10:00 AM - 12:00 PM
[PG50] 社会化エージェントの多層的影響に関する研究(24)
養育と友人関係機能が自己他者モニタリングの発達軌跡に与える影響
Keywords:社会性, 発達軌跡, エージェント
浅野ら (2016) は,領域特定アプローチ (Grusec, 2011) に基づき,社会化エージェントの保護領域に関する養育受容と,監督領域に関する養育統制が中学生の望ましい社会化をうながすことを示した。本研究では,友人関係機能にも注目し,領域特定アプローチの集団参与領域を扱うとともに,仲間集団という家庭外での社会化プロセスを検討する (Smetana et al., 2006; Steinberg & Morris, 2001)。子どもの社会性の指標としては,対人目標と対人反応の決定に際して求められ (相川, 2009),自分自身や他者の感情・思考を把握できるという自己他者モニタリングのスキルを取り上げる (東海林ら, 2012)。本研究の目的は,中学3年間の自己他者モニタリングの発達軌跡を同定した上で,それらが養育や友人関係機能によって説明されるかどうかを検討することである。
方 法
参加者 A県内の平均的な特徴をもつ1公立中学校に通う生徒285名に対して,1年生時 (2014年1月),2年生時 (2015年1月),3年生時 (2016年1月) にわたって縦断的に調査を実施した。本研究では,1年生時から3年生時の調査すべてに回答した210名の中学生 (女子109名, 男子101名) のデータを分析対象とした。
測定項目 (1) 養育:養育受容 (10項目; ω = .93) と養育統制 (6項目; ω = .87) からなる養育認知尺度 (姜・酒井, 2006; 5件法) を1年生時に測定した。(2) 友人関係機能:友人関係機能尺度 (丹野, 2008) を改訂して1年生時に測定した (12項目5件法; ω = .95)。(3) 自己他者モニタリング:コミュニケーション基礎スキル尺度 (東海林ら, 2012) から,自己他者モニタリングの項目を1~3年生時に測定した (5項目3件法; ω = .71 ~ .84)。
分析計画 まず,得点を標準化した上で,1年生時から3年生時の自己他者モニタリングの発達軌跡が下位集団により異なるかどうかを検討するため,潜在クラス成長モデル (LCGM) による分析を行った。モデル適合の指標として,BIC,SSA-BIC,LMR test,エントロピーの4つを参照した。つぎに,養育と友人関係機能が同定された発達軌跡の下位集団を予測するかを検討するため,3ステップ法による多項ロジスティック回帰分析を行った。養育受容と養育統制は別々に投入した。サンプルサイズの小ささを考慮し,有意水準は10%とした。
結果と考察
自己他者モニタリングの発達軌跡 LCGMによる分析を行い,収束した1クラス解と3クラス解を検討したところ,3クラス解がよりデータにあてはまっていた (BIC = 1686.21, SSA-BIC = 1660.86 vs. BIC = 1676.39, SSA-BIC = 1632.03, LMR p = .179, エントロピー = .840)。すなわち,(a) 1年生時から順調に得点が上がっていく標準群,(b) 1年生時は中程度であるが,次第に低下していく中・低下群,(c) 1年生時に低得点であり,その後も低下していく低・低下群の3クラスが同定された (Figure 1)。
発達軌跡の予測 3ステップ法による分析の結果,養育受容 (OR = 0.64, 90% CI [0.44, 0.94]) や友人関係機能 (OR = 0.58, 90% CI [0.35, 0.94]) が高いほど,標準群よりも中・低下群に所属する確率が低かった。養育受容が高いほど,標準群よりも低・低下群に所属する確率も低かった (OR = 0.49, 90% CI [0.28, 0.88])。さらに,養育統制 (OR = 0.60, 90% CI [0.38, 0.94]) や友人関係機能 (OR = 0.49, 90% CI [0.31, 0.80]) が高いほど,標準群よりも中・低下群に所属する確率が低かった。養育統制が高いほど,標準群よりも低・低下群に所属する確率も低かった (OR = 0.37, 90% CI [0.22, 0.65])。友人関係機能が低・低下群を予測しなかった結果は,中学生の社会化に対する仲間集団の効果が限定的であることを示唆している。
今後は,より大きなサンプルサイズを確保し,同定された発達軌跡の妥当性を確かめる必要があるだろう。
方 法
参加者 A県内の平均的な特徴をもつ1公立中学校に通う生徒285名に対して,1年生時 (2014年1月),2年生時 (2015年1月),3年生時 (2016年1月) にわたって縦断的に調査を実施した。本研究では,1年生時から3年生時の調査すべてに回答した210名の中学生 (女子109名, 男子101名) のデータを分析対象とした。
測定項目 (1) 養育:養育受容 (10項目; ω = .93) と養育統制 (6項目; ω = .87) からなる養育認知尺度 (姜・酒井, 2006; 5件法) を1年生時に測定した。(2) 友人関係機能:友人関係機能尺度 (丹野, 2008) を改訂して1年生時に測定した (12項目5件法; ω = .95)。(3) 自己他者モニタリング:コミュニケーション基礎スキル尺度 (東海林ら, 2012) から,自己他者モニタリングの項目を1~3年生時に測定した (5項目3件法; ω = .71 ~ .84)。
分析計画 まず,得点を標準化した上で,1年生時から3年生時の自己他者モニタリングの発達軌跡が下位集団により異なるかどうかを検討するため,潜在クラス成長モデル (LCGM) による分析を行った。モデル適合の指標として,BIC,SSA-BIC,LMR test,エントロピーの4つを参照した。つぎに,養育と友人関係機能が同定された発達軌跡の下位集団を予測するかを検討するため,3ステップ法による多項ロジスティック回帰分析を行った。養育受容と養育統制は別々に投入した。サンプルサイズの小ささを考慮し,有意水準は10%とした。
結果と考察
自己他者モニタリングの発達軌跡 LCGMによる分析を行い,収束した1クラス解と3クラス解を検討したところ,3クラス解がよりデータにあてはまっていた (BIC = 1686.21, SSA-BIC = 1660.86 vs. BIC = 1676.39, SSA-BIC = 1632.03, LMR p = .179, エントロピー = .840)。すなわち,(a) 1年生時から順調に得点が上がっていく標準群,(b) 1年生時は中程度であるが,次第に低下していく中・低下群,(c) 1年生時に低得点であり,その後も低下していく低・低下群の3クラスが同定された (Figure 1)。
発達軌跡の予測 3ステップ法による分析の結果,養育受容 (OR = 0.64, 90% CI [0.44, 0.94]) や友人関係機能 (OR = 0.58, 90% CI [0.35, 0.94]) が高いほど,標準群よりも中・低下群に所属する確率が低かった。養育受容が高いほど,標準群よりも低・低下群に所属する確率も低かった (OR = 0.49, 90% CI [0.28, 0.88])。さらに,養育統制 (OR = 0.60, 90% CI [0.38, 0.94]) や友人関係機能 (OR = 0.49, 90% CI [0.31, 0.80]) が高いほど,標準群よりも中・低下群に所属する確率が低かった。養育統制が高いほど,標準群よりも低・低下群に所属する確率も低かった (OR = 0.37, 90% CI [0.22, 0.65])。友人関係機能が低・低下群を予測しなかった結果は,中学生の社会化に対する仲間集団の効果が限定的であることを示唆している。
今後は,より大きなサンプルサイズを確保し,同定された発達軌跡の妥当性を確かめる必要があるだろう。