10:00 AM - 12:00 PM
[PG34] 友人間のほめと達成目標・知能観との関連
Keywords:ほめ, 達成目標, 友人関係
問題と目的
多くの動機づけ研究は,努力・能力に関するほめが達成目標 (Dweck, 1986, Elliot, 2005) や知能観 (Dweck, 1999) と関連することを示す (e.g., Pomerantz & Kempner, 2013)。例えば,Mueller & Dweck (1998) は,努力をほめられると,能力を向上させようという習得接近目標や,自分の能力は努力によって変えられるという増大的知能観が強まる一方,能力をほめられると,他者よりも良い成績をとろうという遂行接近目標や,能力は決まっていて変えられないという固定的知能観が強まることを示した。
これまでのほめ研究の大部分は,教師や親からのほめを扱ったものである。しかし,協同学習が推奨される現代においては (学習指導要領, 2017),生徒が生徒をほめることもあり,友人関係でのほめにも焦点をあてる必要がある。また,コミュニケーションが話者の認知にも影響を与えるという研究 (e.g., Janis & King, 1954) から,ほめることが,ほめ手の目標や信念に影響する可能性がある。
したがって,本研究では生徒同士でのほめに焦点をあて,ほめられる頻度・ほめる頻度と,達成目標・知能観との関連について検討する。達成目標について,能力が低下することを避ける習得回避目標,他者よりも悪い成績をとることを避ける遂行回避目標についても合わせて検討した。
方 法
調査協力者 大学生188名のうち,分析には欠損値のない145名 (女性98名;平均年齢19.23歳) のデータを用いた。
質問項目 ほめの質問項目は本研究で作成した。(1) ほめられる頻度:努力 (e.g., がんばったね)・能力 (e.g., かしこいね) に関して友人からほめられる頻度について10件法で回答を求めた。(2) ほめる頻度:努力・能力に関して友人をほめる頻度について10件法で回答を求めた。(3)達成目標:近年の分類に基づき,Elliot et al. (2011) の項目を使用した。課題接近 (回避) 目標,他者接近 (回避) 目標,それぞれ3項目,合計12項目について7件法で回答を求めた。(4) 知能観:Dweck (1999) の項目を使用した。増大理論,固定理論,それぞれ4項目,合計8項目について6件法で回答を求めた。分析の際,固定理論の値を逆転し,増大理論の項目と合成した。したがって得点が高いほど,増大理論が強いことを示す。
結果と考察
分析方法 ほめの頻度を説明変数,達成目標・知能観を結果変数とする重回帰分析を行った。その際,性別と年齢を統制した。
ほめられる頻度(Table 1) 努力に関してほめられる頻度と,課題接近目標・知能観との間に有意な正の関連がみられた。また,能力に関してほめられる頻度と,他者接近目標との間に有意な,課題回避目標・他者回避目標との間に有意傾向な正の関連がみられた。友人からのほめと達成目標・知能観の間に,先行研究と同様の関連があることが明らかとなった。
ほめる頻度(Table 1) 努力に関してほめる頻度と知能観との間に有意な正の関連がみられた。また,能力に関してほめる頻度と他者回避目標との間に有意な正の関連が,知能観との間に有意傾向な負の関連がみられた。努力ほめと達成目標の関連はなかったものの,ほめる場合についてもほめられる場合とほぼ同様の関係があることが明らかとなった。
本研究の結果から,友人間のほめは,教師や親からのほめと同じ影響があることが示唆される。また,ほめ手に対しても影響を与える可能性が示唆される。しかし,本研究は調査であり,因果関係の特定はできない。ほめることと達成目標・知能観に関して,さらに検討する必要があるだろう。
多くの動機づけ研究は,努力・能力に関するほめが達成目標 (Dweck, 1986, Elliot, 2005) や知能観 (Dweck, 1999) と関連することを示す (e.g., Pomerantz & Kempner, 2013)。例えば,Mueller & Dweck (1998) は,努力をほめられると,能力を向上させようという習得接近目標や,自分の能力は努力によって変えられるという増大的知能観が強まる一方,能力をほめられると,他者よりも良い成績をとろうという遂行接近目標や,能力は決まっていて変えられないという固定的知能観が強まることを示した。
これまでのほめ研究の大部分は,教師や親からのほめを扱ったものである。しかし,協同学習が推奨される現代においては (学習指導要領, 2017),生徒が生徒をほめることもあり,友人関係でのほめにも焦点をあてる必要がある。また,コミュニケーションが話者の認知にも影響を与えるという研究 (e.g., Janis & King, 1954) から,ほめることが,ほめ手の目標や信念に影響する可能性がある。
したがって,本研究では生徒同士でのほめに焦点をあて,ほめられる頻度・ほめる頻度と,達成目標・知能観との関連について検討する。達成目標について,能力が低下することを避ける習得回避目標,他者よりも悪い成績をとることを避ける遂行回避目標についても合わせて検討した。
方 法
調査協力者 大学生188名のうち,分析には欠損値のない145名 (女性98名;平均年齢19.23歳) のデータを用いた。
質問項目 ほめの質問項目は本研究で作成した。(1) ほめられる頻度:努力 (e.g., がんばったね)・能力 (e.g., かしこいね) に関して友人からほめられる頻度について10件法で回答を求めた。(2) ほめる頻度:努力・能力に関して友人をほめる頻度について10件法で回答を求めた。(3)達成目標:近年の分類に基づき,Elliot et al. (2011) の項目を使用した。課題接近 (回避) 目標,他者接近 (回避) 目標,それぞれ3項目,合計12項目について7件法で回答を求めた。(4) 知能観:Dweck (1999) の項目を使用した。増大理論,固定理論,それぞれ4項目,合計8項目について6件法で回答を求めた。分析の際,固定理論の値を逆転し,増大理論の項目と合成した。したがって得点が高いほど,増大理論が強いことを示す。
結果と考察
分析方法 ほめの頻度を説明変数,達成目標・知能観を結果変数とする重回帰分析を行った。その際,性別と年齢を統制した。
ほめられる頻度(Table 1) 努力に関してほめられる頻度と,課題接近目標・知能観との間に有意な正の関連がみられた。また,能力に関してほめられる頻度と,他者接近目標との間に有意な,課題回避目標・他者回避目標との間に有意傾向な正の関連がみられた。友人からのほめと達成目標・知能観の間に,先行研究と同様の関連があることが明らかとなった。
ほめる頻度(Table 1) 努力に関してほめる頻度と知能観との間に有意な正の関連がみられた。また,能力に関してほめる頻度と他者回避目標との間に有意な正の関連が,知能観との間に有意傾向な負の関連がみられた。努力ほめと達成目標の関連はなかったものの,ほめる場合についてもほめられる場合とほぼ同様の関係があることが明らかとなった。
本研究の結果から,友人間のほめは,教師や親からのほめと同じ影響があることが示唆される。また,ほめ手に対しても影響を与える可能性が示唆される。しかし,本研究は調査であり,因果関係の特定はできない。ほめることと達成目標・知能観に関して,さらに検討する必要があるだろう。