4:00 PM - 6:00 PM
[PF50] 他者軽視と他者評価との関連
領域の重要性と親密度を踏まえて
Keywords:他者軽視, 他者評価, 自己評価
問題と目的
これまで,自己評価に影響する要因の検討は数多く行われてきたが,他者評価に関しては実証的な検討が少なかった。他者評価に直接的に関連する要因としては,他者軽視傾向(Hayamizu et al., 2004)が挙げられる。
他者軽視傾向の高さは他者評価の低さにつながると考えられるが,先行研究において両者の関係性には調整要因が存在することが明らかになっている。高木(2007)は親しい友人を他者として取りあげ,重要性が高い場合は他者軽視傾向の高さが低い他者評価につながり,重要性が低い場合には高い他者評価につながることを明らかにした。しかし,他者軽視傾向を測定するACS-2は他者として一般的な他者を想定しており,高木(2007)の結果が親しい友人に限るものなのか,一般的他者にも適用可能であるものなのかは不明である。
そこで本研究では,他者軽視傾向と他者評価との関連における領域の重要性および他者との親密度の影響を検討する。具体的な他者としては,親しい友人および一般的他者を取り上げる。
方 法
分析対象者 関東圏内の大学生158名(男性80名,女性76名,性別不明2名)
調査内容 1. 領域の重要性の評価:山本他(1982)の自己認知の諸側面尺度を用い,性と学校評判を除いた9側面のうち最も重要な側面(領域)および最も重要でない側面(領域)を1つずつ選択するよう求めた。2. 自己評価および他者評価:山本他(1982)の自己認知の諸側面尺度9側面計29項目を,自己,親しい友人,一般的他者について求めた。評価の順序に関してはカウンターバランスをとった。3. 他者軽視傾向:Hayamizu et al.(2009)で作成された11項目を使用した。
結果と考察
群分け 分析対象者158名について他者軽視傾向得点(項目平均)の中央値を算出し,得点が中央値(2.45)より高い者を他者軽視傾向高群(n=73),低い者を他者軽視傾向低群(n=76)とした。得点が中央値と同一だった9名は分析から除外した。
他者評価に関する分散分析 まず,他者評価から自己評価を引いた得点を算出し,相対的他者評価得点とした。そのうえで,他者軽視傾向,領域の重要性,親密度(親しい友人,一般的他者)を独立変数,相対的他者評価を従属変数とした3要因混合計画の分散分析を行った。
その結果,領域の重要性(F(1, 147)=11.14, p<.01, ηp2=.07)および他者との関係性(F(1, 147)=12.15, p<.01, ηp2=.08)の主効果が有意であり,最も重要な領域における得点が最も重要でない領域よりも高く,親しい友人の得点が一般的他者よりも高かった。また,他者軽視傾向の主効果は有意傾向であり(F(1, 147)=3.11, p<.10, ηp2=.02),他者軽視傾向高群の得点が他者軽視傾向低群よりも低かった。
1次の交互作用に関しては,他者軽視傾向と領域の重要性の交互作用が有意であった(F(1, 147)=5,44, p<.05, ηp2=.04)ため,単純主効果の検定を行った(Figure 1)。まず,最も重要でない領域において他者軽視の単純主効果が有意であり(F(1, 147)=7.95, p<.01, ηp2=.05),他者軽視傾向低群の得点が他者軽視傾向高群よりも高かった。また,他者軽視傾向低群における領域の重要性の単純主効果が有意であり(F(1, 147)=16.68, p<.01, ηp2=.18),最も重要な領域における得点が最も重要でない領域よりも低かった。その他の交互作用は有意でなかった。
本研究の結果から,他者軽視傾向と他者評価との関連は領域の重要性によって調整されるが,親密度の影響は受けないことが示された。また本研究の結果は高木(2007)のものとは異なるものだった。これは,高木(2007)が優劣の判断が容易であった指標を用いていたのに対し,本研究で用いた指標は優劣が判断しにくい領域(e.g., 優しさ)を含んでいたことに起因すると考えられる。
