[PA12] 乳幼児をもつ保護者の絵本購入行動と購入絵本に対する意識
最近購入した絵本に関する質問紙調査および面接調査からの検討
Keywords:絵本, 絵本購入行動, 保護者の意識
目 的
現在,市場にはさまざまな種類の絵本がある中で,絵本と子どもの発達の関連を議論する際には,子どもがどのような絵本を読んでいるのか,絵本の種類といった要因も重要であると考えられるが,その点での研究の蓄積はまだ十分とはいえない。そこで本研究では,子どもが読む絵本の購入主体である保護者がどのような絵本をどのように購入しているのかという実態に関して,質問紙および面接調査を行って把握するとともに,今後の研究課題を整理することを目的とした。
方 法
調査対象者および手続き 調査対象は東京都内のこども園に通う0~5歳児の保護者とし,園を通じて全105家庭に自記式の質問紙を配布した(2017年12月)。回答は任意で,事務室設置のボックスで回収したところ39家庭分を回収し,うち37家庭分が有効回答であった(有効回答率35.2%)。なお,追跡調査への協力が可能な家庭のみ質問紙への記名を依頼した。追跡調査では記名のあった3家庭を訪問し,面接調査を行った(2018年1~3月実施)。
調査内容 質問紙は,絵本購入行動(直近に購入した絵本のタイトル・出版社・購入時期・購入方法)と購入絵本に対する意識(購入理由・絵本への好意度)に加え,日頃読んでいる絵本の選択基準や入手方法,絵本一般に対する期待等も尋ねた。面接調査では,質問紙の項目を中心として半構造化面接を行った。
結果と考察
絵本購入行動および購入絵本に対する意識のうち主要な結果と考察を述べる。
購入した絵本に関しては複数の絵本を挙げた家庭もあり,計39のタイトル・出版社が得られた(重複なし)。絵本の種類を分類したところ,創作の物語絵本が28冊(71.8%)ともっとも多かった。その他,生活習慣や季節行事を扱った知識絵本が3冊(7.7%),オノマトペや俳句等を扱った言葉遊び絵本が3冊(7.7%),しかけなどの遊びの要素を含む絵本が2冊(5.1%)だった。また,人体や動物等を扱った図鑑が3冊(7.7%)挙げられた。面接調査では「図鑑を絵本として扱うのか」という疑問が出されたこともあり,乳幼児を対象とした出版物が多様化する中で,保護者が絵本をどう定義し捉えているか検討する必要があるだろう。また,絵本の種類を要因として扱う際には,どのような基準で絵本を分類するかも今後精査する必要があると考えられる。
次に,絵本の購入は本屋19家庭(51.3%),インターネット17家庭(45.9%)とほぼ半数ずつだった。インターネット購入は直接絵本を手にとれないが,日頃読む絵本の入手方法は図書館が22家庭(59.5%)ともっとも多く,絵本購入理由に質問紙・面接の両調査で「子どもが園で気に入っていて繰り返し読んでいた絵本だから家でも楽しめると思った」ことが挙げられており,絵本に対する子どもの反応が購入行動の生起の要因となることが推察された。実際,33家庭(89.1%)の保護者は自身が良いと思って絵本を購入しているが,具体的な購入理由の自由記述を分類(重複あり)すると「テーマの良さ(教訓・生活習慣・季節)」への言及と並んで「子どもの興味/発達」が17家庭(35.1%)ともっとも多かった。したがって絵本購入行動に際しても絵本を読んでいる時と同様,親子間の相互作用が生じていることが考えられた。今後は絵本を読んでいる場面の親子の相互作用だけでなく,絵本を選択する過程において生じる相互作用についても検討することが課題となると考えられる。
付 記
本研究はJSPS科研費17H07071の助成を受けて実施した
現在,市場にはさまざまな種類の絵本がある中で,絵本と子どもの発達の関連を議論する際には,子どもがどのような絵本を読んでいるのか,絵本の種類といった要因も重要であると考えられるが,その点での研究の蓄積はまだ十分とはいえない。そこで本研究では,子どもが読む絵本の購入主体である保護者がどのような絵本をどのように購入しているのかという実態に関して,質問紙および面接調査を行って把握するとともに,今後の研究課題を整理することを目的とした。
方 法
調査対象者および手続き 調査対象は東京都内のこども園に通う0~5歳児の保護者とし,園を通じて全105家庭に自記式の質問紙を配布した(2017年12月)。回答は任意で,事務室設置のボックスで回収したところ39家庭分を回収し,うち37家庭分が有効回答であった(有効回答率35.2%)。なお,追跡調査への協力が可能な家庭のみ質問紙への記名を依頼した。追跡調査では記名のあった3家庭を訪問し,面接調査を行った(2018年1~3月実施)。
調査内容 質問紙は,絵本購入行動(直近に購入した絵本のタイトル・出版社・購入時期・購入方法)と購入絵本に対する意識(購入理由・絵本への好意度)に加え,日頃読んでいる絵本の選択基準や入手方法,絵本一般に対する期待等も尋ねた。面接調査では,質問紙の項目を中心として半構造化面接を行った。
結果と考察
絵本購入行動および購入絵本に対する意識のうち主要な結果と考察を述べる。
購入した絵本に関しては複数の絵本を挙げた家庭もあり,計39のタイトル・出版社が得られた(重複なし)。絵本の種類を分類したところ,創作の物語絵本が28冊(71.8%)ともっとも多かった。その他,生活習慣や季節行事を扱った知識絵本が3冊(7.7%),オノマトペや俳句等を扱った言葉遊び絵本が3冊(7.7%),しかけなどの遊びの要素を含む絵本が2冊(5.1%)だった。また,人体や動物等を扱った図鑑が3冊(7.7%)挙げられた。面接調査では「図鑑を絵本として扱うのか」という疑問が出されたこともあり,乳幼児を対象とした出版物が多様化する中で,保護者が絵本をどう定義し捉えているか検討する必要があるだろう。また,絵本の種類を要因として扱う際には,どのような基準で絵本を分類するかも今後精査する必要があると考えられる。
次に,絵本の購入は本屋19家庭(51.3%),インターネット17家庭(45.9%)とほぼ半数ずつだった。インターネット購入は直接絵本を手にとれないが,日頃読む絵本の入手方法は図書館が22家庭(59.5%)ともっとも多く,絵本購入理由に質問紙・面接の両調査で「子どもが園で気に入っていて繰り返し読んでいた絵本だから家でも楽しめると思った」ことが挙げられており,絵本に対する子どもの反応が購入行動の生起の要因となることが推察された。実際,33家庭(89.1%)の保護者は自身が良いと思って絵本を購入しているが,具体的な購入理由の自由記述を分類(重複あり)すると「テーマの良さ(教訓・生活習慣・季節)」への言及と並んで「子どもの興味/発達」が17家庭(35.1%)ともっとも多かった。したがって絵本購入行動に際しても絵本を読んでいる時と同様,親子間の相互作用が生じていることが考えられた。今後は絵本を読んでいる場面の親子の相互作用だけでなく,絵本を選択する過程において生じる相互作用についても検討することが課題となると考えられる。
付 記
本研究はJSPS科研費17H07071の助成を受けて実施した