日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

2017年10月9日(月) 13:00 〜 15:00 白鳥ホールB (4号館1階)

13:00 〜 15:00

[PH63] 小学生における障害理解の程度に関する研究

障害児者に対する態度や認識を中心として

田名部沙織1, 細谷一博2 (1.北海道教育大学大学院, 2.北海道教育大学)

キーワード:障害理解, 態度・認識, 小学生

問題と目的
 障害理解教育は,子どもの年齢や理解の程度に応じた教育プログラムの必要がある(水野,2016)。そこで本研究では,通常学級に在籍する小学生の態度や認識を中心とした障害理解の程度を明らかにすることを目的とする。
方   法
 1.調査対象及び方法:A大学附属小学校3校の児童(1~6年生)1,212名を対象に,質問紙調査を実施した。調査時期は201X年8月下旬から12月下旬の4ヶ月間とした。
 2.調査内容:本研究では,「児童生徒版障害者に対する多次元的態度尺度」(楠・金森・今枝,2012)を用いて調査を実施した。質問用紙は,回答者の「基本情報(学年・性別・接触経験・知っている障害)」と「障害児者に対する仲間意識」「自発的交流性」「障害児者に関する知識」「共同的な教育」「積極的対人関係」の5つの因子からなる16項目で構成し,回答方法は「思う・わからない・思わない」の3件法である。また,1~3年生は担任教師に質問の説明文を読んでもらい実施した。なお,本研究では学校の要望や対象が小学生であることから質問の意図を変えないよう注意し,質問文の変更を行った。
 3.分析方法:回答者によって得られた結果を,得点化(思う:3点,わからない:2点,思わない:1点)し,平均を算出して,多元配置分散分析を行った。
結   果
 回収率は97.7%(1,186/1,212名)である。障害理解における因子の比較結果をTable1に示す。「障害児者に対する仲間意識」では,学年による主効果はみられなかったが,「自発的交流性」では,学年の主効果が有意であり,多重比較検定の結果,1年生>2,4,5,6年,2年生>3年生,3,5年生>6年生であることが示された。また,「障害児者に関する知識」では,学年の主効果が有意であり,多重比較検定の結果,1年生>2,3,4,5,6年生となり,「共同的な教育」も同様の結果が示された。「積極的な対人関係」では,学年での主効果が有意であり,多重比較検定の結果,1年生>2,3,4,5,6年生,2,3,5年生>6年生であることが示された。
考   察
 本研究から通常学級に在籍する小学生の障害児者に対する仲間意識は,学年に関係なく同程度であることが明らかとなった。また各因子の多重比較検定の結果から,1年生が他の学年よりも全体的に理解が高いことが示された。さらに,「自発的な交流性」「積極的な対人関係」の結果から,障害児者との交流や関わりに関する理解は,6年生が1,3,5年生よりも低いことが明らかとなった。これらのことから,1年生と2年生以降の学年には障害児者に対する理解の程度に差があるとともに,6年生になると他の学年よりも交流や関わりに関する理解が低くなる可能性が示唆された。
文   献
1)楠敬太・金森裕治・今枝史雄(2012)障害理解教育の評価に関する研究-児童生徒版障害者に対する多次元的態度尺度の開発を通して-.大阪教育大学紀要第Ⅳ部門,61(1),59-66.
2)水野智美(2016)はじめよう!障害理解教育 子どもの発達段階に沿った指導計画と授業例,図書文化社.