4:00 PM - 6:00 PM
[PF53] ブラジリアン柔術を通した日本・伯の交流
Keywords:性格特性, 国民性評価, 教育期待
はじめに
スポーツは普遍性を持ち,先史時代から現代まで民族や国境を渡ってきた。ブラジリアン柔術の元は日本の古流柔術にあり,前田光世によってブラジル(以下,伯)へ伝わり,エリオ・グレイシーらがブラジリアン柔術(以下,柔術)へと発展させ,世界中に広がった。今日,岐阜県美濃加茂市には多くの伯人が暮らし,諸問題が存在しているが,多くの柔術道場があり,日本人と伯人が交流を深めている。本研究では,多文化共生が求められる美濃加茂市において,国境を跨いで発展した柔術が,日本人と伯人の国際交流にどのように貢献できるのか,質問紙とインタビューから考察した。
方 法
被験者:子どもに柔術を習わせている日本人40人・伯人20人,子どもに柔術以外を習わせている,または何も習わせていない日本人39人・伯人34人を対象に質問紙調査を実施した。柔術道場経営者2人,中学校長1人,外国語講師1人,イベント開催者2人らに日・伯交流についてインタビューを行った。
質問紙:日本と伯の交流について(4問),日本人と伯人に対するイメージ(BigFiveの重要項目10問),柔術またはその他の習い事を習わせている理由(8問),今後の日本と伯の交流に望むこと(4問)を6件法と記述形式で行った。
結果と考察
自国と相手国の人柄の印象が柔術を習わせているかどうかでどのような違いがあるかに関し,柔術を習わせているか否か,国籍,対象国の3要因分散分析を行った。
その結果,情緒不安定性に関して,柔術を習わせているか否かの主効果が有意で(F=11.1, df=1/129, p<.01),全般的に柔術を習わせることによって,相手国人の情緒を安定したものと認識するようになることが示された。一方,国籍の主効果は見られなかったが,それらの交互作用が有意傾向となった(F=3.07, df=1/129, p<.1)。下位検定によると,伯人において柔術を習わせると,他者を情緒安定的と認識していた(F=25.70, df=1/129, p<.01)。また,柔術を習わせている親においては,伯人よりも日本人の方が,他者を情緒不安定的であると若干認めていることが示された(F=4.05, df=1/129, p<.05)。さらに対象国の主効果が有意で(F=32.81, df1/129, p<.01),国籍との交互作用も有意だった(F=62.05, df=1/129, p<.01)。下位検定によると,各々同国人に対しての方が情緒不安定的とみている(F=21.93日本人; 19.59伯人, df=1/129, p<.01)ことが示された。
一方,調和性に関して,柔術の主効果が有意であった(F=52.44, df=1/129, p<.01)。これは,全般的に柔術を習わせることによって,相手国人へ協調性を認識することが示された。さらに,国籍による主効果も有意で (F=33.25, df=1/129, p<.01),それらの交互作用も有意となり(F=31.97, df=1/129, p<.01),日本人は柔術で伯人に協調性があると認識することが示された。また,対象国の主効果も有意で(F=18.28, df=1/129, p<.01),さらに国籍との交互作用もあり(F=6.83, df=1/129, p<.05),柔術との交互作用も有意となった(F=10.35, df=1/129, p<.01)。下位検定によると,相手国人に対して協調的であると認識(F=69.14伯人;37.84日本人, df=1/129, p<.01)していることが示された。
このように,柔術を通して相手国人に対する情緒安定性や調和性を認識することが示され,そのことが国際交流に繋がることが示唆された。
伯人は自国文化で交流したいと考えているため,日本との交流に対して受身であると考えられてきた。しかし,様々な専門家への聞き取りから,特に柔術を習わせている伯人は日本人とスポーツを通して伯の文化で交流することや,親子の交流を望んでいるということが聞けた。また,伯人は自分たちを調和性がないと感じているが,これはルールやマナーが守れず会場を借りられない「会場問題」によると考えられる。それを解決するため,伯人が日本人に協力を求め,日本の文化を受け入れていく姿勢を示し,さらに,東日本大震災の際には伯人がチャリティー大会を開き,「同じ日本に住む者同士,助け合う」と主張した。以上のことから,柔術を習わせている伯人は受身だけではなく,様々な形による日本との交流を求め,活動していると考えられる。
