The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH65] 「いじめ」による仲間からの排斥が将来展望に及ぼす影響

高校生を対象とした調査から

三島浩路 (中部大学)

Keywords:いじめ, 排斥, 将来展望

目   的
 仲間からの「いじめ」により,仲間はずれにされたり,無視されたりするなどして,排斥されることにより生じる不安や抑鬱が強まることが原因で,児童・生徒の将来展望が損なわれるなど,高次の認知機能に仲間からの排斥がネガティブな影響を与えると考えられてきた。しかし,実験室実験の結果では,不安や抑鬱などのネガティブな情緒的要因が介在せず,高次の認知機能の低下や,将来に対する展望の欠如といった側面に,社会的な排斥が直接影響を与える可能性があることが示唆された(e.g., Twenge, Catanese, & Baumeister, 2003)。
 本研究では,高校生を対象にした質問紙調査を実施し,仲間からの「いじめ」による排斥,抑鬱傾向,および,将来展望に関するデータを2期にわたって収集し,仲間からの排斥が,抑鬱傾向を媒介として,将来展望を損なわせているのか,あるいは,抑鬱傾向が媒介することなく,仲間からの排斥が,将来展望を直接,損なわせているのかを,探索的に検討する。
方   法
時期・対象 
2016年6月11月の2回,A県立B高等学校の1~3年生825名(1年:280名, 2年:275名, 3年:270名)を対象に調査を行い,欠損値がない743名(男子:399名 女子:344名)のデータを分析した。
分析に用いた調査項目
仲間からの「いじめ」被害関連4項目(例:仲間はずれにされたと感じた。親しい仲間からいじめられたように感じた)。
抑鬱傾向関連2項目:嫌なことなどがあるとくよくよ悩む方だ。落ち込むことが多い。
将来展望関連2項目:この学年での今後の生活が楽しみだ。将来の自分にとって,この学校での生活は価値があると思う。
 なお,仲間からの「いじめ」被害に関する調査は,2016年6月に実施し,抑鬱傾向・将来展望に関連した調査は同年11月に実施した。
結果と考察
 仲間からの「いじめ」に関する4項目の評定値を因子分析(主因子法)した結果,一つの因子に大きな負荷量(≧.77)を示し,α係数は.87であったことからこれら4項目を観測変数とした「仲間からの排斥」という潜在変数を設けた。
 抑鬱傾向に関する2項目,将来展望に関する2項目の評定値の相関係数をそれぞれ算出した結果,
比較的強い相関がみられた(抑鬱傾向:r =.72, 将来展望:r =.49) 。そこで,抑鬱傾向に関連する2項目を観測変数とする「抑鬱傾向」という潜在変数を設け,将来展望に関連する2項目を観測変数とする「将来展望」という潜在変数を設けた。
 以上,3つの潜在変数の間に,Figure1のようなパスを加え,共分散構造分析を行った結果,データに対するモデルの当てはまりは良好であり(GFI=.99, AGFI=.97, CFI=.99, RMSEA=.047),このモデルを採用することとした。
 「仲間からの排斥」から,「抑鬱傾向」と「将来展望」に向けたパスの係数はともに有意であった(p<.01)。しかし,「抑鬱傾向」から「将来展望」に向けたパスの係数は,有意なものではなかった。以上の結果から,「仲間からの排斥」は,「抑鬱傾向」を強めたり,「将来展望」を損なわせたりする可能性があるが,「抑鬱傾向」が「将来展望」に影響を及ぼす可能性は低いと考えられる。
本研究は,日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究(C)課題番号17K04379)によるものである。