The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PF(01-81)

ポスター発表 PF(01-81)

Sun. Oct 8, 2017 4:00 PM - 6:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

4:00 PM - 6:00 PM

[PF71] 対人関係ゲームを活かしたキャリア教育のあり方

稲田達也1, 鈴木由美2 (1.大学改革支援・学位授与機構, 2.聖徳大学)

Keywords:対人関係ゲーム, キャリア教育, 社会人基礎力

問題と目的
 社会人基礎力は,「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として経済産業省が2006年から提唱しており,「前に踏み出す力」,「考え抜く力」,「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)から構成されている。教員養成を主な教育目的とした大学・学部においても,学生は既存の教員養成カリキュラムを適切にこなすと同時に,カリキュラム内外で社会人基礎力のような能力を高めることを要求されるし,学校・学部側も能力を育成するような仕組みを学生に対して提供することが要請されている。実際に,大学においては,ゼミやクラブ活動,アルバイト等の学外活動が社会人基礎力の向上に寄与していることが明らかになっている(清水・三保,2013)。また,経済産業省が社会人基礎力育成グランプリを主催するとともに,全国の大学等を中心に社会人基礎力を向上させる取り組みも数多くなされている。
 対人関係ゲームは,ゲームを媒介に日常集団での人間関係の質的成熟を図るプログラムであり,「人間関係づくりと集団活動の学びとともに,社会的スキルを使う機会を提供し学習を促進する機会を提供している」と大澤・田上(2015)は論じている。対人関係ゲームを繰り返し実施することにより,学生に不足している,他者とかかわり社会的スキルを使う機会を提供することで,社会人基礎力育成の助けとなると考えられる。
 そこで本研究では,教員養成系の学部に通う大学生の間で対人関係ゲームを実施し,社会人基礎力を高めることを通して教員としての資質向上が可能かどうかを明らかにすることを目的とする。
研   究
 大学生を対象に対人関係ゲームを複数回実施し,活動の前後で学生の社会人基礎力が変化するかを調査する。
方法(調査対象者・調査時期・調査手続)
 中部地方公立A大学1年生94名を対象とし,平成27年5〜7月に実施した。西道(2011)が作成した40項目からなる「改訂版社会人基礎力尺度」を用い,対人関係ゲームの6回のセッションの実施前後の学生の社会人基礎力を測定した。
倫理的配慮
 対象者には,本研究の目的・方法を口頭と文書で説明した。調査への協力は自由意志に基づくこと,協力に拒否しても不利益はないこと,また回答の有無や内容が個人の成績に影響を及ぼすことは一切ないこと,データは匿名化した上で使用すること,得られたデータは本研究以外には使用せず,本研究終了後に破棄することを説明した。
結果と考察
 対人関係ゲーム6セッションの実施前後の改訂版社会人基礎力尺度(西道)の4下位尺度得点についてt検定を行った(Table1)結果,実施前後で「考え抜く力」については5%水準で有意に,また「伝える力」「チームで働く力」についても有意傾向であるものの得点の向上が見られた。このことから,対人関係ゲームが学生の社会人基礎力育成に一定の効果があると考えられ,教員としての資質向上の一助となり得ることが示唆された。一方で,「前に踏み出す力」に関しては実施前後で有意な差は見られなかった。「前に踏み出す力」が変化しなかった要因として,行った対人関係ゲームの内容によるものである可能性と,「前に踏み出す力」という力の性質によるものである可能性が考えられるが,その点については,今後のより大規模かつ継続的な研究が必要であると考えられる。
今後の課題
 対人関係ゲームに取り組みさえすればいいのではなく,どのように取り組むかという,活動の質的側面については検討できておらず,今後の課題であるといえる。また,対人関係ゲームを楽しみながら積極的に参加する場合と,楽しめずに無理やり参加する場合とでは,その効果も異なってくることが考えられる。このような,活動の質的側面について検討することで,よりよいゲームの内容や実施方法を検討することができると考えられる。また,本研究においては計6回のゲーム実施直後に社会人基礎力を測定したが,その効果がどの程度持続するかについては明らかになっていない。この点についても,縦断的な調査を行うなどにより,今後検討する必要があると考えられる。