日本教育心理学会第59回総会

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ポスター発表 PF(01-81)

ポスター発表 PF(01-81)

2017年10月8日(日) 16:00 〜 18:00 白鳥ホールB (4号館1階)

16:00 〜 18:00

[PF63] 大学生の学習面の困難に関する研究

衛藤裕司 (大分大学)

キーワード:大学生, 学習面, 困難

目   的
 本研究の目的は,大学生が学生生活において感じている困りに関するものである。大学生が学生生活の中で感じている学習面に関する具体的な困りとそれに対する対応・工夫の実態を明らかにすることである。
方   法
1)対象者:A大学に在籍する3年生男性29名,女性52名,計81名であった。
2)質問紙:質問項目は,困りの程度の把握には,佐藤・衛藤(2009)が提案した「困り具合に関するセルフチェックリスト(改訂版)」のものを使用した。これらは,学習面・対人面に関する場面での困り具合について尋ねており,全48項目である。回答方法については,4段階評定になっていた。また,大学生活で行っている工夫について,学習面・対人面それぞれ3項目ずつ自由記述により記入してもらった。
3)手続き:調査は,講義の終わりの時間を利用し,実施された。「大学生活で困っていることについての調査」ということが説明され,また協力したくなければ,しなくてもよいことが伝えられた。回答に要した時間は約20分であった。
4)結果の分析方法:4段階の評定に対し,それぞれ1点,2点,3点,4点と点数化し,それを用いて因子分析(バリマックス法,直交回転)による因子の抽出が行われ,大学生全体について,因子ごとの平均点,各項目の平均点を算出した。さらに,「困難を強く感じている群」と「困難をほとんど感じていない群」とで比較するため,質問紙の「全項目の平均点(以下,「全体平均点」とする。)+1SD(SD=0.38)以上」の範囲のいる対象者を「困難を強く感じている群」とし,「全体平均点-1SD以下」の範囲にいる対象者を「困難をほとんど感じていない群」とし,因子ごとの平均点,各項目の平均点をそれぞれ算出した。さらに,t検定を行い,群間での有意差の有無を検討した。
 また,自由記述の回答に関してはKJ法(1967)を用い,内容の分類を行った後に,それぞれに属する回答数をカウントした。。
結果と考察
 因子分析の結果,質問紙の全48項目について,「不安・孤立因子」と命名された第1因子(8項目),「ワーキングメモリー・読む・心理化」と命名された第2因子(7項目),「不注意・長期記憶」(6項目)と命名された第3因子,「衝動性・固執性」と命名された第4因子(3項目)の全4因子が得られた。また,残りの24項目については,特にどの因子にも属さなかった
 対象者81名における因子ごとの平均点では,第3因子の項目の平均点が最も高く,2.25点であった。また,48項目の平均点は2.00点であった。因子に分類された24項目のうち,平均点が2.00点以上であった項目は,第1因子では,項目38の「自分はダメな人間だと思いがちである」,項目39の「気分が沈みがちである」,項目47の「進路に関する相談相手を探すのに苦労している」の3項目であった。第2因子では,項目4の「本を読むとき内容を理解するのに時間がかかる」,項目12の「聞く人,読む人が分かりやすいような配慮をして,考えを話したり,文章にすることが苦手である」,項目25の「二つ以上の作業を同時にこなそうとするとすごく混乱する」の3項目であった。第3因子では,項目19の「諸手続の期日や課題の提出日を忘れてしまうことが多い」,項目20の「紛失物が多いまたは物をどこに置いたか分からなくなる」,項目22の「掲示物や配布物に気がつかない,もしくは忘れてしまうことが多い」,項目43の「最低基準の成績(GPA3.5以上)を取るのに苦労している」,項目44の「良い成績(GPA4.0以上)を取るのに苦労している」の5項目であった。第4因子では,項目の平均点が2.00以上のものはなかった。
 困難を強く感じている群においては,第1因子の項目の平均点が最も高く,2.83点であった。困難をほとんど感じていない群においては,第3因子の項目の平均点が最も高く,1.57点であった。項目別では,第1因子の項目では,全ての項目で困難強い群と困難なし群の間で有意な差が見られた。一方で,第3因子,第4因子の項目では,全ての項目で群間に有意な差は見られなかった。
 また,大学生全体において,「板書をノートに見やすく書くことが難しい」場面で工夫をしている学生が最も多く,48.1%(81名中39名)であった。また,項目数は全体の20.2%(213項目中43項目)であった。この場面での工夫の方法としては「色分け」が最も多く53.8%(39名中21名)であった。