The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PF(01-81)

ポスター発表 PF(01-81)

Sun. Oct 8, 2017 4:00 PM - 6:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

4:00 PM - 6:00 PM

[PF64] 就学移行期における障害のある子どもに関する記録物の作成・活用状況と課題(1)

量的データの分析から

濱田祥子1, 上田敏丈2, 若林紀乃3, 越中康治4, 岡花祈一郎#5, 中西さやか#6, 廣瀬真喜子7, 松井剛太#8, 八島美菜子9, 山崎晃10 (1.比治山大学, 2.名古屋市立大学, 3.名古屋大学, 4.宮城教育大学, 5.福岡女学院大学, 6.名寄市立大学, 7.沖縄女子短期大学, 8.香川大学, 9.広島文化学園大学, 10.広島文化学園大学)

Keywords:保幼小接続, 就学支援シート

目   的
 就学移行期における障害のある子どもの就学支援シートやサポートファイル等の記録物(以下,「就学移行時の記録」)は,保幼小接続をスムーズにする(松井,2007)。ただし,現状では就学移行時の記録の作成等は,自治体,各園校に委ねられており,効果的活用について検討するためには,各々の取組みや意識を明らかにする必要がある。本調査は,就学移行時の記録の作成・活用状況と意識や課題を明らかにすることを目的とした。
方   法
内容:アンケート調査を実施し,就学移行時の記録の作成・活用状況について尋ねた。
対象者:調査対象は,北海道,宮城県,東京都,愛知県,大阪府,香川県,広島県,福岡県,沖縄県の就学前施設と小学校であった。就学移行に関わっている者1名が回答するように求めた。配布数は,就学前施設1,114園,小学校613校で,回収数は順に458園(公立幼稚園72,私立幼稚園68,公立保育所216,私立保育所74,その他保育所6,公立こども園5,私立こども園17)(回収率41.1%),243校(回収率39.6%)であった。
結果と考察
就学移行時の記録の作成:就学前施設237園(51.7%)が就学移行時の記録を作成していた。種別の比較をすると,公立幼稚園(54園(75.0%))は作成率が高く,私立幼稚園(23園(33.8%)),私立保育所(26園(35.1%))は作成率が低かった。小学校は117校(48.1%)が就学移行時の記録を受け取っていた。また,就学移行時の記録を作成している就学前施設221園(その他保育所,こども園は度数が少なく,以後の分析では除外),記録を受け取っている小学校117校に,その様式について尋ねたところ,186園(84.1%),90校(76.9%)が,「行政から提供された」または「提供はされていないが書き方などが明示されている」と回答し,就学移行時の記録の作成について,多くは行政の関与があることが分かった。
就学移行時の記録の内容:就学移行時の記録の分量が適切であるかを尋ねたところ,就学前施設198園(89.6%),小学校106校(90.6%)が「今のままでよい」と回答し,適切な分量で作成されていることが分かった。また,「要録だけでよい」との回答はほとんどなく,就学移行時の記録は要録とは異なる機能を果たしていると考えられる。また,就学移行時の記録に記載する内容8項目を設定し,各項目が「十分記載されているか」を4件法で尋ねたところ,いずれの就学前施設,小学校においても,ほとんどの項目で「そう思う」「ややそう思う」の回答が7割を超えた。ただし,項目「小学校で大事にしてほしいこと」は,他項目と比較して「そう思う」の回答割合が低かった。同じ8項目について,「その情報を引き継ぐことは重要であるか」を尋ねたところ,いずれの就学前施設,小学校においても「そう思う」「ややそう思う」の回答が8割を超えた。ただし,項目「小学校で大事にしてほしいこと」は,他項目と比較して「そう思う」の回答割合が低かった。上記2つの質問から,互いに引き継ぐことが重要と考える項目は十分に記載される傾向が分かった。保育者の小学校に対する願いに比べて,障害の状態や対応方法など子どもに関する項目で特に認められた。
就学移行時の記録の活用と課題:就学移行時の記録が小学校にとって活用しやすいものであるかを4件法で尋ねたところ,公立幼稚園と小学校の約8割,その他の就学前施設の約6割が「そう思う」「ややそう思う」と回答し,活用のしやすさの感じ方に差があった。また,就学移行時の記録が保幼小接続に効果的に機能していると思うかを4件法で尋ねたところ,「そう思う」と回答した割合は小学校60校(51.3%)に対し,就学前施設は30園(13.6%)であった。記録物が保幼小接続において効果的に機能しているか否かについては,小学校と就学前施設で認識にずれがあると言えよう。これらの結果から,小学校が就学移行時の記録を活用しやすい,効果的であると感じている実態を就学前施設は把握していないことがうかがえる。また,就学移行時の記録と要録の使い分けを意識しているかを尋ねたところ,「意識している」の回答割合は,公立幼稚園(45園(83.3%))に対し,他の就学前施設と小学校は約5割であった。就学移行時に特化したものとして意識的に就学移行時の記録が作成・活用されているとは言い切れないことが分かった。さらに,教育支援委員会(就学指導委員会)やそれ以外の引継ぎに関する話し合いの場において就学移行時の記録物を活用している就学前施設・小学校は,委員会,それ以外の場どちらにおいても7割に満たなかった。(本調査は平成28年度文科省委託「幼児期の教育内容等深化・充実調査研究」(研究受託機関 名古屋市立大学)の研究成果の一部である)