10:00 AM - 12:00 PM
[PG39] 協同的な学習意識を育むスキルトレーニングの開発(1)
傾聴トレーニングによるスキル得点の変化
Keywords:協同学習, 社会的(傾聴)スキル
問題と目的
学校教育現場では,他者との協同的な学びによって深い思考の促進などの認知的な側面のみならず,協同の意義や責任感などの社会性の側面をも含めた豊かな学びの形成が期待されている。しかし,学習者の社会的スキルが低い場合,グループメンバーとの円滑な意見交流ができず,期待されている協同学習の学習効果は認知的・社会的側面の双方ともに十分得ることが難しいと推測される。
上記の問題意識より,本研究では社会的スキルの中でも特にグループメンバーの意見を「聴く」スキル(傾聴スキル)に着目し,大学生の半期の授業を対象にしてスキルトレーニングと協同学習の相乗的な効果について縦断的に検証を行う。協同学習の展開と並行して傾聴スキルの育成を行うことにより,多様な背景をもつ学習者同士が適切に個々のリソースを共有し合うことができると予測できる。そのような経験を積み重ねることで,学習者の協働的な学習意識が高まるだろう。本発表では,はじめにスキルトレーニングを通した傾聴スキルの得点の変化を報告する。
方 法
対象:教職必修科目「生徒指導・教育相談」の授業を受講した大学生196名(2クラス)を対象とした。本授業では,半期を通して4~5名の小人数グループによる協同学習を軸に授業が展開された。
手続き:第1回から第10回までの授業のうち9回分を用いて,マイクロカウンセリングの理論を参考に作成した傾聴スキル(Table 1)のトレーニングを実施した。スキルトレーニングは,各授業の冒頭15~20分を用いてグループ単位で行われた。第11回以降の授業ではトレーニングの時間は取らなかったものの,グループでの話し合いの際には傾聴スキルを意識して話し合うように促した。
測定変数:傾聴スキル 巽他 (2010)から引用した Questionnaire to Assess the Attitude of Active Listeningの下位尺度である聴き方(「相手が話したポイントを頭の中で要約しながら聞いた」,「メンバーの話をじっくり聞いた」,「言葉には表現されていない気持ちにも注意しながら話を聞いた」)と傾聴の態度(「相手の話が終わらないうちに話し始めた」,「話していて,つい指示,説得調の話し方になった」,「相手と話していて,自分の意見を押し通した」)の項目のうち,報告された因子負荷量の高かった3項目ずつを使用した(4件法)。なお,傾聴の態度を得点化する際は全て逆転項目処理をした。これらの計6項目は,学習者の振り返りも兼ねて毎回の授業後に測定された。
結果と考察
傾聴スキル得点の時期による変化について検討するために,授業の前半・中盤・後半にそれぞれ相当する第1回・第8回・第15回の各変数の加算平均を算出した (Figure 1)。
聴き方と傾聴の態度の各変数について,1要因3水準被験者内計画の分散分析を行った。その結果,それぞれ時期の主効果が有意であった(順にF (2, 236) = 10.53, 11.71:ps < .001;η2 = .04, .03)。多重比較(Shaffer法)の結果,いずれも第1回と第8回の間には有意差がみられなかったものの,第1回と第15回,第8回と第15回の間にはそれぞれ有意差がみられた。したがって,前半から中盤にかけては2種類のスキルの得点には変動がみられなかったものの,後半にかけて聴き方と傾聴の態度のいずれも向上することが確認された。統制群を設けていないため解釈上の限界点はあるものの,トレーニングの効果が一定程度示された。
学校教育現場では,他者との協同的な学びによって深い思考の促進などの認知的な側面のみならず,協同の意義や責任感などの社会性の側面をも含めた豊かな学びの形成が期待されている。しかし,学習者の社会的スキルが低い場合,グループメンバーとの円滑な意見交流ができず,期待されている協同学習の学習効果は認知的・社会的側面の双方ともに十分得ることが難しいと推測される。
上記の問題意識より,本研究では社会的スキルの中でも特にグループメンバーの意見を「聴く」スキル(傾聴スキル)に着目し,大学生の半期の授業を対象にしてスキルトレーニングと協同学習の相乗的な効果について縦断的に検証を行う。協同学習の展開と並行して傾聴スキルの育成を行うことにより,多様な背景をもつ学習者同士が適切に個々のリソースを共有し合うことができると予測できる。そのような経験を積み重ねることで,学習者の協働的な学習意識が高まるだろう。本発表では,はじめにスキルトレーニングを通した傾聴スキルの得点の変化を報告する。
方 法
対象:教職必修科目「生徒指導・教育相談」の授業を受講した大学生196名(2クラス)を対象とした。本授業では,半期を通して4~5名の小人数グループによる協同学習を軸に授業が展開された。
手続き:第1回から第10回までの授業のうち9回分を用いて,マイクロカウンセリングの理論を参考に作成した傾聴スキル(Table 1)のトレーニングを実施した。スキルトレーニングは,各授業の冒頭15~20分を用いてグループ単位で行われた。第11回以降の授業ではトレーニングの時間は取らなかったものの,グループでの話し合いの際には傾聴スキルを意識して話し合うように促した。
測定変数:傾聴スキル 巽他 (2010)から引用した Questionnaire to Assess the Attitude of Active Listeningの下位尺度である聴き方(「相手が話したポイントを頭の中で要約しながら聞いた」,「メンバーの話をじっくり聞いた」,「言葉には表現されていない気持ちにも注意しながら話を聞いた」)と傾聴の態度(「相手の話が終わらないうちに話し始めた」,「話していて,つい指示,説得調の話し方になった」,「相手と話していて,自分の意見を押し通した」)の項目のうち,報告された因子負荷量の高かった3項目ずつを使用した(4件法)。なお,傾聴の態度を得点化する際は全て逆転項目処理をした。これらの計6項目は,学習者の振り返りも兼ねて毎回の授業後に測定された。
結果と考察
傾聴スキル得点の時期による変化について検討するために,授業の前半・中盤・後半にそれぞれ相当する第1回・第8回・第15回の各変数の加算平均を算出した (Figure 1)。
聴き方と傾聴の態度の各変数について,1要因3水準被験者内計画の分散分析を行った。その結果,それぞれ時期の主効果が有意であった(順にF (2, 236) = 10.53, 11.71:ps < .001;η2 = .04, .03)。多重比較(Shaffer法)の結果,いずれも第1回と第8回の間には有意差がみられなかったものの,第1回と第15回,第8回と第15回の間にはそれぞれ有意差がみられた。したがって,前半から中盤にかけては2種類のスキルの得点には変動がみられなかったものの,後半にかけて聴き方と傾聴の態度のいずれも向上することが確認された。統制群を設けていないため解釈上の限界点はあるものの,トレーニングの効果が一定程度示された。