The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH62] 計算の流暢性指導における行動に着目したアセスメント・指導の事例的検討

真名瀬陽平1, 野呂文行2 (1.筑波大学大学院, 2.筑波大学)

Keywords:流暢性, 計算, アセスメント

問題と目的
 基礎的数的事実の計算のような学習の基礎となるようなスキルは,正確さと速さを組み合わせた流暢性を改善することが重要であると捉えられている(Binder,1996;野田,2011)。本研究では,繰り上がりの計算に対して,計算方略の指導の効果,および,計算を行うための要素スキルの流暢性(Johnson,& Laying,1992)を調査することで,対象児の困難さに着目したアセスメント・流暢性指導の効果を検証することを目的とした。
方   法
対象児:通常学級在籍の小学校3年生。繰り上がりのある加算を指を用いて行う様子が見られた。
研究開始前に,保護者に口頭で研究について説明し,参加・外部への発表の同意を得た。
フォーマルアセスメント:WISC-Ⅳを実施。FSIQ89,VCI93,PRI89,WMI94,PSI88。
標的行動及び従属変数:標的行動は,プレテストでは,計算問題に書字で正しい答えを表出すること,介入期では,PCの画面上に出された計算過程の図において,空欄に当てはまる数字を正しく口頭で表出することであった。従属変数は書字・口頭による1分間タイムトライアルにおける計算問題の正答数・誤答数,介入における計算過程での誤答数であった。また,指の使用の有無も測定した。
教材:繰り上がりのある加算(例:9+5)を各5問ずつ2セット設定した。介入期Ⅰでは計算過程を視覚的に示したスライドを使用した。
BL条件では,A4版1枚に40問かかれたものを使用した。介入Ⅱでは,要素スキルの3C学習法を行うシートを用いた。
実験デザイン:プレ・ポストデザインを用いた。これにより,計算過程への指導や要素スキルへの介入が,流暢性を向上させるのかを検討した。
手続き:1)アセスメント 要素スキルについて,1分間のタイムトライアルを行った。正誤のフィードバックは行わなかった。2)プレテスト書字による計算問題の1分間のタイムトライアルを行った。正誤のフィードバックは行わなかった。3)介入Ⅰ計算過程の指導 ①10の補数を用いた計算方法の教示,②PCによる1分間のタイムトライアル,③計算方略の確認を実施した。4)介入Ⅱ要素スキルへの介入 介入ⅠにおけるPCのタイムトライアルの前に,要素スキルの流暢性を向上させ得る3C学習法を実施した。5)介入Ⅰ 介入Ⅱの効果を検討するために実施した。6)ポストテスト 介入終了後,実施した。
結果と考察
 要素スキルの流暢性のアセスメントの結果,一桁の引き算(数の分解)において,1分間あたり,14~22問という結果になり,対象児にとっては苦手なスキルであることが考えられた。
 指導全体の結果をFig.1に示す。この結果から,計算過程を対象にした流暢性指導によって,類似した教材への計算方略の般化による流暢性の向上や苦手な要素スキルのアセスメント・指導が有効であると考えられた。