The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表

[PA] ポスター発表 PA(01-78)

Sat. Sep 15, 2018 10:00 AM - 12:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PA33] 電算での絵本読み聞かせの際に投影される保育士の自己像

自尊心, 共感性

光田基郎 (大阪教育福祉専門学校)

Keywords:自尊心, 共感, 電算画面

要  約
 光田(関西心’09,10,16,東北心’11-15)に続き,保育専門学校女子学生に画面で幼児用の絵本を読み聞かせ,学生が絵本に投影する自尊心,共感性と対人態度を検討する.絵本の主人公で優しいが平凡なアマガエルは, 隣のトノサマガエルと比べて裕福でも著名でもないが,この主人公が拾った携帯電話を落とし主に頼まれて届ける途中で様々な動物と出会って自分の歌声と跳躍力などで自分の存在感を確認し,自尊心(理想―現実差縮小)を得る筋立てを理解させた. 主人公と豊かなトノサマガエルのいずれが自分の理想と現実に近いか評定させた結果,「現状に満足でアマガエルの優しさが理想」など理想―現実差が小または負値を示す評定者(優しさ志向)半数と,豊かさが理想で現実に不満の「トノサマガエル希望」で理想―現実の評定点差が大きい半数(裕福志向)の2群別に自尊心,社会的スキルと共感性尺度得点の主成分分析結果と自己肯定の規定要因を指摘した.

目  的
 園児用絵本を画面で保育志望の学生に読み聞かせ,絵本に投影された自己像と主成分を知る.

方  法
(a)材料:「カエル君の宝物」(田中章博文・とりごえまり絵 東京新聞社)より上記の16画面を女声での読み聞かせ仕様で予め電算に録音・録画して専門学校生52名に画面で読み聞かせ, (b)平凡なアマガエルが1点,豊かなトノサマガエルを10点とした尺度上で自分の理想像と現実像を評定させ, 理想と現実の差の大小による2群毎に, (c)自尊心尺度(Rosenberg’65基本),社会的スキルと生活充実感(青木,’08)と共感性尺度(Davis,’83基本)から計21項の自己評定を求めて主成分分析と判別分析を試み(d)自己肯定尺度値の規定要因の判別分析を試みた.

結  果
(イ)Figure 1は上記の理想―現実差得点別にその理想/現実評定値の平均を示す。理想と現実の評定値の相関を求めて2要因相関分析した結果,(a)上記の優しさ志向群は裕福志向群より理想―現実の相関係数が大きいが理想得点は低い(1%).(b)自分に肯定的であっても理想人物との差も大きい.他方,裕福志向群は(c)理想得点が高く,理想―現実差の意識と共感性尺度値との相関係数値も高い(r=.514 vs .122)ほか,(d)自尊心尺度値と理想―現実差の相関係数値が優しさ志向群より大きい.以上より裕福志向群は,子どもの厳しい環境に直面して現実の受容よりも理想と職責・使命感を直接に表現しやすいが,優しさの放棄ではない傾向を示唆し得よう。以上,現状はトノサマガエルに近いが理想はアマガエルという自己像は大都市の保育専門学校生と中都市の基督教系女子短大生(光田、東北心‘15)の差は見られないが,理想像{自己像の中の男性依存部分と職業意識の2軸}並びに理想像の中の自尊心の比重)の検討が課題となる.
(ロ)上記の主成分分析の結果,(a)理想-現実差が小さいか負の値(優しさ志向)の群は自尊心と共感及び社会的スキルが第1-2主成分となる点は短大生と同様であるが,のびのび生活に代わって個人的苦悩(緊急時の対処に不安)が第2主成分となる点が特徴的である.(b)裕福志向群に関しては自尊心関連の項が第1主成分となる結果は短大生と同様でも,積極性に関する項目を欠く点が特徴的である.この点は短大生の空想的・奔放さと浅慮の傾向(光田,東北心‘15)と対照的と言えよう.
(ハ)「自分に肯定的」の自己評価得点が平均値を上回るか否かの判別分析の結果から,(a)優しさ志向群,裕福希望群共に「もっと自分を尊敬出来る様になりたい」の項に対して負の正準判別関数係数値を示す(-25.402 vs -23.434)結果が短大生とも共通する点が特徴的である。その反面,緊急事態への対処に関する項目(個人的苦悩)の正準判別伊関数係数値は優しさ志向群では意味を持たない点が短大生とは対照的であり,上記(ロ)の浅慮傾向の指摘とも対応させた場合は短大以上に実践的な専門学校の環境の寄与を示唆し得よう。(b)自尊心関連で「自分を駄目と思う」の逆転項目は優しさ志向群では大きな正準判別関数係数値を示す。
結論:絵本の読み手の側での絵本の登場人物に対する共感的態度の寄与の探索実験が課題となる.