The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH10] 他者評定による幼児の完全主義の検討

縦断データを用いた親評定と保育者評定の比較

西元直美1, 山本正顕2 (1.関西福祉科学大学, 2.武庫川女子大学子ども発達科学研究センター)

Keywords:完全主義, 幼児, 縦断データ

目   的
 本研究は,親評定と保育者評定との比較を通して,幼児の完全主義評定について検討することを目的とするものである。「完全主義」とは,完璧な状態でなければならないと思ったり,必要以上に高い遂行基準を設定し,それに固執するといった人格特性と考えられるものである。完全主義に関する研究は,大学生あるいは成人を対象としたものが多い(Hewitt & Flett, 1990, 1991; 大谷・桜井, 1995,1997; Kobori, Yamagata, Kijima, 2004など)。しかし,完全主義と称される人格特性は青年期以降にのみ存在するものでなく,幼児期からその特性は見られると考えられる。多くの完全主義研究は自己評定による質問紙調査によってなされているが,幼児を対象に検討しようとする場合,他者評定にならざるを得ない。その評定者となるのは幼児の最も身近な存在である親もしくは保育者であるが,両者の評定は一致するのであろうか。そこで,本研究では縦断データに基づく親評定と保育者評定の比較を通して,他者評定による幼児の完全主義について検討する。
方   法
対象:大阪府内の幼稚園の2013年度3歳児クラス(男児:64名,女児35名),2014年度4歳児クラス(男児:68名,女児42名),2015年度5歳児クラス(男児:68名,女児42名)。
手続き:対象児の親と担当保育者(各年度により異なる)に,「幼児用完全主義尺度(19項目)」(西元, 2013)について5段階評定を依頼した。評定時期は各年度末(2〜3月)であった。先行研究(西元, 2016)で3因子構造が確認されているため,各因子の合計得点を完全主義因子得点(「こだわり・心配(10項目)」得点(50点満点),「完全願望(4項目)」得点(20点満点),「高目標設定(5項目)」得点(25点満点))として分析に用いた。

結   果
 性差:t検定の結果,保育者評定(3歳児:「こだわり・心配」,4歳児:「完全願望」)にのみに有意な性差が見られた(男児>女児)。評定者間・年齢間の相関:親評定と保育者評定について相関係数を算出した結果,有意な相関はみられなかった。年齢間の相関関係を分析した結果,親評定にはいずれの年齢間にも有意な相関がみられたが,保育者評定は一部の年齢間に有意な相関が見られた(Table 1)。親評定と保育者評定の差:親評定と保育者評定それぞれの得点とt検定の結果をFigure 1〜3に示す。有意差のある因子得点は年齢により異なり,また「こだわり・心配」「完全願望」は保育者の方が高く評定し,「高目標設定」は親のほうが高く評定していた。
考   察
 性差,相関関係の結果から親・保育者間及び保育者間の評定に違いが示され,差の検定結果では親あるいは保育者が高く評定する要素に違いがみられた。このことは,親は家庭等で観察し,限られた子どもとの比較であるのに対し,保育者は集団場面で複数の子どもとの比較となり,評定の視点が異なるためと考えられる。今回の結果から,幼児の完全主義という人格特性を捉える上で,場面と評価基準を考慮することの必要性が示唆されたと考えられる。