The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PG(01-81)

ポスター発表 PG(01-81)

Mon. Oct 9, 2017 10:00 AM - 12:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 AM - 12:00 PM

[PG55] 大学運動部活動における部員の自律的動機づけが部活動への適応感に及ぼす影響

主将のリーダーシップを調整変数として

湯立1, 外山美樹2 (1.筑波大学大学院, 2.筑波大学)

Keywords:動機づけ, リーダーシップ, マルチレベル分析

問題と目的
 環境に適応することは,人間にとって重要な意味を持つ。7割以上の大学生は,サークルや部活動に参加したことがあり(ベネッセ,2012),サークルや部活動は,大学生にとって重要な環境であると言える。そこで,本研究では,大学における運動部活動に注目する。
 これまでの研究では,個人的要因と環境的要因が共に適応感に影響を及ぼすことが示されてきた(例えば,吉村,2005)。個人的要因として,動機づけが注目されているが,自律的な動機づけと適応感との関連について,先行研究では結果が一致していない(西村・櫻井,2013)。その理由として,成員の動機づけが適応感に及ぼす影響は,リーダーのリーダーシップによって異なることが考えられる。この点を踏まえ,本研究では,運動部活動の成員の自律的動機づけと部活動への適応感との関連が,運動部活動のリーダーである主将のリーダーシップによって調整されるかについて検討することを目的とする。
方   法
調査時期:2016年10月~12月      
分析対象者:運動部活動の主将ではない大学生271名(20集団)であった。
質問紙:1.運動に対する動機づけ:松本・竹中・高家(2003)の自己決定理論に基づく運動継続のための動機づけ尺度(以下,動機づけ尺度とする)を使用した。18項目,7件法。2.部活動への適応感:吉村(2005)が作成した部活動へ適応感尺度を用いた。20項目,7件法。3.主将のリーダーシップ:吉村(2005)が作成した主将のリーダーシップ尺度を用いた。20項目,7件法。
結果と考察
 動機づけ尺度の因子構造を確認するために,探索的因子分析を行った。その結果,「自律的動機づけ」(α=.88)と「他律的動機づけ」(α=.87)の2つ下位尺度が得られた。
 部活動への適合感尺度の各下位尺度得点における集団間の分散を確認するために,級内相関係数(ICC)を算出した。その結果,「部活動への積極的行動」が.21,「主将のリーダーシップへの満足」が.19,「部の雰囲気への満足」が.18であり,マルチレベル分析を用いる必要があると判断した。
 マルチレベル分析において,まず,部員の動機づけと部活動への適応感の関連を検討した。その結果,「部活動への積極的行動」と「部の雰囲気への満足」において,自律的動機づけが正の影響(順に,γ ̂_10=0.39,0.12,ps<.001),他律的動機づけが負の影響(順に,γ ̂_20=-0.11,p<.01;γ ̂_20=0.22,p<.001)を示した。「主将のリーダーシップへの満足」において,自律的動機づけのみが正の影響を示した(γ ̂_10=0.15,p<.05;γ ̂_20=-0.02,n.s.)。
 次に,部員の動機づけと部活動への適合感との関連が主将のリーダーシップによって調整されるかについて,主将のリーダーシップ尺度の下位尺度ごとに検討した。その結果,「部の雰囲気への満足」において,「自律的動機づけ」と「技術指導」(γ ̂_01=0.40, p<.05),「人間関係調整」(γ ̂_01=0.60,p<.05),「統率」(γ ̂_01=0.56,p<.001)の交互作用が有意であった。そこで,単純傾斜分析を行った。その結果,「技術指導」,「人間関係調整」,「統率」が高い(平均値+1SD)主将の集団で,自律的動機づけが部の雰囲気への満足に正の影響を示したが(順に,β=.35,.32,.40,ps<.001),それらが低い(平均値-1SD)主将の集団では,自律的動機づけが部の雰囲気への満足に影響を及ぼさなかった(順に,β=.05,.09,-.03,n.s.)。これら以外では動機づけと主将のリーダーシップの交互作用は見られなかった。
 本研究の結果より,部員の運動に対する自律的動機づけが部の雰囲気への満足に与える影響は,主将の「技術指導」,「人間関係調整」,「統率」の程度によって調整されることが示され,適応感を高めるには成員の動機づけとリーダーシップの交互作用が重要であることが示唆された。この結果を確認するために,今後学級や会社など様々な集団における検討が必要と考えられる。