1:30 PM - 3:30 PM
[PE55] 前青年期における自己概念と自己評価感情の揺れとの関連
Keywords:自己評価感情の揺れ, 自己像の不安定性, 自己概念
目 的
前青年期は,自己概念が個人の内面的なものへと移行する発達的変化を迎える時期である(Montemayor & Eisen, 1977)。自己評価や自己像の不安定性さが,精神的健康を保つことや,社会的適応を図ることに,ひときわ影響を及ぼしやすいと考えられる。一般的に自尊感情が高いことは適応的であるとされているが,自尊感情が不安定な場合には,自尊感情の高さが怒りや攻撃行動に向かわせることもあると指摘されている(Kernis, Grannemann, & Barclay, 1991)。このような結果より,自尊感情の高さだけではなく,揺れに着目している研究もみられる(原田, 2008)。そこで,本研究では,原田 (2008) の研究デザインを基本に,前青年期における自己概念と自己評価感情の揺れとの関連を明らかにする。
方 法
調査方法 およそ3か月間の間に2回の質問紙調査を実施した。第1回目は2015年9月から10月であり,第2回目は2016年1月であった。
調査対象者 小学校5,6年生505名(男子261名,女子244名),中学校1~3年生947名(男子465名,女子482名)の計1,452名であった。
短縮版自己評価感情尺度 原田 (2015) が作成した尺度を用いた。
自己像の不安定性 小塩 (2001) が作成した尺度を用いた。
TS-WHY 原田 (2008) によるものを一部修正した。まず,回答者に自分の中で満足できると思うところを書いてもらった。回答欄は3つ用意した。次に,書いてもらったそれぞれに対して,日によってどのくらい変化するかについて,全く変化しない,あまり変化しない,どちらともいえない,やや変化する,大きく変化するから選択してもらった。自分の中で満足できないと思うところについても同様に回答を求めた。
結果と考察
自己評価感情の揺れと高さ 第1回目と第2回目の調査において測定された自己評価感情尺度の標準偏差を自己評価感情の揺れ,平均値を自己評価感情の高さとした。
自己像の不安定性の高さ 第1回目と第2回目の調査において測定された自己像の不安定性の平均値を自己像の不安定性の高さとした。
自己概念 第1回目と第2回目の調査で回答された自己概念の数の合計を自己概念延べ数とした。
また,各調査において回答された自己概念のうち,全く変化しない,あまり変化しないと回答されたものを,安定自己概念とし,2回の調査で回答された安定自己概念の数の合計を安定自己概念延べ数とした。そして,自己概念を原田 (2008) の分類を基に領域に分け,第1回目と第2回目の調査において測定された自己概念の領域の数を自己概念領域数とした。
自己評価感情の揺れや高さとの相関関係 自己評価感情の揺れと高さの相関関係は,全体的に中程度以下の相関を示した。個人基準と社会基準の自己評価感情の揺れについては,弱い正の相関がみられた(.14≦r≦.25)。また,肯定的自己評価感情の揺れと否定的自己評価感情の揺れは無相関あるいは弱い正の相関がみられた(r≦.29)。
自己概念と自己評価感情の揺れの関係 自己概念延べ数(肯定的,否定的),安定自己概念延べ数(肯定的,否定的),自己概念の領域数(肯定的,否定的)をそれぞれ別の独立変数とするモデルを構成して分散分析を行った。小学校高学年男子では,肯定的自己概念延べ数,肯定的安定自己概念,肯定的自己概念領域数が多いほど,社会基準-肯定的自己評価感情の揺れが小さかった。また,肯定的自己概念延べ数が多いほど,個人基準-肯定的自己評価感情の揺れが小さかった。男子中学生では,否定的自己概念延べ数が多いほど,社会基準-否定的自己評価感情の揺れが大きかった。また,肯定的安定自己概念が多いほど,社会基準-肯定的自己評価感情の揺れが小さかった。女子中学生では,肯定的自己概念延べ数や肯定的自己概念領域数が多いほど,社会基準-肯定的自己評価感情の揺れが小さかった。全般的に,肯定的自己概念が多いほど,自己評価感情は揺れにくく,反対に否定的自己概念が多いほど,自己評価感情は揺れやすいことが示されたが,発達差や性差があった。
自己像の不安定性の高さと自己評価感情の揺れの関係 自己像の不安定性を高群と低群に分け,平均値差の検定(t検定)を行ったところ,女子中学生においてのみ,自己像の不安定性が高い群が低い群よりも,社会基準-否定的自己評価感情の揺れが大きかった。
