The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH40] 中学校の理数系教科書における問いの機能に関する検討(4)

科学的理解を促すための問いの並びに着目して

石橋優美1, 小田切歩2 (1.共立女子大学, 2.日本学術振興会特別研究員)

Keywords:理解, 教科書, 中学生

問題と目的
 教科書の問いは,教科内容に関する学習者の理解を促すために設定されている。理科教育では問題解決を通じて科学的概念を理解することが目指されており,問いは学習者の問題解決における思考を規定している(中山・猿田, 2015)。そこで本研究では,中学校理科の教科書の問いが,科学的概念の理解を促すという機能を果たしているのかを明らかにするため,問いの構成に着目する。具体的には,問いの並びが学習者の理解の認知プロセスに対応しているのかを検討する。理科教科書の問いに関する先行研究では,問いの形式と場面などに着目することで問いの特徴を明らかにし,日本の理科授業における問題解決活動のあり方を考察しているものの(e.g., 中山・猿田・森・渡邉,2014),学習者の認知プロセスは十分に考慮されてこなかった。本研究では,「理解すること」を「知識を関連づけること」と捉え,理解の認知プロセスを,知識の関連づけのプロセスとして示す。
方   法
 調査対象 東京都の公立中学校において占有率の高い3社の,中学校課程3年間分の理科の教科書(平成22年度発行)12冊を取り上げ,本編(「実験」や「観察」,発展的内容は除く)中の問いを分析対象とした。
 手続き まず,教科書本編中の,新たな学習内容の理解に関係のある問いをすべて取り出した。次に,各問いをその前に記述されている,原理や法則の解説および例題との関係をもとに,知識の関連づけのプロセスと対応させ, 問いを4種類に分類した(Table 1)。さらに,問いの並びとして,分類2の問いについて,それより前に関連する分類0の問い,分類1の問い,その両方があるかどうかで4つに分類した。そして領域ごとに,各並びを3社分合計し,さらに全領域を合計したものを,理科全体の各並びの数とした(Table 2)。同様に,分類3の問いについても算出した(Table 3)。
結果と考察
 まず, 分類2の問いに関する問いの並びについて,その問いに関連する分類0か分類1の問い,もしくはその両方があるかどうかを二項検定により検討した結果,有意な差があった(p<.05)。さらに,領域間で違いがあるかをFisherの直接確率計算法(両側検定)により検討した。その結果,有意な差がみられる傾向があった(.05 次に,分類3の問いに関する問いの並びについて,分類2の問いの並びと同様に,分類3の問いに関連する問いがあるかどうかを二項検定により検討した。その結果,有意な差がみられた(p<.001)領域間については,有意な差はみられなかった。
 以上より,中学校理科の教科書においては,分類2の問いの前に,関連する分類0,分類1の問いが設定されているとは言えないことが明らかになった。また,分類3の問いの並びに関しても同様であった。