The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH66] 定時制高校における学校への適応の検討について

全日制高校との比較から

渡邉仁1, 太田正義2, 加藤弘通3 (1.北海道大学, 2.常葉大学, 3.北海道大学)

Keywords:学校適応, 社会的スキル, 高等学校

問題と目的
 今日の定時制高校(以下定時制)の生徒は,様々な事情を抱えて入学し,定時制の中途退学率は全日制高校(以下全日制)と比べて非常に高い(文部科学省,2010)。一方で,中学校時代に学校不適応だった生徒が,定時制では充実した学校生活を送る生徒もいる。多様な生徒がいる定時制における学校への適応については,全日制とは異なる要因や適応していく過程が予想される。本研究の目的は,定時制の生徒が学校へ適応する要因を明らかにすることと,学校へ適応する過程を検討することにある。

方   法
調査協力者
 全日制と定時制併置校に通う,定時制54名,全日制681名の計735名の生徒である。
調査内容
 学校への適応感尺度(大久保,2005),学校生活尺度(大久保・青柳,2004),日常生活スキル尺度(島本・石井,2006),仕事(アルバイト)に対する満足度(樋口,2007),学校外での交友関係に対する満足度(樋口,2007),家族関係に対する満足度(樋口,2007))を用い,質問紙による調査を実施した。なお,回答形式は全て「あてはまらない(1点)」から「あてはまる(5点)」までの5件法である。
調査時期
 平成28年12月中旬に実施した。

結果と考察
 Table 1は学校適応感と各尺度との相関を検討するために分散分析をした結果である。

 学校適応感との相関が強い上位は,全日制と定時制のどちらも「日常生活スキル」と「友人との関係」である。以降の相関をみると,全日制では学習活動全般に対して肯定的に捉えている生徒は学校へ適応している傾向にあると言え,先行研究の結果と一致している。一方で定時制は,教師や家族との関係を肯定的に捉えている生徒ほど学校へ適応している傾向にあると言える。定時制は中学校時代に,友人とうまくいかずに不登校,教師との対立,複雑な家庭環境等から,対人関係をうまく構築できなかったケースが多く,定時制に入学後も対人関係が学校適応を左右すると考えられる。
 また,定時制は学校外の活動(家族,校外の友人,仕事)であるにも関わらず,学校適応感との間に比較的強い相関が見られることも特徴的であり,学校外の活動と学校適応感との関係を,共分散構造分析で比較した結果がFigure.1とFigure.2である。
 Figure 1とFigure 2から,定時制は全日制よりも日常生活スキルが学校へ適応するためには重要であり,学校外の活動で身に付けた日常生活スキルを用いて学校へ適応していると思われる。これは,定時制の生徒が昼間や土日に仕事や校外の友人との交流をしたり,家にいたりと,一日の大半を学校外で過ごしていることが影響していると考えられる。これらのことから,定時制と全日制は学校への適応の仕方が質的に異なるということが言える。