前青年期は,自己概念が個人の内面的なものへと移行する発達的変化を迎える時期である(Montemayor & Eisen, 1977)。自己評価や自己像の不安定性さが,精神的健康を保つことや,社会的適応を図ることに,ひときわ影響を及ぼしやすいと考えられる。一般的に自尊感情が高いことは適応的であるとされているが,自尊感情が不安定な場合には,自尊感情の高さが怒りや攻撃行動に向かわせることもあると指摘されている(Kernis, Grannemann, & Barclay, 1991)。このような結果より,自尊感情の高さだけではなく,揺れに着目している研究もみられる(原田, 2008)。そこで,本研究では,原田 (2008) の研究デザインを基本に,前青年期における自己概念と自己評価感情の揺れとの関連を明らかにする。
方 法
調査方法 およそ3か月間の間に2回の質問紙調査を実施した。第1回目は2015年9月から10月であり,第2回目は2016年1月であった。
調査対象者 小学校5,6年生505名(男子261名,女子244名),中学校1~3年生947名(男子465名,女子482名)の計1,452名であった。
短縮版自己評価感情尺度 原田 (2015) が作成した尺度を用いた。
自己像の不安定性 小塩 (2001) が作成した尺度を用いた。
TS-WHY 原田 (2008) によるものを一部修正した。まず,回答者に自分の中で満足できると思うところを書いてもらった。回答欄は3つ用意した。次に,書いてもらったそれぞれに対して,日によってどのくらい変化するかについて,全く変化しない,あまり変化しない,どちらともいえない,やや変化する,大きく変化するから選択してもらった。自分の中で満足できないと思うところについても同様に回答を求めた。
結果と考察
自己評価感情の揺れと高さ 第1回目と第2回目の調査において測定された自己評価感情尺度の標準偏差を自己評価感情の揺れ,平均値を自己評価感情の高さとした。
自己像の不安定性の高さ 第1回目と第2回目の調査において測定された自己像の不安定性の平均値を自己像の不安定性の高さとした。
自己概念 第1回目と第2回目の調査で回答された自己概念の数の合計を自己概念延べ数とした。
また,各調査において回答された自己概念のうち,全く変化しない,あまり変化しないと回答されたものを,安定自己概念とし,2回の調査で回答された安定自己概念の数の合計を安定自己概念延べ数とした。そして,自己概念を原田 (2008) の分類を基に領域に分け,第1回目と第2回目の調査において測定された自己概念の領域の数を自己概念領域数とした。
自己評価感情の揺れや高さとの相関関係 自己評価感情の揺れと高さの相関関係は,全体的に中程度以下の相関を示した。個人基準と社会基準の自己評価感情の揺れについては,弱い正の相関がみられた(.14≦r≦.25)。また,肯定的自己評価感情の揺れと否定的自己評価感情の揺れは無相関あるいは弱い正の相関がみられた(r≦.29)。
自己概念と自己評価感情の揺れの関係 自己概念延べ数(肯定的,否定的),安定自己概念延べ数(肯定的,否定的),自己概念の領域数(肯定的,否定的)をそれぞれ別の独立変数とするモデルを構成して分散分析を行った。小学校高学年男子では,肯定的自己概念延べ数,肯定的安定自己概念,肯定的自己概念領域数が多いほど,社会基準-肯定的自己評価感情の揺れが小さかった。また,肯定的自己概念延べ数が多いほど,個人基準-肯定的自己評価感情の揺れが小さかった。男子中学生では,否定的自己概念延べ数が多いほど,社会基準-否定的自己評価感情の揺れが大きかった。また,肯定的安定自己概念が多いほど,社会基準-肯定的自己評価感情の揺れが小さかった。女子中学生では,肯定的自己概念延べ数や肯定的自己概念領域数が多いほど,社会基準-肯定的自己評価感情の揺れが小さかった。全般的に,肯定的自己概念が多いほど,自己評価感情は揺れにくく,反対に否定的自己概念が多いほど,自己評価感情は揺れやすいことが示されたが,発達差や性差があった。
自己像の不安定性の高さと自己評価感情の揺れの関係 自己像の不安定性を高群と低群に分け,平均値差の検定(t検定)を行ったところ,女子中学生においてのみ,自己像の不安定性が高い群が低い群よりも,社会基準-否定的自己評価感情の揺れが大きかった。