The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PG(01-81)

ポスター発表 PG(01-81)

Mon. Oct 9, 2017 10:00 AM - 12:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 AM - 12:00 PM

[PG78] SGH指定高校における海外研修の効果

大石超1, 白鳥美香2 (1.長野県屋代高等学校, 2.長野県長野高等学校)

Keywords:SGH, 共分散構造分析, 海外研修

はじめに
 長野県長野高等学校は平成25年度にSGH校に指定され,平成27年度より2年生全員が台湾への海外研修を行っている。平成28年度には,11月28日~12月2日の4泊5日の日程で台湾研修が実施された。
 長野高校では1学年次より全生徒が課題研究に取り組み,地域課題の解決を通してグローバルな視点を獲得していくカリキュラムの一環として台湾研修が位置づけられている。その行程には,現地高校生との交流やフィールドワークが組み込まれ,長野高校生は全員が一人ずつプレゼンテーションを行ない,現地高校生とコミュニケーションを図る機会が設けられている。
 海外研修の教育的な意義を計り,今後の研修旅行の方向性を検討する事を目的として本研究を行った。

質問紙と手続き
 平成28年度の台湾研修に参加した2年生227名を対象に,質問紙による調査を実施した。質問紙は,Ⅰ研修旅行を振り返って(20項目),Ⅱホテルの印象について(12項目),Ⅲ研修旅行での交流や観光について(17項目)の3部構成とした。ⅠとⅡは5件法,Ⅲは4件法での回答を依頼した。

調査結果
 ⅠとⅢの合計37項目,およびⅡのホテルの総合的評価(3項目)を用いて分析を進めた。上記40項目のうち,天井効果とフロア効果を示した項目(12項目)を除外して,合計28項目を用いて分析を行った。
 まず,台湾研修での体験(第1層),充実感と能力向上感(第2層),自己肯定感と動機づけ(第3層)の3層モデルを想定した。因子分析の結果,第1層では4因子,第2層では2因子,第3層では2因子が妥当であることがわかり,質問項目を参考にして8因子に名称をつけた(Figure1)。そして,上記のモデルを用いて共分散構造分析を行った(Figure1)。モデルの適合度指標はCFI=0.865,RMSEA=0.063であった。

考   察
(1)海外研修による充実感と能力向上感
 「交流体験」因子と「異文化体験」因子が「英語コミュニケーション能力向上感」因子および「協働的自己拡充感」因子に影響を与えた事が分かった。海外研修の充実感を高めるためには,ホテル印象や自己発信よりも,交流体験を充実させることが重要であると考えられる。

(2)充実感と能力向上感から自己肯定感・動機づけへ
 「英語コミュニケーション能力向上感」因子と「協働的自己拡充感」因子はともに,「自己肯定感・挑戦意欲」因子および「学習意欲・探究意欲」因子に影響を与えた。「自己肯定感・挑戦意欲」因子と「学習意欲・探究意欲」因子の間には,因子間相関が0.662認められたが,質問項目から内容が質的に異なっていると考えられ,別因子と解釈した。海外研修を通して獲得した協働的自己拡充感が,自己肯定感・動機づけの向上に結びついた事が明らかとなった。
 また,「学習意欲・探究意欲」因子には,グローバル問題・ローカル問題意識の向上だけでなく,高校における学習意欲の向上も含まれた。これら3つに加えて多面的視点獲得の4項目が1つの因子にまとまった事から,教科学習に対する学習意欲と探究活動に対する意欲は切り離して考える必要がないと考えられる。
(3)今後の海外研修旅行の方向性
 海外研修の交流体験や異文化体験によって,自己肯定感や動機づけが高まったことが示された。
 異文化体験は,台湾ならではの歴史・自然・食べ物・お土産などを体験する事で,これらの経験を通して自己拡充感が高まり,さらに自己肯定間・意欲が高まったと言える。
 交流体験については,自己発信とは別因子になることは留意が必要であろう。自分が言いたいこと(伝えやすいこと)をプレゼンテーションするだけでは自己発信だけで終わってしまう。相手からの応答が得られやすいようなトピックを紹介し,話し合えるような交流会の方向性が,海外研修においては有効であると考えられる。