The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

自主企画シンポジウム

[JH03] 自主企画シンポジウム 3
主体的・能動的学びにつながる諸要因

Mon. Sep 17, 2018 1:00 PM - 3:00 PM D307 (独立館 3階)

企画・司会・話題提供:高平小百合(玉川大学)
話題提供:布施光代(明星大学)
話題提供:木村美奈子(名城大学)
話題提供:魚崎祐子(玉川大学)
指定討論:伊藤崇達(京都教育大学)

[JH03] 主体的・能動的学びにつながる諸要因

高平小百合1, 布施光代2, 木村美奈子3, 魚崎祐子4, 伊藤崇達5 (1.玉川大学, 2.明星大学, 3.名城大学, 4.玉川大学, 5.京都教育大学)

Keywords:積極的授業参加, 学習方略, 能動的活動

企画趣旨
 近年,文部科学省の主導で推進されてきた,主体的・能動的・対話的で深い学びは,様々な形で教育現場において実践されている。
 本シンポジウムでは,主体的・能動的な学びにつながる諸要因について幼児期から青年期までの学習者の立場からと教員の立場から考えたい。特に,能動的・主体的学びと幼児教育,児童の授業参加行動,大学生の学習行動との関係について,最後に,それら学習者の能動的行動を促す教員の取り組みについて検討したい。

幼児にとっての主体的・能動的な学びとは何か―保護者へのアンケート調査をもとに―
木村美奈子
 近年,変化の激しい時代となり,子どもたちには,この社会を生き抜くための新たな資質・能力が求められている。平成29年に公示された新学習指導要領は,「主体的・対話的で深い学び」をスローガンに,子どもの主体性を軸にした教育実践が行われるよう求めている。その姿勢は,幼児期の教育から始まっており,平成30年に改訂された「幼稚園教育要領解説」には,「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を示し,育てたい資質や能力を明確化することで,教育機関,家庭,地域が連携を取って教育を推し進めることが期されている。
 こうした背景のなか,では幼児期の子どもを持つ保護者は,教育機関に何を期待しているだろうか。また,幼児にとっての「主体的な学び」を実現するために,どのような活動が有効であると考えているだろうか。本研究では,幼児期の子どもを持つ保護者にアンケート調査を行い,まず,保護者が幼児の「主体的・能動的学び」をどのように捉えているか,そして,それを実現する活動とはどのようなものと考えているかを明らかにしたい。また,変化の激しい時代を生き抜くための資質・能力,特に知的な能力の育成に関して,保護者が幼児の教育機関に期待していることを明確にし,今日的な幼児教育の在り方について議論したい。

児童の積極的授業参加行動につながる児童の特性
布施光代
 主体的・能動的な学びが求められている学校教育において,いかに子どもたちを積極的に授業に参加させるのかも課題となるであろう。子どもたちの学習時間の大半を占める学校の授業への積極的な参加は,主体的・能動的な学びの一つの現れであると考えられる。これまで筆者らは,従来から積極的であると評価されてきた挙手や発言のような行動に制限することなく,授業に集中して話を聞くなどの行動も含めた授業への積極的な参加行動を「積極的授業参加行動」とし,児童の積極的授業参加行動について「注視・傾聴」,「挙手・発言」,「準備・宿題」の3側面から検討を行ってきた。
 本発表では,積極的授業参加行動に関わる児童の個人的な特性のうち動機づけとは異なる観点から検討するため,達成目標やコンピテンス,児童の性格特性を取り上げたこれまでの調査結果について報告する。能力に関する自己評価や目標の持ち方は,積極的授業参加行動を高めるのか,また,積極的授業参加行動につながるパーソナリティ特性とはどのようなものであるのかについて検討したい。

授業内容の理解につなげるための学習者による能動的な学習行動
魚崎祐子
 主体的・能動的な学習を求められるようになった昨今,注目されやすいのはディスカッションやプレゼンテーションなどといった活動を含む授業形態であるように思われる。しかし従来行われてきた講義のように,情報伝達型の授業であったとしても,学習者がそこで扱われる情報に対してどのように向かい合うのかによって,能動的な学習にも受動的な学習にもなり得るのではないだろうか。このような観点から,授業形態の面ではなく,学習者の取り組み方という面から主体的・能動的な学習について考えてみたい。
 そこで,本発表では,大学生が講義で学んだ内容をより積極的に取り込む為に,どのような工夫をしているのかということについて調査結果をもとに報告する。授業時間内外を含めてどのような工夫を行っているのか,それらの工夫はどのような学習方略と結びついているのかを探り,授業中に扱われる情報に対して学習者自身が能動的に向かいあう行動について検討する。だが,能動的にとられるこれらの行動は他者から強制されるものではないが故に,いつも実行されるとは限らない。実行を阻む要因についても探りつつ,学習者自身による学習行動の理想と現実との乖離についても考えたい。

能動的学びを促す授業の取り組みと学生の学びの能動性について
高平小百合
 高等教育におけるアクティブラーニングの推進は,文部科学省による大学教育再生加速プログラム(AP)によって促進されている。各大学においても主体的・能動的学びを促すための様々な取り組みがなされている。しかしながら,能動的学びを促すための,教員の授業における取組がどのようなものであるものか,またその取り組みを学生はどのように感じているのか,などの実践の実態や学生の学びにおける効果についての研究は,まだ多くは報告されていない。
 本研究では,教員の多様な授業における取組み,特に主体的・能動的学びを促すような授業の工夫として,どのような取り組みがあるのかを調査した。調査によって抽出された授業の取り組みは,溝上(2014)によるアクティブラーニング戦略レベルの3つのタイプを基に分類し,教員が感じた学生のジェネリックスキル(知識獲得・能動姿勢・批判的思考・問題解決・コミュニケーション・時間外学習)の変化との関係を分析した。また,学生自身が教員の授業の取り組み(学生の能動性・主体性を促す工夫)をどのくらい認識して授業を受けているのか,教員の授業の取り組みと授業を受けた学生の認識の差異についても報告する。最後に,教員が感じた学生のジェネリックスキルの変化と学生が感じた自分自身のジェネリックスキルの変化についての分析結果を報告したい。