10:00 AM - 12:00 PM
[PG07] 保育場面における幼児の援助要請行動
Keywords:援助要請, 幼児, 保育場面
問題と目的
幼児は施設内で困難に際した場合,保育者に援助を求めることになる。これまでの研究で,幼児が援助者を選択していること(Cluver et al., 2013)や,幼児期ですでに性差や年齢差が見られること(Benenson & Koulnazarian, 2008)が明らかになっている。しかし,これまでの研究の多くは実験研究による知見であり,自然場面における援助要請を包括的にとらえた研究は見られない。
本研究では,日常の保育場面において,幼児が具体的にどのような形で援助要請行動を行い,問題を解決しているのかのプロセスをモデル化することを目的とする。その際に保育者が幼児の援助要請にどのように対応し,その対応に幼児がどのような反応を示しやすいのかを併せて検討する。
方 法
対象者 3~6歳児(年齢別の3クラス)約60名。
調査方法 エスノグラフィーの手法をもとに保育園での幼児の日常の様子を観察した。幼児や保育者の自然な行動を観察するためにビデオは使用せず,メモに基づくフィールドノーツを作成した。本研究では幼児の援助要請行動を「幼児が自分自身ではできない,または勝手にしてはいけないと判断していることに対して大人に助けを求める際に行う行動」と定義し,幼児の援助要請行動から保育者の対応,それに対する幼児の反応までを一つのエピソードとして収集した。
分析方法 15日間36時間で120のエピソードが得られた。エピソードの分類はエピソード内容,援助要請行動,保育者の対応,対応後の幼児の反応という4つの観点から行った。分類を行った後,年齢差や性差を明らかにするため,χ2検定および残差分析を行った。その後,分類されたカテゴリを用いてχ2検定および残差分析を行うことでエピソード内容,年齢,男女別のモデルを生成した。
結 果
エピソードの年齢差・性差 3歳では「認知能力の限界」や「報告」,4歳では「身体能力の限界」,5歳では「人間関係の問題」に関するエピソードが他の年齢に比べて多かった。性差は見られなかった。援助要請行動は,全体として「言語」を用いるものが最も多かった。また,3歳では「物の提示」,4歳では「身体表現」や「視線」,5歳では「泣き」を用いやすい傾向が見られた。性別による比較も行ったところ女児では「視線」が多かった。次に,保育者の対応を年齢間で比較すると,4歳児では「行動化」,5歳児では「提案」がされやすいという傾向が見られた。性別による比較も行ったところ,女児に対しては「説得」が多かった。幼児の反応について,年齢や性別による差は見られなかった。
援助要請プロセス 幼児全体の援助要請のプロセスを表すモデルを作成した(Figure 1)。その結果,「人間関係の問題」に対して幼児が「泣き」という行動をとり,それに対して保育者が「提案」をすると,幼児が「不満」の反応を示すなどのプロセスが示された。年齢や性別ごとにも異なる援助要請のプロセスが示された。
考 察
援助要請行動の分類を行い,幼児は様々な形で援助要請を行っていることが明らかになった。また,場面に応じて幼児の援助要請行動が異なり,その要請に応じて保育者の対応は変化するということが示された。幼児が場面に応じて使い分けている可能性がある。援助要請行動やプロセスは,年齢や性別によって異なることも明らかとなった。
幼児は施設内で困難に際した場合,保育者に援助を求めることになる。これまでの研究で,幼児が援助者を選択していること(Cluver et al., 2013)や,幼児期ですでに性差や年齢差が見られること(Benenson & Koulnazarian, 2008)が明らかになっている。しかし,これまでの研究の多くは実験研究による知見であり,自然場面における援助要請を包括的にとらえた研究は見られない。
本研究では,日常の保育場面において,幼児が具体的にどのような形で援助要請行動を行い,問題を解決しているのかのプロセスをモデル化することを目的とする。その際に保育者が幼児の援助要請にどのように対応し,その対応に幼児がどのような反応を示しやすいのかを併せて検討する。
方 法
対象者 3~6歳児(年齢別の3クラス)約60名。
調査方法 エスノグラフィーの手法をもとに保育園での幼児の日常の様子を観察した。幼児や保育者の自然な行動を観察するためにビデオは使用せず,メモに基づくフィールドノーツを作成した。本研究では幼児の援助要請行動を「幼児が自分自身ではできない,または勝手にしてはいけないと判断していることに対して大人に助けを求める際に行う行動」と定義し,幼児の援助要請行動から保育者の対応,それに対する幼児の反応までを一つのエピソードとして収集した。
分析方法 15日間36時間で120のエピソードが得られた。エピソードの分類はエピソード内容,援助要請行動,保育者の対応,対応後の幼児の反応という4つの観点から行った。分類を行った後,年齢差や性差を明らかにするため,χ2検定および残差分析を行った。その後,分類されたカテゴリを用いてχ2検定および残差分析を行うことでエピソード内容,年齢,男女別のモデルを生成した。
結 果
エピソードの年齢差・性差 3歳では「認知能力の限界」や「報告」,4歳では「身体能力の限界」,5歳では「人間関係の問題」に関するエピソードが他の年齢に比べて多かった。性差は見られなかった。援助要請行動は,全体として「言語」を用いるものが最も多かった。また,3歳では「物の提示」,4歳では「身体表現」や「視線」,5歳では「泣き」を用いやすい傾向が見られた。性別による比較も行ったところ女児では「視線」が多かった。次に,保育者の対応を年齢間で比較すると,4歳児では「行動化」,5歳児では「提案」がされやすいという傾向が見られた。性別による比較も行ったところ,女児に対しては「説得」が多かった。幼児の反応について,年齢や性別による差は見られなかった。
援助要請プロセス 幼児全体の援助要請のプロセスを表すモデルを作成した(Figure 1)。その結果,「人間関係の問題」に対して幼児が「泣き」という行動をとり,それに対して保育者が「提案」をすると,幼児が「不満」の反応を示すなどのプロセスが示された。年齢や性別ごとにも異なる援助要請のプロセスが示された。
考 察
援助要請行動の分類を行い,幼児は様々な形で援助要請を行っていることが明らかになった。また,場面に応じて幼児の援助要請行動が異なり,その要請に応じて保育者の対応は変化するということが示された。幼児が場面に応じて使い分けている可能性がある。援助要請行動やプロセスは,年齢や性別によって異なることも明らかとなった。