4:00 PM - 6:00 PM
[PF48] 性役割観は言葉かけで喚起される感情に影響を及ぼすか?
Keywords:性役割観, 言葉かけ, 感情
目 的
日常生活において,誰しもが「女らしさ」や「男らしさ」という,性役割期待を感じた経験があるだろう。日常的に生起する多様な言葉かけには,送り手の伝統的性役割観が内包されている可能性があるといえる。
柏木(1967)は,性役割学習には,自分の性に期待されている役割がどのようなものかを認知すること,および,その役割を演ずることの2つの過程が含まれていると述べている。このことから,人は他者からの性役割期待を,言葉かけを通して認識し,期待される性役割行動をとっている可能性がある。その際,自らの性役割観に照らしあわせ,他者からの言葉かけに対して肯定的な感情を抱く者もいれば,性役割期待の押し付けであると否定的な感情を抱く者もいると考えられる。
また,柏木(1967)は,性役割学習について,自我に目覚め,主体的能動的な自己形成をしてゆく青年の発達的過程としても注目すべきであると述べている。このことから,性役割観を扱う上で,発達的視点を取り入れ,影響の違いを明らかにすることは重要であると考えられる。
以上より,本研究は,個人のもつ性役割観が,性役割場面における言葉かけで喚起される感情に影響を及ぼすのかを検討する。その際,性役割と密接に関わると考えられる身体的性別と発達段階(校種)の2要因からの影響もあわせて検討を行なう。
方 法
参加者 大学生58名(男性32名,女性26名),中学生136名(男性69名,女性67名)。
場面設定 質問紙では,料理・ピアノ・数学・日曜大工の4場面において,異性の友人から言葉をかけられる物語が提示された。例えば,「料理ができるなんてすごいね」。
質問項目 性役割観によって群分けを行なうために,性役割場面であると考えられる料理・ピアノ・数学・日曜大工の4場面について,「一般的な男性(女性)にとって次のようなことはどの程度重要だと思いますか?」と教示し,4件法で回答を得た。男性では数学・日曜大工を,女性では料理・ピアノを伝統的性役割場面とし,伝統的性役割場面の合計点から他2場面の非伝統的性役割場面の合計点を引き,差得点を算出した。その後,差得点の平均値で,性別ごとに伝統的性役割観群と非伝統的性役割観群に群分けを行なった。
言葉かけで喚起される感情を測定するために,各場面で「そのときのあなたはポジティブな気持ちですか?ネガティブな気持ちですか?一番近い番号に○をつけてください」と教示し,5件法で回答を求めた。
結 果
各場面における感情得点について性役割観(伝統的性役割観・非伝統的性役割観)×身体的性別(男性・女性)×校種(中学生・大学生)の3要因分散分析を行なった。主な結果を以下に示す。
日曜大工場面における感情得点では,校種の主効果(F(1,186)=6.68,p<.05),性別の主効果(F(1,186)=17.24,p<.001)が有意であり,性役割観×性別の交互作用(F(1,186)=2.94,p<.10)で有意傾向がみられた。下位検定の結果,伝統的性役割観における性別(F(1,186)=3.99,p<.05),非伝統的性役割観における性別(F(1,186)=13.70,p<.001),男性における性役割観(F(1,186)=5.16,p<.05)の単純主効果がみられた(Figure 1)。
考 察
結果から,日曜大工場面において,中学生よりも大学生,女性よりも男性が,言葉かけによってポジティブな感情を喚起されていた。また,有意傾向ではあるが,男性において伝統的性役割観群より非伝統的性役割観群がポジティブな感情を抱きやすいことが明らかになった。日曜大工場面を男性の伝統的性役割場面と想定した場合,伝統的性役割観群のほうがよりポジティブな感情を抱くと考えられるが,本研究の結果では異なる結果となった。非伝統的性役割観群の人は,男性にとってどの場面も重要であると捉えている可能性もあり,今後更なる検討が必要である。
日常生活において,誰しもが「女らしさ」や「男らしさ」という,性役割期待を感じた経験があるだろう。日常的に生起する多様な言葉かけには,送り手の伝統的性役割観が内包されている可能性があるといえる。
柏木(1967)は,性役割学習には,自分の性に期待されている役割がどのようなものかを認知すること,および,その役割を演ずることの2つの過程が含まれていると述べている。このことから,人は他者からの性役割期待を,言葉かけを通して認識し,期待される性役割行動をとっている可能性がある。その際,自らの性役割観に照らしあわせ,他者からの言葉かけに対して肯定的な感情を抱く者もいれば,性役割期待の押し付けであると否定的な感情を抱く者もいると考えられる。
また,柏木(1967)は,性役割学習について,自我に目覚め,主体的能動的な自己形成をしてゆく青年の発達的過程としても注目すべきであると述べている。このことから,性役割観を扱う上で,発達的視点を取り入れ,影響の違いを明らかにすることは重要であると考えられる。
以上より,本研究は,個人のもつ性役割観が,性役割場面における言葉かけで喚起される感情に影響を及ぼすのかを検討する。その際,性役割と密接に関わると考えられる身体的性別と発達段階(校種)の2要因からの影響もあわせて検討を行なう。
方 法
参加者 大学生58名(男性32名,女性26名),中学生136名(男性69名,女性67名)。
場面設定 質問紙では,料理・ピアノ・数学・日曜大工の4場面において,異性の友人から言葉をかけられる物語が提示された。例えば,「料理ができるなんてすごいね」。
質問項目 性役割観によって群分けを行なうために,性役割場面であると考えられる料理・ピアノ・数学・日曜大工の4場面について,「一般的な男性(女性)にとって次のようなことはどの程度重要だと思いますか?」と教示し,4件法で回答を得た。男性では数学・日曜大工を,女性では料理・ピアノを伝統的性役割場面とし,伝統的性役割場面の合計点から他2場面の非伝統的性役割場面の合計点を引き,差得点を算出した。その後,差得点の平均値で,性別ごとに伝統的性役割観群と非伝統的性役割観群に群分けを行なった。
言葉かけで喚起される感情を測定するために,各場面で「そのときのあなたはポジティブな気持ちですか?ネガティブな気持ちですか?一番近い番号に○をつけてください」と教示し,5件法で回答を求めた。
結 果
各場面における感情得点について性役割観(伝統的性役割観・非伝統的性役割観)×身体的性別(男性・女性)×校種(中学生・大学生)の3要因分散分析を行なった。主な結果を以下に示す。
日曜大工場面における感情得点では,校種の主効果(F(1,186)=6.68,p<.05),性別の主効果(F(1,186)=17.24,p<.001)が有意であり,性役割観×性別の交互作用(F(1,186)=2.94,p<.10)で有意傾向がみられた。下位検定の結果,伝統的性役割観における性別(F(1,186)=3.99,p<.05),非伝統的性役割観における性別(F(1,186)=13.70,p<.001),男性における性役割観(F(1,186)=5.16,p<.05)の単純主効果がみられた(Figure 1)。
考 察
結果から,日曜大工場面において,中学生よりも大学生,女性よりも男性が,言葉かけによってポジティブな感情を喚起されていた。また,有意傾向ではあるが,男性において伝統的性役割観群より非伝統的性役割観群がポジティブな感情を抱きやすいことが明らかになった。日曜大工場面を男性の伝統的性役割場面と想定した場合,伝統的性役割観群のほうがよりポジティブな感情を抱くと考えられるが,本研究の結果では異なる結果となった。非伝統的性役割観群の人は,男性にとってどの場面も重要であると捉えている可能性もあり,今後更なる検討が必要である。