The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PF(01-81)

ポスター発表 PF(01-81)

Sun. Oct 8, 2017 4:00 PM - 6:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

4:00 PM - 6:00 PM

[PF81] 統計リテラシー日本語版尺度の妥当性と信頼性の検討

ニューメラシーや批判的思考態度との関係

伊川美保1, 綾部宏明2, 松岡真由子3, 平岡大樹#4, 西山慧#5, 高野了太#6, 楠見孝7 (1.京都大学, 2.京都大学大学院, 3.京都大学大学院, 4.京都大学, 5.京都大学, 6.京都大学, 7.京都大学)

Keywords:統計リテラシー, ニューメラシー, 批判的思考態度

問題と目的
問題 今日の情報化社会では,統計情報を意思決定に活かすための統計リテラシー(日常生活における統計情報を理解し批判的に評価する能力;Wallman,1993)が重要である。一方,日本の統計リテラシー教育は十分と言えず,特に学習成果の評価のための統計リテラシー尺度が不足している。
目的 本研究の目的は,統計リテラシー日本語版尺度を作成し,妥当性や信頼性を検討することである。信頼性は,Cronbachのα係数により検討した(研究1)。妥当性は,構成概念妥当性と予測的妥当性の二種類を調べた。前者は,統計リテラシーと類似した心理学的構成概念である,批判的思考態度(論理的で偏りのない思考;楠見,2013)やニューメラシー(数的思考力;Peters,2008)との相関係数を算出した(研究1)。後者は,統計的推論テスト(Garfield, 2003)との相関係数を求めることで,尺度得点が実際のパフォーマンスをどの程度予測するかを調べた(研究2)。
研 究 1
方法 110名の大学生(男性59名,平均年齢18.9歳)に質問紙調査を実施。(1)統計リテラシー日本語版尺度 Carmichael & Hay (2009) の9項目尺度(5件法)を翻訳・逆翻訳によって作成した(Table1)。(2)ニューメラシー尺度 Fagerlin et al. (2007)から「自己効力感」を測る4項目(6件法)を使用した (例:買い物の時の8%の消費税の計算はどのくらい理解しやすいですか;楠見・伊川,2015)。(3)批判的思考態度尺度 楠見・平山(2013)の12項目簡易版尺度(5件法)を測定した(例:いつも偏りのない判断をしようとする)。
結果 統計リテラシー日本語版尺度の平均評定値は5段階中3.1であった。信頼性係数はα=.84であった。次に,3つの尺度間の相関係数を調べたところ,統計リテラシーはニューメラシーや批判的思考態度と有意な正の相関が得られた(r_N=.42, r_CT=.37,ともにp_s<.01)。よって,統計リテラシー日本語版尺度の収束的妥当性は検証された。なお,ニューメラシーと批判的思考態度は無相関であったため(r =-.01, p =.90),統計リテラシーとニューメラシーの弁別的妥当性も確認された。
研 究 2
方法 70名の大学生(男性46名,平均年齢21.2歳)に質問紙調査を実施。参加者は統計リテラシー日本語版尺度と統計的推論テスト20問(Garfield, 2003)に回答した。統計的推論テストの各問には,「正しい推論」または「誤った推論」を測る選択肢が含まれていた(Figure1)。また,統計リテラシー日本語版尺度はグラフへの自己効力感を測る項目が多いため,テストの問題文をグラフで記す条件(グラフ条件)と,文章で記す条件(文章条件)を設定し,どちらの表記が統計リテラシー日本語版尺度と強い相関が得られるかについても検討した。
結果 統計的推論テストの「正しい推論」に1点を与え,20問の合計値を計算した。「誤った推論」についても同様に得点化した。統計リテラシー日本語版尺度と「正しい推論」得点,「誤った推論」得点の相関係数を算出したところ,統計リテラシーは「正しい推論」得点と有意な正の相関を示した(r_グラフ=.51;r_文章=.31,p_s<.01)。ただし,文章条件とグラフ条件で相関係数に有意差が見られなかった。なお,「誤った推論」得点とは無相関であった(r_グラフ=-.22, p_s=.21;r_文章 =-.21, p_s=.22)。
総合考察
統計リテラシー日本語版尺度は.80以上の信頼性係数を示し,ニューメラシーや批判的思考態度と有意な相関であったため,信頼性と構成概念妥当性が認められた。また,統計的推論テストの「正しい推論」得点と有意な相関を持つことから,予測的妥当性も確かめられた。