The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PE(01-80)

ポスター発表 PE(01-80)

Sun. Oct 8, 2017 1:30 PM - 3:30 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:30 PM - 3:30 PM

[PE47] 好奇心の高さが自己調整学習に及ぼす影響

寺田未来1, 川本大史#2 (1.大手前大学, 2.東京大学)

Keywords:好奇心, 自己調整学習

問   題
 好奇心は内発的動機づけの一つとして,人の行動にさまざまな影響を及ぼす。西川・吉津・雨宮・高山(2015)は,新しい機会を探し求める「伸展型好奇心」と,予期しない出来事を積極的に受け入れようとする「包括型好奇心」がそれぞれ心理的well-beingや精神的健康に及ぼす影響を検討した。その結果,いずれも主観的幸福感や心理的well-beingと関連し,また伸展型好奇心が高い人は,自己の成長を指向する傾向,包括型好奇心が高い人は,自律性,環境制御力(状況への順応),人生における目的と自己受容の傾向と関係があることが示された。
 このことから,伸展型好奇心旺盛な人は,新規性を求め挑戦する力,包括型好奇心旺盛な人は,予期しない状況を適切にコントロールする力が長けているといえるだろう。これら双方の高さは,失敗したとしても素早く立ち直ることや,失敗を恐れず状況を可変的に捉え,チャレンジや努力が可能であるという点で,自己効力感に結び付くと考えることができる。加えて自己効力感は個人の学習方略の利用と密接にかかわる。本研究では伸展型,包括型2つの好奇心,自己効力感,学習方略の関連について,横断調査をもとに検討する。

方   法
調査協力者:株式会社ジャストシステム社の調査サービスFastaskに登録しているモニタのうち179名の大学生(平均20.00歳:女性82名)の協力を得た。
質問項目:①好奇心:The Curiosity and Exploration Inventory (西川ら,2015)9項目(α=.90)を用いた。②自己効力感:The General Self-Efficacy Scale (坂野・東条,1986)16項目(α=.64)を用いた。③学習方略:認知的側面(伊藤,1996),メタ認知的側面(市原・新井,2006),動機づけ的側面(伊藤・神藤,2003)23項目 (α=.87)を用いた。

結   果
 各変数の相関係数を算出した結果,伸展型好奇心と,自己効力感(r=.30,p<.01),学習方略(r=.22,p<.01)ともに正の関連が認められた。包括的好奇心は自己効力感(r=.32,p<.01)と関連し,学習方略とは無相関であった(r=.07)。
 伸展型と包括型それぞれを統制した偏相関を求めた結果,伸展型好奇心は学習方略(r=.26,p<.01)とのみ関連し自己効力感とは無相関であった(r=.09)。包括的好奇心は自己効力感と正の関連(r=.15,p<.05),学習方略とは負の関連をもった(r=-.15,p<.05)。多変量重回帰分析の結果も,伸展型好奇心は学習方略の利用を促す(β=.39,p<.01)のみであった。包括的好奇心は学習方略の利用を妨げ(β=-.22,p<.05),自己効力感に正の影響を与えていた(β=.22,p<.05)。
 伸展型と包括型の双方の高さが自己効力感と学習方略に与える影響を検討するため,Step1に2つの好奇心,Step2に交互作用項を投入し重回帰分析を実施した。自己効力感,学習方略ともに交互作用効果が有意だった。

考   察
 好奇心のうち伸展型と包括的好奇心はそれぞれ異なる機能をもつことが示唆された。伸展型好奇心の旺盛な人は,新規性に加え自己の成長や計画性の高さとかかわることから,学習方略の利用に積極的である。情報の明確化・探索を望む認知欲求をもつこととも一致する。包括的好奇心の旺盛な人は,曖昧さ,不確実や予期しない事実へのコントロールを求め,いわば失敗を恐れず立ち向かうという自己効力感に影響を与える。一方,学習方略の利用は,人生や自らの人格の成長にかかわる中長期的な取り組みではなく,困難さや複雑さへの挑戦という短期的な取り組みであることから,包括的好奇心とは相いれない。また情報の明確化ではなく曖昧な状況への適応力にもかかわることから包括的好奇心は学習方略に負に働く。
 本研究より,伸展型,包括型の2つの好奇心が互いに機能することの必要性が示された。伸展型好奇心は短期的かつ新規な機会への挑戦を促し,包括的好奇心は中長期的な自己成長,不確実性への耐性に寄与すると考えられる。