日本・伯両国を跨いで生まれた柔術のスポーツとしての普遍性に着目し,子どもに根付かせていくことで,複雑に交流化する国際社会に貢献できると考えられる。
スポーツは普遍性を持ち,先史時代から現代まで民族や国境を渡ってきた。ブラジリアン柔術の元は日本の古流柔術にあり,前田光世によってブラジル(以下,伯)へ伝わり,エリオ・グレイシーらがブラジリアン柔術(以下,柔術)へと発展させ,世界中に広がった。今日,岐阜県美濃加茂市には多くの伯人が暮らし,諸問題が存在しているが,多くの柔術道場があり,日本人と伯人が交流を深めている。本研究では,多文化共生が求められる美濃加茂市において,国境を跨いで発展した柔術が,日本人と伯人の国際交流にどのように貢献できるのか,質問紙とインタビューから考察した。
方 法
被験者:子どもに柔術を習わせている日本人40人・伯人20人,子どもに柔術以外を習わせている,または何も習わせていない日本人39人・伯人34人を対象に質問紙調査を実施した。柔術道場経営者2人,中学校長1人,外国語講師1人,イベント開催者2人らに日・伯交流についてインタビューを行った。
質問紙:日本と伯の交流について(4問),日本人と伯人に対するイメージ(BigFiveの重要項目10問),柔術またはその他の習い事を習わせている理由(8問),今後の日本と伯の交流に望むこと(4問)を6件法と記述形式で行った。
結果と考察
自国と相手国の人柄の印象が柔術を習わせているかどうかでどのような違いがあるかに関し,柔術を習わせているか否か,国籍,対象国の3要因分散分析を行った。
その結果,情緒不安定性に関して,柔術を習わせているか否かの主効果が有意で(F=11.1, df=1/129, p<.01),全般的に柔術を習わせることによって,相手国人の情緒を安定したものと認識するようになることが示された。一方,国籍の主効果は見られなかったが,それらの交互作用が有意傾向となった(F=3.07, df=1/129, p<.1)。下位検定によると,伯人において柔術を習わせると,他者を情緒安定的と認識していた(F=25.70, df=1/129, p<.01)。また,柔術を習わせている親においては,伯人よりも日本人の方が,他者を情緒不安定的であると若干認めていることが示された(F=4.05, df=1/129, p<.05)。さらに対象国の主効果が有意で(F=32.81, df1/129, p<.01),国籍との交互作用も有意だった(F=62.05, df=1/129, p<.01)。下位検定によると,各々同国人に対しての方が情緒不安定的とみている(F=21.93日本人; 19.59伯人, df=1/129, p<.01)ことが示された。
一方,調和性に関して,柔術の主効果が有意であった(F=52.44, df=1/129, p<.01)。これは,全般的に柔術を習わせることによって,相手国人へ協調性を認識することが示された。さらに,国籍による主効果も有意で (F=33.25, df=1/129, p<.01),それらの交互作用も有意となり(F=31.97, df=1/129, p<.01),日本人は柔術で伯人に協調性があると認識することが示された。また,対象国の主効果も有意で(F=18.28, df=1/129, p<.01),さらに国籍との交互作用もあり(F=6.83, df=1/129, p<.05),柔術との交互作用も有意となった(F=10.35, df=1/129, p<.01)。下位検定によると,相手国人に対して協調的であると認識(F=69.14伯人;37.84日本人, df=1/129, p<.01)していることが示された。
このように,柔術を通して相手国人に対する情緒安定性や調和性を認識することが示され,そのことが国際交流に繋がることが示唆された。
伯人は自国文化で交流したいと考えているため,日本との交流に対して受身であると考えられてきた。しかし,様々な専門家への聞き取りから,特に柔術を習わせている伯人は日本人とスポーツを通して伯の文化で交流することや,親子の交流を望んでいるということが聞けた。また,伯人は自分たちを調和性がないと感じているが,これはルールやマナーが守れず会場を借りられない「会場問題」によると考えられる。それを解決するため,伯人が日本人に協力を求め,日本の文化を受け入れていく姿勢を示し,さらに,東日本大震災の際には伯人がチャリティー大会を開き,「同じ日本に住む者同士,助け合う」と主張した。以上のことから,柔術を習わせている伯人は受身だけではなく,様々な形による日本との交流を求め,活動していると考えられる。
日本・伯両国を跨いで生まれた柔術のスポーツとしての普遍性に着目し,子どもに根付かせていくことで,複雑に交流化する国際社会に貢献できると考えられる。