The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH14] 教職キャリアの発達課題仮説の提案Ⅰ

小・中・高校教師経験者からの提案

高木亮1, 高田純2, 藤原忠雄3, 長谷守紘4, 清水安夫5, 門原眞佐子6 (1.就実大学, 2.香川大学, 3.兵庫教育大学, 4.名古屋大学大学院, 5.国際基督教大学, 6.就実大学)

Keywords:教師, キャリア発達, 発達課題

課題意識
 教師のストレスに関する研究は,“多忙”などの類似概念の検討も含めたれば,優に300超の研究蓄積がなされている。平成28年度施行の労働安全衛生法改正に基づくストレスチェックの実施なども考慮すれば今後はより多様で多数の実証的検討が示されることが期待できる。一方で,筆者らの調査では幸福感などとの相関を検討した場合(高木,2017.6発表準備中),ストレッサーやバーンアウト各因子間には弱い相関しかなく,“何を目的に教師という職業(以下,「教職」)をキャリアとして積み重ねていくか?”についてはストレスとは別の文脈での検討を必要と展望できる。そこで,本研究では教職に就いてから定年退職等で退職するまでの期間における幸福・充実とは何かを考えるため,発達課題とその課題・危機について小学校教諭(第六執筆者),中学校教諭(第四,五執筆者),高校教諭(第三執筆者)勤務経験のある心理学研究者とともに作成・提案を求め,教育制度研究者(第一執筆者)と臨床心理士・特別支援教育研究者(第二執筆者)により批判的検討を行う。
方法と仮説モデル構成の経緯
 同様の試みを行ったアメリカの教師教育研究としてB.E.Steffyらの6段階の教師の発達段階理論を参考として7段階の日本の教師の発達課題仮説の提案が平成28年9月になされた。その上で,第一執筆者と第二執筆者の立場より,「教職に就く以前が幅広すぎる」という点と,「ワークライフバランスや職能,健康・ストレスとの関係性の検討が必要」と指摘された。その上で,教職経験者より,暫定的に職業の能力とコンピテンスに関して7構造,ワークライフバランスについてはD.E.Superのライフキャリアレインボー理論にもとづいて6構造,健康についてはWellnessに関する議論に基づいて社会的,心理的,身体的の3構造が示され,それらが発達段階の規定概念となるとの提示がなされた。その上で,教職についての6段階の発達段階ごとに特有の質的課題とそのキッカケや危機となる危機が示された。概要をFigure1.に示す。
今後の検証の展望
 小・中・高校教諭経験を持つ心理学研究者の提案を受けて今回は教育政策及び教師ストレス研究の視点からの議論と臨床心理学的な課題と危機の議論を基に,仮説モデルとしての信頼性・妥当性の基礎的議論を行う。その上で,描画を伴う質的分析(ライフライン法およびTEM分析)を通してこの仮説の課題点を議論する(長谷,2017.9発表準備中)。今後は,教職員に対する自由記述調査の分析結果を通した検証とともに,文献研究や量的研究を追加することで健康・幸福・充実という教職キャリアの目的変数を追求する上で,各段階ごとのリスクや支援課題,支援方法論の総合的な議論を教育心理学のみならず,教育経営学,学校メンタルヘルス学など多角的に検討を進める。
参考文献・附記
・全米キャリア発達学会 (著),仙﨑 武・下村 英雄(監訳)2013 『D・E・スーパーの生涯と理論』 誠信書房.・Steffy,B.E.,Wolf,M.P.,Pasch,S.H., &Billie,E.J.著,三村隆男(訳)2013『教師というキャリア』雇用問題研究会
 科学研究費補助金挑戦的萌芽研究,16K13542「教職キャリアにおける発達課題の基礎研究」(代表高木亮)の助成を受けた。