The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH05] 青年期の自己意識の発達的変化(3)

理想自己の様相を検討する

中間玲子 (兵庫教育大学大学院)

Keywords:青年期, 理想自己, 発達期待

問題と目的
 理想自己は,個人の価値が自己イメージとして表象化されたものであり,そこには個人が何を価値あるものとして生きているかが反映される。そしてそれは個人の自己形成をいくらか方向付ける役割も有する(中間, 2007)。よって理想自己の内容の検討は,個人が自己や他者や世界にどのように向き合い,いかなる方向への自己形成を望んでいるのかをとらえる有効な方法の一つといえよう。またその全体的様相は,現代青年の多様な価値意識の把握にもつながるだろう。本研究では,理想自己の内容の検討を通して,青年が志向する自己形成の方向性を明らかにすることを目的とする。
 ところで青年期は児童期までに内面化してきた価値観や信念を対象化し,依って立つ価値観や信念を模索する時期といわれる。ならば理想自己には,それまで同一化してきたと推測される親の発達期待と異なる何らかの特徴があるのだろうか。この検討から,青年期の理想自己のもつ特徴をより明確化することができるであろう。そこで,親の理想自己(発達期待)の様相についても同様に検討し,理想自己の内容との比較検討を行う。
方   法
 対象:関西在住の中学生から大学生2,422名;中学生1,081名(男子51.5%),高校生647名(男子39.9%),大学生348名(男子39.1%),多部制高校生346名(男子92.5%)。
 方法:下記調査内容を1冊の冊子にまとめた質問紙調査。授業の一部を用いて担任教師が質問冊子を配布し,その場で回答を教示し,回収した。
 調査内容(本報告に関連するのもののみ提示):(1)理想自己の内容:親が自分に求めているとされる理想自己(≒発達期待,以下,“親理想自己”と標記)と自分が抱いている理想自己についてそれぞれ自由記述の形式で回答を求めた。回答を求めた。10個の箇条書き形式の自由記述欄を設け,回答の記入例を3点提示した。(2)理想自己の主観的意味:記述した理想自己について,a.なりたいと思う程度,b.今の自分がそれにあてはまると思う程度,c.自分がそのようになれると思う程度(自分の理想自己のみ)について,6件法で評定を求めた。(3)それを日常どの程度自覚しているのか:自由記述やその後の評定過程の容易さについて自己評価をしてもらった。
結   果
1.各理想自己への意識 理想自己の記述数や主観的評定,自覚の程度について,理想自己の種類(親・自分)による差異が見られるのか否か,対応のあるt検定によって検討した(Table 1)。
 あてはまる程度は親理想の得点が高かったが,なりたい気持ちや回答過程のスムーズさは自分理想において得点が有意に高かった。
2.親理想および自分理想と校種・性別との関連 親および自分の理想の内容は,36のカテゴリーに分類し,該当者の多かった20カテゴリーと学年・性との関連をコレスポンデンス分析によって検討した(Figure 1)。記述の配置から,第1軸は“個人場面/関係場面”,第2軸は“外的/内的”の軸と解釈された。なお,第1軸の個人場面方向に親の価値,対人場面方向に自分の理想が配置されていた。第2軸は学年段階にも対応しており,外的から内的になるにつれて学年が上がっていっていた。