The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

Mon. Oct 9, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PH75] 小中学生における登校への動機づけ尺度の開発

(2)交差妥当性および基本統計量の検討

茅野理恵1, 五十嵐哲也2 (1.信州大学, 2.名古屋大学)

Keywords:登校への動機づけ, 不登校傾向

目   的
 今後,開発された「登校への動機づけ尺度」を用いて小中学生の状況を検討するにあたり,多様な子どもたちへの適合度を検討しておくことは有用である。本研究では,「登校への動機づけ尺度」の交差妥当性の検討を目的とし,さらに基本統計量を算出し,学校段階差や性差の状況を明らかにすることも目的とする。
方   法
【対象】小中学校各2校に通う小学生4~6年生296名,中学生1~3年生706名を対象に調査を実施した。【調査内容】フェイスシートで学年,年齢,性別を尋ねた後,本研究(1)で開発された登校への動機づけ尺度12項目(「外的理由」「取入れ的理由」「同一化的理由」「内発的理由」各3項目)を尋ねた。【調査時期と手続】2016年10月上旬~12月中旬に,学級内で調査協力者である担任が無記名で一斉に実施し,その場で回答・回収された。
結   果
(1) 交差妥当性について
 先に開発した尺度と同様に,自己決定理論に則って想定される「外的理由」「取入れ的理由」「同一化的理由」「内発的理由」に項目を分類し,4因子による確証的因子分析を実施した。まず,小中学生全体について検討したところ,GFI=.925,AGFI=.878,CFI=.915,RMSEA=.093であった。次に,小学生のみについて検討したところ,GFI=.937,AGFI=.898,CFI=.949,RMSEA=.070であった。さらに,中学生のみについて検討したところ,GFI=.917,AGFI=.865,CFI=.907,RMSEA=.099であった。
 信頼性を検討するために,クロンバックのα係数を算出したところ,小中学生全体については,「外的理由」α=.84,「取入れ的理由」α=.68,「同一化的理由」α=.81,「内発的理由」α=.75であった。次に,小学生のみについて検討したところ,「外的理由」α=.84,「取入れ的理由」α=.63,「同一化的理由」α=.83,「内発的理由」α=.76であった。さらに,中学生のみについて検討したところ,「外的理由」α=.84,「取入れ的理由」α=.71,「同一化的理由」α=.79,「内発的理由」α=.74であった。
(2) 基本統計量の検討 
 以上の結果をもとに基本統計量を算出し,学校段階と性を要因とする二要因分散分析を行った(Table1)。その結果,交互作用は認められなかった。また,性による主効果も認められなかった。学校段階の主効果は,「取入れ的理由」を除く3つの下位尺度において認められ,「外的理由」は中学生が高く,「同一化的理由」「内発的理由」は小学生が高かった。
考   察
 開発時の対象者以外においても,確証的因子分析は一定の適合度が得られ,信頼性も同様であることが示された。よって,交差妥当性は証明されたと考えられる。しかしながら,「取入れ的理由」については,開発時と同様,許容範囲ではあるものの若干信頼性が低めであった。この点は,今後の課題として残される。また,自己決定性の高い動機づけは,小学生の方が高いという結果が得られたことは興味深い。今後,登校に関わる他変数との関連の検討や,学校教育に関連する事象の動機づけとの比較を行う必要があろう。
*本研究は,科学研究費補助金(課題番号:15K04058)の助成を受けた。