4:00 PM - 6:00 PM
[PF27] 教職課程大学生による外国語学習の動機づけ理論の評価
中等英語教育における具体的想定に関する分析
Keywords:動機づけ, 外国語学習, 英語教育
はじめに
加速度的に進展するグローバル化の流れを受け,日本の中等教育課程における外国語教育も,その質の向上が求められるようになっている。かつて「英語が使える日本人」が当面の目標に据えられ,読む・聞く・書く・話すの4技能の向上にのみ重きが置かれてきた英語教育も(文部科学省,2003),現在では,異文化理解や発展的人間関係の構築といった要素も含み,広がりを持って捉えられるようになってきている(奥西,2016)。英語を,グローバル化された社会の必須スキルとして捉え,異文化を持つ他者への関心を高められるような教育を学校教育において展開し,生徒たちのグローバルマインドを育成していくことは,これからの英語教員養成に課された課題であるといえよう。
目 的
人は何のために外国語学び,その学習意欲を継続させるのであろうか。これについては,Gardner(1986)の動機付け理論がその後の議論展開における中心的役割を担ってきた。外国語学習の動機づけには道具的なものと統合的なものがあり,後者は,目標言語を話す人々との友好的関係を構築し,コミュニティーに溶け込みたいという心理と関係する。グローバル化時代の外国語教育は,自国社会での評価に終始せず,異文化コミュニティーとの融合という視点も不可欠といえよう。本研究では,英語教員養成課程に在籍する大学生を対象とし,彼・彼女らが持つ外国語教育の動機づけ理論に関する具体的想定を明らかにすることを目的とする。これにより将来的な生徒への働きかけや指導方法について示唆を得ることを試みる。
方 法
2016年1月に私立A大学の英語教員養成課程に在籍する大学生19名に対し,次の内容についてエッセイの記載を求めた。1)道具的動機づけおよび統合的動機づけの内容と具体例2)それぞれについて自分の意見3)中学校・高等学校の授業や日々の生徒との関わりに取り入れる方法。
分析にあたっては,調査協力者の記述を意味のまとまりごとに抜き出し,特に統合的動機づけに対する評価であると捉えられる記載に注目した。また実際の教育現場での運用可能性についての記載も抜き出し,分類とラベリングを行った上で,関係性の検討を記述された文脈を基に行った。
結 果
統合的動機づけに必然的に伴うと協力者が認知している要因とその結果引き起こされると想定された事象についてFigure1.に示した。統合的動機づけは,学習者の自主的態度を形成することから学習の質が高める可能性があること,文化の学びも,人間理解を深めたり視野を広げさせることで,学習の質向上へとつながっていくと想定されていることが認められた。そして学習の質が高いことは外国語の習熟度の高さへと直接つながっていき,それとは別の経路で,文化の理解が人間的成長という結果につながっていくという想定が明らかとなった。
また中等教育課程の外国語教育に,統合的動機づけを取り入れるための具体的取り組みについては,「目標言語話者との接触機会の創出」「疑似的国際コミュニティーの創出」「モデリング機会の提供」を含む複数項目が抽出された。
引用文献
Gardner, R.C.(1986).Social Psychology and Second Language Learning: The Role of Attitude and Motivation. Edward Arnold.
文部科学省(2003).「英語が使える日本人」の育成のための行動計画 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/siryo/04031601/005.pdf 2017年5月14日
奥西有理(2016).日本人大学生における異文化シミュレーションから想起された言語文化に関する葛藤体験-共感的異文化理解概念形成に向けた分類 岡山理科大学紀要,52B,41-47.
加速度的に進展するグローバル化の流れを受け,日本の中等教育課程における外国語教育も,その質の向上が求められるようになっている。かつて「英語が使える日本人」が当面の目標に据えられ,読む・聞く・書く・話すの4技能の向上にのみ重きが置かれてきた英語教育も(文部科学省,2003),現在では,異文化理解や発展的人間関係の構築といった要素も含み,広がりを持って捉えられるようになってきている(奥西,2016)。英語を,グローバル化された社会の必須スキルとして捉え,異文化を持つ他者への関心を高められるような教育を学校教育において展開し,生徒たちのグローバルマインドを育成していくことは,これからの英語教員養成に課された課題であるといえよう。
目 的
人は何のために外国語学び,その学習意欲を継続させるのであろうか。これについては,Gardner(1986)の動機付け理論がその後の議論展開における中心的役割を担ってきた。外国語学習の動機づけには道具的なものと統合的なものがあり,後者は,目標言語を話す人々との友好的関係を構築し,コミュニティーに溶け込みたいという心理と関係する。グローバル化時代の外国語教育は,自国社会での評価に終始せず,異文化コミュニティーとの融合という視点も不可欠といえよう。本研究では,英語教員養成課程に在籍する大学生を対象とし,彼・彼女らが持つ外国語教育の動機づけ理論に関する具体的想定を明らかにすることを目的とする。これにより将来的な生徒への働きかけや指導方法について示唆を得ることを試みる。
方 法
2016年1月に私立A大学の英語教員養成課程に在籍する大学生19名に対し,次の内容についてエッセイの記載を求めた。1)道具的動機づけおよび統合的動機づけの内容と具体例2)それぞれについて自分の意見3)中学校・高等学校の授業や日々の生徒との関わりに取り入れる方法。
分析にあたっては,調査協力者の記述を意味のまとまりごとに抜き出し,特に統合的動機づけに対する評価であると捉えられる記載に注目した。また実際の教育現場での運用可能性についての記載も抜き出し,分類とラベリングを行った上で,関係性の検討を記述された文脈を基に行った。
結 果
統合的動機づけに必然的に伴うと協力者が認知している要因とその結果引き起こされると想定された事象についてFigure1.に示した。統合的動機づけは,学習者の自主的態度を形成することから学習の質が高める可能性があること,文化の学びも,人間理解を深めたり視野を広げさせることで,学習の質向上へとつながっていくと想定されていることが認められた。そして学習の質が高いことは外国語の習熟度の高さへと直接つながっていき,それとは別の経路で,文化の理解が人間的成長という結果につながっていくという想定が明らかとなった。
また中等教育課程の外国語教育に,統合的動機づけを取り入れるための具体的取り組みについては,「目標言語話者との接触機会の創出」「疑似的国際コミュニティーの創出」「モデリング機会の提供」を含む複数項目が抽出された。
引用文献
Gardner, R.C.(1986).Social Psychology and Second Language Learning: The Role of Attitude and Motivation. Edward Arnold.
文部科学省(2003).「英語が使える日本人」の育成のための行動計画 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/siryo/04031601/005.pdf 2017年5月14日
奥西有理(2016).日本人大学生における異文化シミュレーションから想起された言語文化に関する葛藤体験-共感的異文化理解概念形成に向けた分類 岡山理科大学紀要,52B,41-47.