10:00 AM - 12:00 PM
[PG09] 大学生親子ペアデータによる親離れ・子離れと関連要因の検討(1)
親離れと子離れが親子それぞれのキャリア発達に及ぼす影響
Keywords:親子関係, キャリア発達, ダイアドデータ
問題と目的
大学生のキャリア形成には,親子関係が重要であることが明らかにされている(高田・正木・水本・池上, 2016)。一方で,大学生の親は,launching phase(巣立て期)におり(Bouchard, 2014),適切な子の巣立ちがなされなければ「空の巣症候群」に陥ることが示唆される(清水, 2004)。また,従来より,子離れが出来ない親が問題視されていたが(渡辺, 1984),近年でも,大学生の親に対して,子の就職活動への支援の仕方を伝える「親のための就職ガイダンス」が大学として実施されるなど,問題が顕在化されている。つまり,launching phaseにいる親にも,適切な親子関係が親自身のキャリア発達にも影響を及ぼすと考えられる。そのため,本研究では,親子関係が親子両者のキャリア発達に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
方 法
調査手続き 本研究では,スノーボール・サンプリングを用いて親子ペアデータを収集した。調査の実施にあたり,回答者に不利益が被らない旨を伝えるなど倫理的配慮について考慮した。
調査対象者 私立大学の4校に通う大学生373名(年齢M = 19.45, SD=0.98)から質問紙は回収された。また,母親からは128名(年齢M = 51.15, SD=4.03)から質問紙の返信がなされた。その後,親子の対応づけを実施した結果,77組(大学生 男性8名,女性69名)のデータが得られた。
調査項目 (1) 親離れ認知(「子が親離れ出来ているか」について1項目二値法で尋ねた),(2) 子離れ認知(「親が子離れ出来ているか」について1項目二値法で尋ねた),(3) 精神的自立尺度(水本・山根(2015); 「信頼」と「分離」で構成),(4) CAVT(下村他, 2009),(5) 日本語版人生の意味尺度(島井・大竹, 2005; 「意味保有」と「意味探索」で構成)
なお,大学生には(1),(2),(3),(4)に回答を求め,母親には(1),(2),(3),(5)に回答を求めた。
結果と考察
本研究では識別可能なペアデータを用いて,探索的にすべての変数にパスを仮定したフルモデルの共分散構造分析を実施した(Figure 1)。
その結果,まず,子の親離れ認知は,分離を促進しキャリア発達を促進していた。また,子の信頼感は親の信頼感認知を媒介し,親子のキャリア発達を促していた。つまり,子の精神的自立は,親子それぞれのキャリア発達に高めると考えられる。一方で,親の子離れ認知が子の信頼感を,親の分離認知が子のビジョンを抑制していた。したがって,親が自分が子離れしていると認識したり,子がすでに分離していると認識することは子どもの自立やキャリア発達を損なっていた。以上のことから,子が自発的に精神的に自立することが親子のキャリア発達に重要であると考えられる。
大学生のキャリア形成には,親子関係が重要であることが明らかにされている(高田・正木・水本・池上, 2016)。一方で,大学生の親は,launching phase(巣立て期)におり(Bouchard, 2014),適切な子の巣立ちがなされなければ「空の巣症候群」に陥ることが示唆される(清水, 2004)。また,従来より,子離れが出来ない親が問題視されていたが(渡辺, 1984),近年でも,大学生の親に対して,子の就職活動への支援の仕方を伝える「親のための就職ガイダンス」が大学として実施されるなど,問題が顕在化されている。つまり,launching phaseにいる親にも,適切な親子関係が親自身のキャリア発達にも影響を及ぼすと考えられる。そのため,本研究では,親子関係が親子両者のキャリア発達に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
方 法
調査手続き 本研究では,スノーボール・サンプリングを用いて親子ペアデータを収集した。調査の実施にあたり,回答者に不利益が被らない旨を伝えるなど倫理的配慮について考慮した。
調査対象者 私立大学の4校に通う大学生373名(年齢M = 19.45, SD=0.98)から質問紙は回収された。また,母親からは128名(年齢M = 51.15, SD=4.03)から質問紙の返信がなされた。その後,親子の対応づけを実施した結果,77組(大学生 男性8名,女性69名)のデータが得られた。
調査項目 (1) 親離れ認知(「子が親離れ出来ているか」について1項目二値法で尋ねた),(2) 子離れ認知(「親が子離れ出来ているか」について1項目二値法で尋ねた),(3) 精神的自立尺度(水本・山根(2015); 「信頼」と「分離」で構成),(4) CAVT(下村他, 2009),(5) 日本語版人生の意味尺度(島井・大竹, 2005; 「意味保有」と「意味探索」で構成)
なお,大学生には(1),(2),(3),(4)に回答を求め,母親には(1),(2),(3),(5)に回答を求めた。
結果と考察
本研究では識別可能なペアデータを用いて,探索的にすべての変数にパスを仮定したフルモデルの共分散構造分析を実施した(Figure 1)。
その結果,まず,子の親離れ認知は,分離を促進しキャリア発達を促進していた。また,子の信頼感は親の信頼感認知を媒介し,親子のキャリア発達を促していた。つまり,子の精神的自立は,親子それぞれのキャリア発達に高めると考えられる。一方で,親の子離れ認知が子の信頼感を,親の分離認知が子のビジョンを抑制していた。したがって,親が自分が子離れしていると認識したり,子がすでに分離していると認識することは子どもの自立やキャリア発達を損なっていた。以上のことから,子が自発的に精神的に自立することが親子のキャリア発達に重要であると考えられる。