The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH32] 時系列にみる教育実習生の省察の変容

岩澤美咲1, 高橋知己2 (1.上越教育大学大学院, 2.上越教育大学)

Keywords:教育実習, 省察, 実習記録ノート

問題の所在と目的
 教育実習とは,教員を志す者が最初に教師である自分を意識する機会である。ショーン(1983)は教師の省察の重要性を指摘し,「行為の中の省察」の概念を構築した。経験を積んだ教師は行為の中の省察により,行為を選ぶことができるが,初めて学校現場に赴く教育実習生はどのような「省察」を行っていくのだろうか。本研究においては,実習生の視線の変容に注目して,彼らの成長の過程を教育実習中の出来事や反省等を毎日記入する実習記録ノートにより分析し,実習生の変容過程について検討することを目的とする。
調査及び分析の方法
 教員養成系の大学生3名が行った中学校教育実習(15日間)の実習記録ノート内の経過日及び研究・反省・感想などに関する記述(25,545文字)を分析の対象とした。分析の手続きとしては,① KH Coderを用いて形態素解析を行い,② その分析結果から「外部への視線」と「内部への視線」の2つの枠組みに分類した。外部への視線とは,「記述者が観察する周囲の状況への認識」であり,内部への視線とは,「記述者自身が感じた自らの内面への語りをさす」と定義した。そして, ③枠組みの出現数を週ごとにまとめ,χ²検定を行った。
結果と考察
 検定した結果は有意だった(χ²(2)=9.562,p<.01)。 調整された残差の検定によると,教育実習1週目は,外部への視線が有意に多い( z=3.076,p<.01)。自らが授業を実践するということを見据えた上で,担当教師や生徒に関する情報を収集しようとする態度が反映されていると思われる。2週目に入ると,内部への視線に有意傾向が表れている(z=-1.956,p<.10)。2週目には実際に授業を行う機会が増え始め,それに伴う内省や決意が影響するものと思われる。1週目,2週目と違い,3週目には,有意差は認められなかった。実習期間が終了することに伴い,心覚えに生徒たちの様子を観察した事象,総括として自身の実習を顧みた記述が,1週目,2週目に比べ均等に表れたことが影響したと考えられる。教育実習において実習生は,1週目が情報収集のための期間,2週目は内省に基づく行為の修正となる期間とするならば,3週目はそれらを経験した上での省察と行為を統合していく期間を経て変容していることがわかった。徐々に両方の視線を統合していくことが,教師として「行為の中の省察」により,行動を選択していけるようになると考えられる。