これまで,自己評価に影響する要因の検討は数多く行われてきたが,他者評価に関しては実証的な検討が少なかった。他者評価に直接的に関連する要因としては,他者軽視傾向(Hayamizu et al., 2004)が挙げられる。
他者軽視傾向の高さは他者評価の低さにつながると考えられるが,先行研究において両者の関係性には調整要因が存在することが明らかになっている。高木(2007)は親しい友人を他者として取りあげ,重要性が高い場合は他者軽視傾向の高さが低い他者評価につながり,重要性が低い場合には高い他者評価につながることを明らかにした。しかし,他者軽視傾向を測定するACS-2は他者として一般的な他者を想定しており,高木(2007)の結果が親しい友人に限るものなのか,一般的他者にも適用可能であるものなのかは不明である。
そこで本研究では,他者軽視傾向と他者評価との関連における領域の重要性および他者との親密度の影響を検討する。具体的な他者としては,親しい友人および一般的他者を取り上げる。
方 法
分析対象者 関東圏内の大学生158名(男性80名,女性76名,性別不明2名)
調査内容 1. 領域の重要性の評価:山本他(1982)の自己認知の諸側面尺度を用い,性と学校評判を除いた9側面のうち最も重要な側面(領域)および最も重要でない側面(領域)を1つずつ選択するよう求めた。2. 自己評価および他者評価:山本他(1982)の自己認知の諸側面尺度9側面計29項目を,自己,親しい友人,一般的他者について求めた。評価の順序に関してはカウンターバランスをとった。3. 他者軽視傾向:Hayamizu et al.(2009)で作成された11項目を使用した。
結果と考察
群分け 分析対象者158名について他者軽視傾向得点(項目平均)の中央値を算出し,得点が中央値(2.45)より高い者を他者軽視傾向高群(n=73),低い者を他者軽視傾向低群(n=76)とした。得点が中央値と同一だった9名は分析から除外した。
他者評価に関する分散分析 まず,他者評価から自己評価を引いた得点を算出し,相対的他者評価得点とした。そのうえで,他者軽視傾向,領域の重要性,親密度(親しい友人,一般的他者)を独立変数,相対的他者評価を従属変数とした3要因混合計画の分散分析を行った。
その結果,領域の重要性(F(1, 147)=11.14, p<.01, ηp2=.07)および他者との関係性(F(1, 147)=12.15, p<.01, ηp2=.08)の主効果が有意であり,最も重要な領域における得点が最も重要でない領域よりも高く,親しい友人の得点が一般的他者よりも高かった。また,他者軽視傾向の主効果は有意傾向であり(F(1, 147)=3.11, p<.10, ηp2=.02),他者軽視傾向高群の得点が他者軽視傾向低群よりも低かった。
1次の交互作用に関しては,他者軽視傾向と領域の重要性の交互作用が有意であった(F(1, 147)=5,44, p<.05, ηp2=.04)ため,単純主効果の検定を行った(Figure 1)。まず,最も重要でない領域において他者軽視の単純主効果が有意であり(F(1, 147)=7.95, p<.01, ηp2=.05),他者軽視傾向低群の得点が他者軽視傾向高群よりも高かった。また,他者軽視傾向低群における領域の重要性の単純主効果が有意であり(F(1, 147)=16.68, p<.01, ηp2=.18),最も重要な領域における得点が最も重要でない領域よりも低かった。その他の交互作用は有意でなかった。
本研究の結果から,他者軽視傾向と他者評価との関連は領域の重要性によって調整されるが,親密度の影響は受けないことが示された。また本研究の結果は高木(2007)のものとは異なるものだった。これは,高木(2007)が優劣の判断が容易であった指標を用いていたのに対し,本研究で用いた指標は優劣が判断しにくい領域(e.g., 優しさ)を含んでいたことに起因すると考えられる。