The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PA] ポスター発表 PA(01-78)

Sat. Sep 15, 2018 10:00 AM - 12:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PA18] 中学生の英語および英語学習に対する信念の構造と4技能間比較

島田英昭1, 矢島裕文#2 (1.信州大学, 2.信州大学教育学部附属松本中学校)

Keywords:英語, 結果期待, 自己調整学習

問題と目的
 英語の技能習得には,授業時間の学習だけでは不十分であり,自発的な学習が必要である。その中で本研究は,英語および英語学習に対する信念に着目する。本研究の目的は,島田他(2018)が大学生とビジネスパーソンを対象に示した英語学習の信念(努力信念,能力信念,結果信念)の構造および学習行動との関係を,中学生に拡張することである。

方  法
参加者・手続き
 中学校3年生141名から不備のある回答を除き,128名(男性60名,女性68名)を対象とした。英語の授業中に以下の質問への回答を求めた。
材料
 英語および英語学習に対する信念尺度 4技能(リスニング,スピーキング,リーディング,ライティング)それぞれについて,努力信念(例:英語のリスニングの勉強をすればするほど,英語のリスニングの力が上がる),能力信念(英語のリスニングが上手な人は,もともとセンスがあった人が多い),結果信念(英語のリスニングは日常のさまざまな場面で役立つ)を5項目ずつ,合計60項目を作成した。各項目には,「1.全くそう思わない」~「5.とてもそう思う」の5段階で回答を求めた。
 英語の学習行動尺度 英語の学習を継続的に行っているかどうかを測定する11項目を用意した(例:英語の勉強時間を確保することは簡単だ)。回答方法は信念と同様であった。
倫理的配慮
 信州大学教育学部研究委員会倫理審査部会の審査を受け,承認を得た(管理番号:H28-19)。

結  果
因子構造の特定
 信念については,技能ごとに探索的因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行った。各技能で共通の2項目を除外して分析した結果,当初想定した3因子構造が,すべての技能で同様に得られた。学習行動についても同様に探索的因子分析を行った結果,1項目を除外して,1因子構造が得られた。以上の各因子の項目の内的一貫性は十分であった(クロンバックのα>.77)
 4技能の関係性 4技能の関係性を検討するために,4技能の各信念の尺度得点を算出し,Figure 1における学習行動変数とそれに関連するパスと誤差変数を除いたモデルにより,確認的因子分析を行った。その結果,十分に適合した(CFI=.991, RMSEA=.046)。一部探索的に誤差間相関を仮定した。因子間相関は,努力信念と結果信念の間が高く(r=.419),努力信念と能力信念,能力信念と結果信念の間は低かった(それぞれr=-.144, .007)。
 信念と学習行動の関係 学習行動の尺度得点を算出し,Figure 1に示すモデルで共分散構造分析を行った結果,十分に適合した(CFI=.989, RMSEA=.046)。信念から学習行動へのパスは,結果信念からのみ有意であり(β=.280, p=.005),努力信念,能力信念からは有意ではなかった(それぞれ,β=.148, p=.134; β=-.070, p=.425)。決定係数はR2=.142であった。

考  察
 信念の構造については,島田他(2018)による大学生とビジネスパーソンの結果と同様に,中学生でも3因子構造が妥当であると考えられる。また,4技能の関係性についても,島田他(2018)と一致して,4技能間の信念は共変関係にあり,4技能一体であることが明らかになった。
 学習行動に与える影響は,結果信念の影響が強かった。これは,努力信念の結果が強かった島田他(2018)と異なる。中学生は学習による具体的なメリットが学習行動につながると考えられる。

引用文献
島田英昭・鈴木俊太郎・田中江扶 (2018). 英語および英語学習に対する信念の構造と4技能間比較 信州大学教育学部研究論集, 12, 53-62.

付  記
本研究は信州大学教育学部附属次世代型学び研究開発センター公募型プロジェクトおよびJSPS科研費18K00827の助成を受けた