10:00 AM - 12:00 PM
[PG59] 大学新入生の自閉症スペクトラム傾向が友人関係満足感に及ぼす影響
個人・環境要因の保護機能に注目して
Keywords:大学新入生, 自閉症スペクトラム傾向
問題と目的
近年,自閉症スペクトラム(以下,ASD)傾向のある大学生が増加している(日本学生支援機構, 2016)が,大学生活は高校生活に比べ自由度が高く,ASDのある学生は大学不適応に陥りやすいことが指摘されている(高橋,2012)。しかしながら,このような知見はASD学生への支援に関する事例研究において主に示されており,数量的なデータとしては示されていない。
そこで,本研究では大学新入生のASD傾向が大学適応に及ぼす影響を検討する。なお,本研究では,大学適応の指標として,友人関係に着目する。加えて,適応を促す保護機能を持った個人・環境要因を明らかにすることとした。
方 法
調査手続き:2017年4月に,大学の講義の前後の時間を用いて質問紙調査を実施した。
調査対象者:関東圏の大学3校の大学1年生280名(平均年齢=18.08,SD=0.26,男性31名,女性249名)。
調査内容:(1)デモグラフィック変数(学年,年齢,性別),(2)自閉性スペクトラム指数短縮版(Kubota et al., 2005),(3)KISS-18(菊池, 1988),(4)認知的統制尺度(甘利・馬岡, 2002),(5)知覚されたソーシャル・サポート尺度(福岡・橋本, 1997),(6)友人関係満足感尺度(加藤, 2001)
結果と考察
ASD傾向が友人関係満足感に及ぼす影響,および,適応を促す個人要因・環境要因を明らかにするために共分散構造分析を実施した。第1水準にASD傾向,第2水準に個人要因(ソーシャルスキル,認知的統制)と環境要因(知覚されたソーシャルサポート),第3水準に友人関係満足感を配置したモデルを検討し,有意でないパスを削除しながら分析を続けたところ,Figure1のモデルが得られた。
その結果,ASD傾向自体が友人関係満足感を損なうのではなく,ASD傾向によってソーシャルスキルの欠如や破局的思考,学外の友人からのサポート不足がもたらされ,友人関係満足感が低下することが示された。
以上より,ASD傾向のある大学新入生を支援する際には,認知行動療法(ソーシャルスキルトレーニングや認知再構成法)と学外の友人からサポートが得られるような環境調整が重要であると考えられる。
近年,自閉症スペクトラム(以下,ASD)傾向のある大学生が増加している(日本学生支援機構, 2016)が,大学生活は高校生活に比べ自由度が高く,ASDのある学生は大学不適応に陥りやすいことが指摘されている(高橋,2012)。しかしながら,このような知見はASD学生への支援に関する事例研究において主に示されており,数量的なデータとしては示されていない。
そこで,本研究では大学新入生のASD傾向が大学適応に及ぼす影響を検討する。なお,本研究では,大学適応の指標として,友人関係に着目する。加えて,適応を促す保護機能を持った個人・環境要因を明らかにすることとした。
方 法
調査手続き:2017年4月に,大学の講義の前後の時間を用いて質問紙調査を実施した。
調査対象者:関東圏の大学3校の大学1年生280名(平均年齢=18.08,SD=0.26,男性31名,女性249名)。
調査内容:(1)デモグラフィック変数(学年,年齢,性別),(2)自閉性スペクトラム指数短縮版(Kubota et al., 2005),(3)KISS-18(菊池, 1988),(4)認知的統制尺度(甘利・馬岡, 2002),(5)知覚されたソーシャル・サポート尺度(福岡・橋本, 1997),(6)友人関係満足感尺度(加藤, 2001)
結果と考察
ASD傾向が友人関係満足感に及ぼす影響,および,適応を促す個人要因・環境要因を明らかにするために共分散構造分析を実施した。第1水準にASD傾向,第2水準に個人要因(ソーシャルスキル,認知的統制)と環境要因(知覚されたソーシャルサポート),第3水準に友人関係満足感を配置したモデルを検討し,有意でないパスを削除しながら分析を続けたところ,Figure1のモデルが得られた。
その結果,ASD傾向自体が友人関係満足感を損なうのではなく,ASD傾向によってソーシャルスキルの欠如や破局的思考,学外の友人からのサポート不足がもたらされ,友人関係満足感が低下することが示された。
以上より,ASD傾向のある大学新入生を支援する際には,認知行動療法(ソーシャルスキルトレーニングや認知再構成法)と学外の友人からサポートが得られるような環境調整が重要であると考えられる。