The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH12] 社会情動的スキルの育成に対する保育者の意識

大宮明子1, 石田有理2 (1.十文字学園女子大学, 2.十文字学園女子大学)

Keywords:社会情動的スキル, 保育者

問   題
 近年,幼児期における教育がその後の生涯にわたる発達に影響を与えることが大きく注目されている(e.g.,Heckman, 2006)。特に,目標の達成,他者との協働,情動の制御にかかわる社会情動的スキル(いわゆる非認知能力)はその後の発達にとって重要であるとされる(OECD,2015)。大宮・石田(2016)によると,就学前に保護者は文字や数などの認知能力を身に付けさせたいと考え,そのために具体的に取り組んでいるが,社会情動的スキルについては身に付けさせたいと思っていても,意識的な取り組みがなされていないことが多いことが明らかにされている。また,他者との協働などは集団生活での経験を通じて獲得される側面もあると考えられ,家庭だけでなく保育現場での取り組み,家庭との連携が必要であると考えられる。そこで本研究は,保育現場において保育者が社会情動的スキルの育成をどの程度意識しているのか,またその育成のために具体的にどのようなことを行っているのかについて明らかにし,大宮・石田(2016)の結果と照らし合わせて,保護者と保育者の意識の異同や,家庭と保育の場の連携への示唆を得ることを目的とした。
方   法
対象者 神奈川県A市公立・私立保育園に勤務する保育者207名。
材料 大宮・石田(2016)で保護者に対して使用した質問紙において社会情動的スキルに関する質問を参考に,就学までに身に付けておくことが必要かどうかを14項目抽出し(表1),「絶対必要」から「全然必要ではない」の4件法による回答を,「絶対必要」「まあ必要」と回答した場合に,保育の中で意識的に行っていることの有無について3件法による回答を,さらに意識的に行っている場合にはその具体的な方法を選択式または自由記述による回答を求める質問紙を作成した。
手続き 質問紙を園で配布し,後日回収した。
調査時期 2017年1月。
結果及び考察
 多くの項目に関して,就学前に身につけておく必要があると考える保育者が多かった。しかし,「自分なりの方法で確かめる」「いろいろな友達と仲良く遊べる」「自己主張できる」「自分で考えて行動できる」等の項目については,必ずしも必要でないと考える保育者が一定数いた。また保育の中で意識的に取り組まれていることが多かったが,「納得がいくまで自分なりの方法で確かめようとする」,「一つのことに集中できる」,「わからないことを質問できる」の項目では,2割程度の保育者が意識的な取り組みをしていなかった。
 大宮・石田(2016)では,「納得がいくまで自分なりの方法で確かめようとする」等を身に付けておくことが必要だと考えている保護者が少なく,具体的に取り組んでいる比率も低かった。上述のとおり,この項目においては,保育者が意識的に取り組んでいる比率が他と比べて低い。このように,家庭でも保育現場でも,意識的な取り組みが十分ではない項目があることが明らかになった。今後の課題は,認知機能の発達を基盤とした社会情動的スキルを構成する各要素の発達過程を踏まえた目標設定と育成の在り方,及び評価方法を検討することである。