The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PA] ポスター発表 PA(01-78)

Sat. Sep 15, 2018 10:00 AM - 12:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PA08] 乳児の対人葛藤場面における第三者の行動

藤野正和 (長崎短期大学)

Keywords:乳児, 対人葛藤, 介入行動

問題と目的
 乳幼児の対人トラブルについては,様々な研究がなされていたが,特に対人葛藤に焦点を当てた研究が多く見られる。越中(2002)は第三者の行動を「2ターンのやり取りの場合にも生ずる」と考えており,本研究においては「他者との意見が食い違う状況で,2ターン以上のやりとりが行われる状況」を対人葛藤と定義して検討を行うことした。
 乳児における葛藤場面の第3者の行動について,平均2歳1ヵ月の時期から仲間同士のいざこざに対して,当事者の一方を叱るなどの第三者による介入が出現すること,さらに第三者の介入によって,かえっていざこざが発生・発展すること(朝生ら,1988),また1~2歳児クラスでは「加勢型」と「割り込み型」が多く,また「中立的な立場での言語的介入」が見られるのは3歳以後であると示唆されている(玉井ら,1991)。対人葛藤場面への第三者の介入行動については,3歳以降研究は多くなされているが,乳児に関しての研究は少数しか見られず,また子ども同士の相互作用を扱った研究はあまり見られない。そこで本研究では,乳児の対人葛藤場面における第三者の介入行動について0,1歳児クラスの様子を観察し,対人葛藤場面への第三者の介入行動に焦点を当て,関わりの様子や介入形態について検討を行った。

方  法
観察対象児:S市内のK保育園,0,1歳児クラスの園児30名(4ヵ月~2歳7ヵ月)
観察期間:X年1月~2月のうち11日間
観察時間:午前8時から午後1時の間であり,土曜日のみ午前8時から午後5時の間であった。
観察方法:通常の保育を行いながら,乳児による対人葛藤場面への介入や援助行動が見られた際に記録を行った。観察対象児の名前及び月齢,関わりの様子,場面へ介入した結果について記録を行った。保育者による介入が見られた場合についても記録を行った。
倫理的配慮:今回の調査にあたり,園に対して研究協力の依頼を行い,事前に同意を得た。

結果・考察
1. 乳児の対人葛藤における第3者の行動
 観察された事例15事例中13事例で第3者の行動が観察された(Table1)。『加勢型』は,13事例中5事例と一番多く見られた。行動としては,加害者とみなされる一方に対して,押す,叩く,もしくは叩こうとするといった〈身体的攻撃〉が多く,被害者の代わりに物をとり返す〈代行〉,取り合いの対象物と同じものを代わりに一方に与える〈代替物の付与〉,介入の方法が加害者への〈注意〉と被害者への〈同意〉なども見られた。『中立型』は,13事例中3事例が見られた。3事例ともに葛藤の争点となっている物と同じ物,もしくはそれに代わる物を一方の当事者に与える〈代替物の付与〉が見られた。『割り込み型』は13事例中1事例見られた。この事例では,介入後に生まれた新たな二者間での対立が見られた。
2. 対人葛藤後の第三者の行動について
 今回観察することができた13事例のうち4事例に事後行動が見られた。事後行動では,被害者に対する〈慰め〉が多く見られた。しかし,本研究では事後行動を行ったのは低月齢児であったことと,また乳児の葛藤の継続時間が短いことが影響していると考えられる。

引用文献
朝生あけみ・萩野美佐子・斉藤こずゑ(1988). 0~1歳児クラスにおける子ども同士のいざこざ 日本教育心理学会第30回総会発表論文集,290‐291
越中康治(2002). 幼児の対人葛藤場面における第三者の行動.広島大学心理学研究, (1), 193-217, 2001
本郷一夫・杉山弘子・玉井真理子(1991). 保育所における乳幼児のトラブルについて(9)―子ども同士の三者関係について―.日本教育心理学会第33回総会発表論文集,91‐92