条件の影響は有意傾向であり(F (3, 130) = 2.25, p = .09, η2 = .04),交互作用は非有意であった(F (3, 130) = 0.89, p = .45, η2 < .01)。Dunnettの方法により習得回避目標群とその他の3群をそれぞれ比較する多重比較を行った結果,習得回避目標群は,統制群よりも反応時間が速いことが示された(p < .05)。
本研究の結果,習得回避目標は何も目標を提示されない状況よりも素早く判断するようになることが示唆された。