[PA43] 友人との関係性が感情表出の制御に与える影響
Keywords:感情表出, 感情制御, 友人関係
目 的
本研究では,親密度の異なる友人との間で,感情表出の程度および感情表出の制御に差があるのかについて,その男女差,考慮する要因,および考慮度を含めて検討する。
方 法
北星学園大学に所属する大学生153名 (男性94名,女性59名) を対象とし,質問紙による調査を行った。予備調査の回答から親密度の異なる相手を2種類,場面を3種類設定した。親密度 (高・低) を被験者間要因,3つの場面を被験者内要因とした。設定した場面は,「講義がおわり帰るところその友人に課題であるレポートを一緒にやろうと話しかけられたが寝不足で早く帰りたかった」という寝不足場面,「その友人に腹立つことを言われイライラした」というイライラ場面,「あなたは悲しいことや悩みがあり落ち込んでいるときに,友人が楽しそうに話しかけてきた」という落ち込み場面の3つである。
感情制御・偽装については,予備調査の結果にもとづき,何も感じていないよう表出する偽装,感情の程度を抑えて表出する制御,感情を隠すべく作り笑いをしてしまう偽装大,そのままの感情を表出する表出という4つを設定し,行う程度を回答させた。考慮度については崔・新井 (1999)を参考に8項目を設定し5段階で回答させた。
結果と考察
(1)感情制御・偽装の程度
感情制御・偽装の程度について,場面ごとに親密度(2)×性別(2)×行動(4)の分散分析を行った。
寝不足場面では,性別の主効果,行動の主効果,および親密度と行動の交互作用が有意であった。行動では,偽装,偽装大,表出,制御の順に高かった。また親密度が高い場合は,偽装と表出が高く,偽装大と制御が低かった。一方,親密度が低い場合は,偽装と偽装大が高く,制御と表出が低かった。イライラ場面では,性別の主効果,行動の主効果,性別と行動の交互作用が有意であった。偽装,制御,偽装大において男性より女性のほうが高かった。表出では女性より男性のほうが高かった。男性は制御,偽装,表出が高く,偽装大が低かった。一方女性は偽装,制御,偽装大が高く,表出低かった。落ち込み場面では,性別の主効果,行動の主効果,性別と行動の交互作用が有意であった。すべての行動項目で男性より女性のほうが高かった。男性は偽装,制御が高く,偽装大,表出が低かった。女性は制御,偽装大,偽装が高く,表出が低かった。
(2)考慮要因の考慮度
8つの考慮要因について親密度(2)×性別(2)×場面(3)の分散分析を行った。
周りの雰囲気については,性別の主効果と場面の主効果が有意であった。男性より女性のほうが,また落ち込み場面,イライラ場面,寝不足場面の順で高かった。自尊心の維持については,場面の主効果が有意であった。イライラ場面,落ち込み場面,寝不足場面の順で平均値が高かった(表8, 図2参照)。自分の印象については,性別の主効果,親密度と場面の交互作用が有意であった。男性より女性のほうが高く,親密度が高い場合は,落ち込み場面とイライラ場面が高く,寝不足場面が低かった。親密度が低い場合は,落ち込み場面と寝不足場面が同程度に高く,イライラ場面が若干低かった。相手との関係については,性別の主効果が有意であった。男性より女性のほうが高かった。相手の気持ちについては,性別の主効果,場面の主効果が有意であった。男性より女性のほうが高く,落ち込み場面,寝不足場面,イライラ場面の順に高かった。自分の気持ちについては,場面の主効果が有意であった。寝不足場面,イライラ場面,落ち込み場面の順に高かった。自分らしさについては,いずれも有意でなかった。社会的ルール・道徳的規範については,場面の主効果,親密度と性別と場面の交互作用が有意であった。親密度が高い場合,男性より女性のほうが高かった。親密度が低い場合,男性では落ち込み場面,イライラ場面,寝不足場面の順に高かったが,女性では場面の差はみられなかった。
まとめ
親密度によって差が見られたのは,感情制御・偽装では寝不足場面の行動 (親密度×行動)のみ,考慮要因では自分の印象 (親密度×場面)と社会的ルール・道徳的規範 (親密度×性別×場面)であった。相手との関係については親密度の影響はみられなかった。本研究では,親密度による感情表出の差はあまり見られなかったが,場面によって調査対象者がイメージする感情に質的な相違が生じていた可能性が考えられる。今後は生起する感情カテゴリーを特定したうえでの検討が求められるであろう。
