10:00 AM - 12:00 PM
[PG14] 中学生の社会的行動についての研究(109)
移行期の時間的展望の変化の様相
Keywords:中学生, 時間的展望, 移行
目 的
五十嵐ら(2005ほか)は,青年期への移行期間である中学生自身とその取り巻く多くの要因と関連についてさまざまな角度から分析してきた。その心理の特性は自己を時間軸に沿ってとらえることと大きくかかわっていることが確認されてきた。しかし,学年進行に伴って時間的展望が質的にも変化していることが予想され,あらためてその構造や特性を確認することにした。また,初期の報告では(五十嵐ら,2005,06ほか)では,一部地域のデータ分析による報告であった。調査対象全体について再確認する必要があると考えた。
方 法
(1)協力者;愛知県と福島県の中学1年生が3年生になるまでの7回,調査を実施した(2,287人が最終調査協力者)。その中で継続して回答が得られ,時間的展望を軸に現状の受けとめ方や進級のとらえ方,進路選択の状況といった項目を用意した。実施したのは,中学1年2月(W1)・中学2年6月(W2)・中学2年2月(W3),中学3年9月(W4)であった。なお回答の状況や要因によって人数に違いがある。
(2)分析内容;学年移行のとらえ方として「進級への期待感」,「入学後の生活の振り返り」。時間的展望として主に「いま」と「将来」に関するとらえ方,進路についての質問10項目。「非常にあてはまる」~「非常にあてはまらない」の6件法。
結 果
学年移行の「この1年,いやなことよりいいことのほうがたくさんあった」「2年(3年)に進級するのが楽しみだ」は1年生と2年生の学年末に実施した。対応のあるt検定を行った結果,前者では,有意な違いは確認できなかった(t=1.757,df=890,ns)。後者はそれぞれの平均が4.23(1.61),3.40(1.63)という結果で,有意な差が確認された(t=12.919,df=895,p<.001)。これらは,その時期の不適応感やストレスについての有意な説明変数であった。
進路意識を含む時間的展望について,調査回ごとに因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行った。4回とも共通して因子を構成したのは,次のとおりである。「卒業後のことをいろいろ考えている」など4項目からなる「将来展望の明確化」因子。次は「自分の夢や希望は実現すると思う」といった3項目から成る「将来への期待感」,3因子目が「今何をしていいか混乱」など2項目からなる「混乱と不安」であった。いずれも寄与率は60%前後であった。
続いて,各因子について調査回と性による分散分析(反復測定)を行った結果,「将来展望の明確化」では回ごとに有意な差がみられた(F(3,1167)=28.413,p<.001)。多重比較(Sidak法,5%水準)を行ったところ,W4が最も高く,W3がW1・2よりも有意に高かい結果であった。「将来への期待感」は,有意な差が確認されなかった。
「混乱と不安」は,調査回による有意な差がみられた(F(3,1179)=34.318,p<.001)。多重比較の結果,W1・3<W2<W4が確認され,男女間でも有意な差があった。「大人に,早くなりたい…」と「今やりたいことは特にない」の2項目は回によって含まれる因子が異なり,中学生のとらえ方に変化が見られた。W3では,どちらも第3因子だったものの,他の回では第2因子により高い負の負荷量を示した。一見,安定しているように見える2年次は,生活や心理的な変化が潜在的に進んでいることが確認された。その他,「やりたいことは特にない」,「…考えても仕方がない」も各回で有意な差があった(F(3,1206)=20.943,p<.001,F(3,1191)=3.451,p<.05)。「大人に,早くなりたい」も有意な差があり(F(3,1188)=2.739,p<.05),W2<W4という結果で,五十嵐ら(2006)同様にネガティブな側面と捉えられる。これら時間的展望の様相とストレスや不適応行動との関連についても各回で異なる関連が予測される。(科研費・基盤研究(B)(1)14310055(代表 氏家達夫)の補助をうけた)
五十嵐ら(2005ほか)は,青年期への移行期間である中学生自身とその取り巻く多くの要因と関連についてさまざまな角度から分析してきた。その心理の特性は自己を時間軸に沿ってとらえることと大きくかかわっていることが確認されてきた。しかし,学年進行に伴って時間的展望が質的にも変化していることが予想され,あらためてその構造や特性を確認することにした。また,初期の報告では(五十嵐ら,2005,06ほか)では,一部地域のデータ分析による報告であった。調査対象全体について再確認する必要があると考えた。
方 法
(1)協力者;愛知県と福島県の中学1年生が3年生になるまでの7回,調査を実施した(2,287人が最終調査協力者)。その中で継続して回答が得られ,時間的展望を軸に現状の受けとめ方や進級のとらえ方,進路選択の状況といった項目を用意した。実施したのは,中学1年2月(W1)・中学2年6月(W2)・中学2年2月(W3),中学3年9月(W4)であった。なお回答の状況や要因によって人数に違いがある。
(2)分析内容;学年移行のとらえ方として「進級への期待感」,「入学後の生活の振り返り」。時間的展望として主に「いま」と「将来」に関するとらえ方,進路についての質問10項目。「非常にあてはまる」~「非常にあてはまらない」の6件法。
結 果
学年移行の「この1年,いやなことよりいいことのほうがたくさんあった」「2年(3年)に進級するのが楽しみだ」は1年生と2年生の学年末に実施した。対応のあるt検定を行った結果,前者では,有意な違いは確認できなかった(t=1.757,df=890,ns)。後者はそれぞれの平均が4.23(1.61),3.40(1.63)という結果で,有意な差が確認された(t=12.919,df=895,p<.001)。これらは,その時期の不適応感やストレスについての有意な説明変数であった。
進路意識を含む時間的展望について,調査回ごとに因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行った。4回とも共通して因子を構成したのは,次のとおりである。「卒業後のことをいろいろ考えている」など4項目からなる「将来展望の明確化」因子。次は「自分の夢や希望は実現すると思う」といった3項目から成る「将来への期待感」,3因子目が「今何をしていいか混乱」など2項目からなる「混乱と不安」であった。いずれも寄与率は60%前後であった。
続いて,各因子について調査回と性による分散分析(反復測定)を行った結果,「将来展望の明確化」では回ごとに有意な差がみられた(F(3,1167)=28.413,p<.001)。多重比較(Sidak法,5%水準)を行ったところ,W4が最も高く,W3がW1・2よりも有意に高かい結果であった。「将来への期待感」は,有意な差が確認されなかった。
「混乱と不安」は,調査回による有意な差がみられた(F(3,1179)=34.318,p<.001)。多重比較の結果,W1・3<W2<W4が確認され,男女間でも有意な差があった。「大人に,早くなりたい…」と「今やりたいことは特にない」の2項目は回によって含まれる因子が異なり,中学生のとらえ方に変化が見られた。W3では,どちらも第3因子だったものの,他の回では第2因子により高い負の負荷量を示した。一見,安定しているように見える2年次は,生活や心理的な変化が潜在的に進んでいることが確認された。その他,「やりたいことは特にない」,「…考えても仕方がない」も各回で有意な差があった(F(3,1206)=20.943,p<.001,F(3,1191)=3.451,p<.05)。「大人に,早くなりたい」も有意な差があり(F(3,1188)=2.739,p<.05),W2<W4という結果で,五十嵐ら(2006)同様にネガティブな側面と捉えられる。これら時間的展望の様相とストレスや不適応行動との関連についても各回で異なる関連が予測される。(科研費・基盤研究(B)(1)14310055(代表 氏家達夫)の補助をうけた)