The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH19] 物語の展開に関する期待を促進するイメージの分析

テキストマイニングの手法を用いて

伊藤尚枝 (恵泉女学園大学)

Keywords:物語, ネットワーク分析, イメージ

問   題
Green & Brock(2002)は,読者が物語に集中している時には,その世界に関する鮮やかなイメージを抱いていると指摘する。本研究では,物語の展開に関する期待に 応じて,読解中に抱いている物語世界のイメージがどのように異なるのかを自由記述の手法を用いて調べる。
方   法
実験参加者 女子大生42名(19~22歳)
呈示文 「スチュワーデス志願」(1200字程度)を, 一部改変して使用した(女のレポート編集部編,2010,pp.44-45)。あらすじをTable 1に示す。
手続き 呈示文を2つに分けて呈示した。最初に,第2段落まで黙読してもらったあと,Table 1の下線部について,質問1に答えてもらった。
質問1=若い女性達は,空港でどんなことを観察していたと思いますか?自由に記述してください。 
続いて,第3段落を呈示して,質問に答えてもらった。
質問2=1人の若い女性が「私」に声をかけた時,その女性は,どの程度不安な気持ちだったと思いますか?
質問3=この文に続きがあるとしたら,その若い女性は 将来スチュワーデスになると思いますか?
質問2は,「少し不安(1点)」~「とても不安(8点)」までの8件法で回答してもらった。質問3は「全くそう思わない(-4点)」~「とてもそう思う(+4点)」までの8件法で回答してもらった。
結果と考察
(1)スチュワーデスになれると思う程度(質問3)
得点順に並べて,得点の高い上位12名を高群として,下位10名を低群とした。残りの20名は,分析から除外した。2群に有意差が認められたので(Table2 下段),高群のほうが低群よりも,女性が将来スチュワーデスになるという期待を発生させていたといえるだろう。
(2)女性が空港で観察したことの自由記述(質問1)
2群ごとに,自由記述文をRMeCabで解析した。名詞,動詞,形容詞だけを対象にして,「あこがれ」「働く」「仕事」と共起する単語同士を線で結んでネットワークマップを作成した。高群のほうが(Figure 1)低群よりも(Figure 2),登場人物の女性達が羨望の目で見つめる空港の様子をイメージできているようである。
(3)若い女性の不安の程度(質問2)
2群の平均値に有意な差があったので(Table 2上段),高群のほうが低群よりも,女性の不安な気持ちを共感できていたといえるだろう。自由記述文(質問1)の結果を考え合わせると,登場人物の憧れる世界をイメージしている読者ほど,女性の不安な気持ちに共感して,結果として展開に関する期待が発生しやすくなるのだろう。