本研究では,親密度の異なる友人との間で,感情表出の程度および感情表出の制御に差があるのかについて,その男女差,考慮する要因,および考慮度を含めて検討する。
方 法
北星学園大学に所属する大学生153名 (男性94名,女性59名) を対象とし,質問紙による調査を行った。予備調査の回答から親密度の異なる相手を2種類,場面を3種類設定した。親密度 (高・低) を被験者間要因,3つの場面を被験者内要因とした。設定した場面は,「講義がおわり帰るところその友人に課題であるレポートを一緒にやろうと話しかけられたが寝不足で早く帰りたかった」という寝不足場面,「その友人に腹立つことを言われイライラした」というイライラ場面,「あなたは悲しいことや悩みがあり落ち込んでいるときに,友人が楽しそうに話しかけてきた」という落ち込み場面の3つである。
感情制御・偽装については,予備調査の結果にもとづき,何も感じていないよう表出する偽装,感情の程度を抑えて表出する制御,感情を隠すべく作り笑いをしてしまう偽装大,そのままの感情を表出する表出という4つを設定し,行う程度を回答させた。考慮度については崔・新井 (1999)を参考に8項目を設定し5段階で回答させた。
結果と考察
(1)感情制御・偽装の程度
感情制御・偽装の程度について,場面ごとに親密度(2)×性別(2)×行動(4)の分散分析を行った。
寝不足場面では,性別の主効果,行動の主効果,および親密度と行動の交互作用が有意であった。行動では,偽装,偽装大,表出,制御の順に高かった。また親密度が高い場合は,偽装と表出が高く,偽装大と制御が低かった。一方,親密度が低い場合は,偽装と偽装大が高く,制御と表出が低かった。イライラ場面では,性別の主効果,行動の主効果,性別と行動の交互作用が有意であった。偽装,制御,偽装大において男性より女性のほうが高かった。表出では女性より男性のほうが高かった。男性は制御,偽装,表出が高く,偽装大が低かった。一方女性は偽装,制御,偽装大が高く,表出低かった。落ち込み場面では,性別の主効果,行動の主効果,性別と行動の交互作用が有意であった。すべての行動項目で男性より女性のほうが高かった。男性は偽装,制御が高く,偽装大,表出が低かった。女性は制御,偽装大,偽装が高く,表出が低かった。
(2)考慮要因の考慮度
8つの考慮要因について親密度(2)×性別(2)×場面(3)の分散分析を行った。
周りの雰囲気については,性別の主効果と場面の主効果が有意であった。男性より女性のほうが,また落ち込み場面,イライラ場面,寝不足場面の順で高かった。自尊心の維持については,場面の主効果が有意であった。イライラ場面,落ち込み場面,寝不足場面の順で平均値が高かった(表8, 図2参照)。自分の印象については,性別の主効果,親密度と場面の交互作用が有意であった。男性より女性のほうが高く,親密度が高い場合は,落ち込み場面とイライラ場面が高く,寝不足場面が低かった。親密度が低い場合は,落ち込み場面と寝不足場面が同程度に高く,イライラ場面が若干低かった。相手との関係については,性別の主効果が有意であった。男性より女性のほうが高かった。相手の気持ちについては,性別の主効果,場面の主効果が有意であった。男性より女性のほうが高く,落ち込み場面,寝不足場面,イライラ場面の順に高かった。自分の気持ちについては,場面の主効果が有意であった。寝不足場面,イライラ場面,落ち込み場面の順に高かった。自分らしさについては,いずれも有意でなかった。社会的ルール・道徳的規範については,場面の主効果,親密度と性別と場面の交互作用が有意であった。親密度が高い場合,男性より女性のほうが高かった。親密度が低い場合,男性では落ち込み場面,イライラ場面,寝不足場面の順に高かったが,女性では場面の差はみられなかった。
まとめ
親密度によって差が見られたのは,感情制御・偽装では寝不足場面の行動 (親密度×行動)のみ,考慮要因では自分の印象 (親密度×場面)と社会的ルール・道徳的規範 (親密度×性別×場面)であった。相手との関係については親密度の影響はみられなかった。本研究では,親密度による感情表出の差はあまり見られなかったが,場面によって調査対象者がイメージする感情に質的な相違が生じていた可能性が考えられる。今後は生起する感情カテゴリーを特定したうえでの検討が求められるであろう。