10:00 AM - 12:00 PM
[PG62] 大学生の適応行動の捉え方
心理専門家との違いの比較
Keywords:適応観, 支援
問 題
心理専門家は,クライエント(Cl)への個別の支援にとどまらず,Clに関係した様々な場面において,様々な形で,Clの周囲の人たち(支援する他職種の専門家を含む)に,心理的な支援を行うことが想定されている。しかし,心理専門家側の見立てが,周囲の人たちにとって,Cl本人を理解することや,適応を促すことにつながらない場面に遭遇することがある。そのために,周囲の人たちのかかわりが,Clの不適応行動を増やしてしまうことがあり,その結果,Clも周囲も疲弊してしまうことすらある。こうした経験から,Clの適応を判断する視点と評価において,心理専門家とClの周囲の人たちの間にずれが生じやすい可能性がある。どのようなずれが生じやすいかを明らかにするためには,まずClの周囲の人たちが適応,あるいは不適応について,どのような考えを持っているかを知ることが必要である。そこで,心理専門家が使用している適応行動尺度の内容について,一般の人,まずは大学生がどう考えるかについて,調査を行った。
方 法
対象者:大学生158名(男性67名,女性87名,性別不明4名,平均19.9歳)。項目:(1)フェイスシート,(2)Vineland-Ⅱ適応行動尺度(458項目)の中のコミュニケーション領域:表出言語,日常生活スキル領域:身辺自立,社会性領域,から53項目,(3) Vineland-Ⅱ適応行動尺度の中の不適応行動より選択した,37項目,について,(2)は習慣的に行うことができていない場合,(3)は習慣的に生じていた場合,日常生活に支障になると思われる項目に〇を,思われない項目には×を記入してもらった。今回は(2)の分析について述べる。
結 果
(2),(3)それぞれにおいて,エクセル統計による数量化Ⅲ類を行った。しかし固有値が低いため,第6軸までに1.0以上のスコアがない変数を削除し,(2)のうちの29項目,(3)のうちの19項目に対して,再度数量化Ⅲ類を行った。そこで得られたカテゴリースコアについて,適応尺度は第3軸まで,不適応尺度は第4軸まで解釈を行った。この解釈の妥当性を検討するため,〇×の判断に基づいたクラスター分析を行ったところ,数量化Ⅲ類の軸とほぼ同様のクラスターが得られた。
適応尺度における第3軸までの累積寄与率は30.74%であった。第1クラスターは,言葉の基本的な理解,リスクの予測と立て直し,自身の健康や安全の保持といった「日常生活の基本スキル」,第2クラスターは会話を理解し,継続する「複雑なコミュニケーション」,第3クラスターは「交友関係の構築」と考えられた。また,クラスターを構成する項目を見ていくと,Vineland-Ⅱではコミュニケーション領域や社会性領域に含まれる項目の中にも,第1クラスターのスコアが高いもの,あるいはいずれのクラスターでも1.0以上のスコアを持つものが見られた。
考 察
Vineland-Ⅱの領域と,今回のクラスター分析で得られたクラスターは,おおむね共通しているものだった。Figure1より,大学生は適応について,まずは人とのかかわり,すなわち,その場のコミュニケーションの欠如か,関係を作り継続していくことの欠如かを生活に支障があるかどうかの判断材料とし(1軸),その後,人とのかかわりの欠如か,日常生活スキルの欠如かを生活に支障があるかどうかの判断材料とする(2軸)ことがわかる。このことから,心理専門家と一般の人とでは,適応について,おおむね共通したカテゴリーで捉えているものの,細かい部分で捉え方に差を生じる可能性が示唆された。また,累積寄与率が低いことから,適応の判断には個人差の大きいことが考えられ,この点も心理専門家と一般の人との間に,差を生じる可能性が示唆される。
心理専門家は,クライエント(Cl)への個別の支援にとどまらず,Clに関係した様々な場面において,様々な形で,Clの周囲の人たち(支援する他職種の専門家を含む)に,心理的な支援を行うことが想定されている。しかし,心理専門家側の見立てが,周囲の人たちにとって,Cl本人を理解することや,適応を促すことにつながらない場面に遭遇することがある。そのために,周囲の人たちのかかわりが,Clの不適応行動を増やしてしまうことがあり,その結果,Clも周囲も疲弊してしまうことすらある。こうした経験から,Clの適応を判断する視点と評価において,心理専門家とClの周囲の人たちの間にずれが生じやすい可能性がある。どのようなずれが生じやすいかを明らかにするためには,まずClの周囲の人たちが適応,あるいは不適応について,どのような考えを持っているかを知ることが必要である。そこで,心理専門家が使用している適応行動尺度の内容について,一般の人,まずは大学生がどう考えるかについて,調査を行った。
方 法
対象者:大学生158名(男性67名,女性87名,性別不明4名,平均19.9歳)。項目:(1)フェイスシート,(2)Vineland-Ⅱ適応行動尺度(458項目)の中のコミュニケーション領域:表出言語,日常生活スキル領域:身辺自立,社会性領域,から53項目,(3) Vineland-Ⅱ適応行動尺度の中の不適応行動より選択した,37項目,について,(2)は習慣的に行うことができていない場合,(3)は習慣的に生じていた場合,日常生活に支障になると思われる項目に〇を,思われない項目には×を記入してもらった。今回は(2)の分析について述べる。
結 果
(2),(3)それぞれにおいて,エクセル統計による数量化Ⅲ類を行った。しかし固有値が低いため,第6軸までに1.0以上のスコアがない変数を削除し,(2)のうちの29項目,(3)のうちの19項目に対して,再度数量化Ⅲ類を行った。そこで得られたカテゴリースコアについて,適応尺度は第3軸まで,不適応尺度は第4軸まで解釈を行った。この解釈の妥当性を検討するため,〇×の判断に基づいたクラスター分析を行ったところ,数量化Ⅲ類の軸とほぼ同様のクラスターが得られた。
適応尺度における第3軸までの累積寄与率は30.74%であった。第1クラスターは,言葉の基本的な理解,リスクの予測と立て直し,自身の健康や安全の保持といった「日常生活の基本スキル」,第2クラスターは会話を理解し,継続する「複雑なコミュニケーション」,第3クラスターは「交友関係の構築」と考えられた。また,クラスターを構成する項目を見ていくと,Vineland-Ⅱではコミュニケーション領域や社会性領域に含まれる項目の中にも,第1クラスターのスコアが高いもの,あるいはいずれのクラスターでも1.0以上のスコアを持つものが見られた。
考 察
Vineland-Ⅱの領域と,今回のクラスター分析で得られたクラスターは,おおむね共通しているものだった。Figure1より,大学生は適応について,まずは人とのかかわり,すなわち,その場のコミュニケーションの欠如か,関係を作り継続していくことの欠如かを生活に支障があるかどうかの判断材料とし(1軸),その後,人とのかかわりの欠如か,日常生活スキルの欠如かを生活に支障があるかどうかの判断材料とする(2軸)ことがわかる。このことから,心理専門家と一般の人とでは,適応について,おおむね共通したカテゴリーで捉えているものの,細かい部分で捉え方に差を生じる可能性が示唆された。また,累積寄与率が低いことから,適応の判断には個人差の大きいことが考えられ,この点も心理専門家と一般の人との間に,差を生じる可能性が示唆される。