The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH35] 看護学臨地実習における教員・実習指導者が学生の実習適応感に与える影響

学生が認知した教員・実習指導者の役割に着目して

コウ ケイホウ1, 竹田千佐子#2, 脇田貴文3 (1.関西大学大学院, 2.兵庫医療大学, 3.関西大学)

Keywords:看護学臨地実習, 実習適応感

問題と目的
 看護基礎教育における看護学臨地実習(以下,臨地実習とする)は,看護実践能力を身につけるための貴重な学習の場であると考えられる。一方,臨地実習では,状況に応じた看護実践能力が求められるため,初学者である看護学生にとっては容易なことでないと考えられる。このことは,看護学生は新しい臨地実習の場に適応するために一定の時間がかかる(厚生労働省,2011)という報告からも明らかである。
 近年,適応状態に関しては,適応そのものではなく主観的適応状態に焦点をあてた適応感に注目することがある(大久保,2005)。看護学生の実習適応感の要因として,看護学生の個人背景であることを示す報告がなされている(柴田・高橋・鹿村,2006;高橋・柴田・鹿村,2006)。一方で臨地実習は,様々な人との関わりの中で展開されるため,個人背景だけでなく,関係性の中で捉えていくことも必要であると考えられる。
 臨地実習においては,看護学生と支援者との信頼関係の重要性が指摘されているが(隅田・細田・星,2013),信頼関係がどう影響するかについての研究はされていない。本研究では,看護学生の指導的な役割を果たす学校側の教員と臨床側の実習指導者(以下,指導者とする)との関係性に焦点をおき,看護学生が認知する教員・指導者に対する信頼感の中でも役割に注目して,実習適応感との関係について明らかにする。
方   法
調査対象:看護系大学6校に在籍している看護学生4年生,470名。
質問紙:1.実習適応感 青年用適応感尺度(大久保,2005)を基に,項目の文頭に「実習時」を加え,実習適応感尺度として測定した。
2.看護学生の教員・指導者に対する信頼感 生徒の教師に対する信頼感尺度(中井・庄司,2008)を基に,項目の「教師」を「教員」・「指導者」にそれぞれ変更し,教員・指導者に対する信頼感尺度として測定した。
結果と考察
 始めに,3つの尺度に関して,それぞれの因子構造を確認するために因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行った。また,各下位尺度の信頼性係数の推定値としてCronbach’s αを求めた。実習適応感尺度では,「安心」,「目的意識」,「周囲との関係」の3因子,教員・指導者に対する信頼感では,それぞれ「安心感」,「不信」,「役割遂行評価」の3因子が見出された。α係数は,.73~.94であった。そして,各尺度の項目平均値を尺度得点として求めた。
 次に,教員・指導者に対する信頼感尺度の「役割遂行評価」のそれぞれの平均値を基に,低・高群に分類した。実習適応感の3つの尺度得点を従属変数,教員・指導者のそれぞれの低・高群を独立変数とし,2×2の2要因分散分析を行った(Table 1)。「安心」においては,いずれの群においても有意な主効果,交互作用ともに認められなかった。「目的意識」においては,教員・指導者の主効果(F(1,290)=23.07, p=.00; F(1,290)=21.63, p=.00)が認められ,それぞれの高群のほうが有意に平均値が高いことが示された。「周囲との関係」においては,有意な交互作用(F(1,290)=5.69, p=.02)が認められた。単純主効果の検定の結果,教員高群においては,指導者の低・高群に有意差が認められた。これは,看護学生が教員に対して高い「役割」を認識しているだけでなく,指導者に対しても高い「役割」を認識していることが,看護学生の実習適応感に繋がっていることを示唆している。
 本研究の結果から,教員と指導者が補完的な関係性を持ち,臨地実習を運営していくことが重要ではないだろうか。今後は,具体的に実習適応感の要因について検討していく必要があると考えられる。