[PA53] 児童用のコンピテンス領域別の他律的セルフ・エスティーム尺度の開発
尺度の信頼性と妥当性の検討
Keywords:他律的セルフ・エスティーム, 児童, 信頼性・妥当性
目 的
近年,セルフ・エスティーム(self-esteem)を適応的側面と不適応的側面に弁別して捉える研究が展開されている(e.g., Deci & Ryan, 1995, Kernis, 2003)。そのようななか,山崎ら(2017)は,適応的側面を自律的セルフ・エスティーム,不適応的側面を他律的セルフ・エスティームと提唱して研究を進めている。前者は非意識の測定法の必要性が論じられ,横嶋ら (2017) によって潜在連合テストを用いた測定法が開発されている。一方,後者はDeci & Ryan(1995)の随伴性セルフ・エスティームとほぼ同義の概念に位置づけられ(山崎ら,2017),外的な達成基準や他者との比較に依存して高まるセルフ・エスティームと定義される。また,他律的セルフ・エスティームは意識で捉えることが可能という理論から(山崎ら,2018),尺度の開発が行われている。他律的セルフ・エスティームには,全体と領域があり,前者を測定する尺度が賀屋ら(2018)によって開発されているが,領域別の尺度は未開発である。随伴性セルフ・エスティームで領域を捉えた測定法には,Crockerら(2003)の自己価値の随伴性尺度があるが,児童を想定した領域ではない点と,領域ごとの質問項目の違いから,領域間の影響の検討が難しい点が課題である。
児童用の尺度の領域には,学校生活で扱われるコンピテンス領域(勉強,運動など)が考えられる。また領域間の比較は,項目を全体的な他律的セルフ・エスティームと共通の質問項目を用い,それを領域ごとに問うことで可能になると考えられる。そこで,本研究では,コンピテンス領域別の他律的セルフ・エスティーム尺度の開発を行い,内的整合性と再検査による信頼性,担任教員の児童ノミネートによる妥当性の検討を行った。
方 法
調査時期・調査対象 1回目の調査は2017年11月下旬から12月上旬,2回目の調査は2018年1月上旬に実施された。小学校 (3校) の4年生から6年生484名 (男子233名,女子251名) を対象に実施した。再検査信頼性は,467名(男子220名,女子247名)を対象に分析を行った。また,各クラスの担任教員18名を対象に,児童ノミネートを行った。
コンピテンス領域別の他律的セルフ・エスティーム尺度 尺度項目は,賀屋ら(2018)の全体的な他律的セルフ・エスティームの尺度項目を用い,「勉強」「運動」「芸術・技術」の領域別にたずねた。項目は「わたし(ぼく)は,友だちよりも,よいところを多くもっている」など7項目から構成されている。評定の方法は,「1.まったくあてはまらない」から「4.とてもよくあてはまる」の4件法とした。
児童ノミネートの基準と項目 尺度の妥当性を検討するため,他律的セルフ・エスティームが高い児童の特徴を「競争意識が高く,他の児童のできや結果が気になる特徴をもつ児童」とし,各領域において,この特徴に対して最も当てはまる児童と最も当てはまらない児童を担任教員に2~3名ずつ(男女を問わず)選出してもらった。選出された児童は,勉強領域で男子48名,女子32名,運動領域で男子51名,女子34名,芸術・技術領域で男子42名,女子36名であった。
結果と考察
信頼性を検討するため,α係数を算出した。その結果,各領域の尺度の内的整合性は,全体,男女ともにα = .90~.93となった。また,再検査信頼性は,r =.75~.81の値が得られ,十分な値が確認された。次に,妥当性の検討では,性×群(当てはまる,当てはまらない)の2要因の分散分析を行った。その結果,全ての領域において群の主効果が有意になり,「当てはまらない」に選出された児童よりも,「当てはまる」に選出された児童の他律的セルフ・エスティーム得点が高い結果となった。勉強領域の結果をTable 1に示す(F(1, 76) = 19.79, p < .001)。これらのことから,児童用のコンピテンス領域別の他律的セルフ・エスティーム尺度の妥当性の一部が示された。
近年,セルフ・エスティーム(self-esteem)を適応的側面と不適応的側面に弁別して捉える研究が展開されている(e.g., Deci & Ryan, 1995, Kernis, 2003)。そのようななか,山崎ら(2017)は,適応的側面を自律的セルフ・エスティーム,不適応的側面を他律的セルフ・エスティームと提唱して研究を進めている。前者は非意識の測定法の必要性が論じられ,横嶋ら (2017) によって潜在連合テストを用いた測定法が開発されている。一方,後者はDeci & Ryan(1995)の随伴性セルフ・エスティームとほぼ同義の概念に位置づけられ(山崎ら,2017),外的な達成基準や他者との比較に依存して高まるセルフ・エスティームと定義される。また,他律的セルフ・エスティームは意識で捉えることが可能という理論から(山崎ら,2018),尺度の開発が行われている。他律的セルフ・エスティームには,全体と領域があり,前者を測定する尺度が賀屋ら(2018)によって開発されているが,領域別の尺度は未開発である。随伴性セルフ・エスティームで領域を捉えた測定法には,Crockerら(2003)の自己価値の随伴性尺度があるが,児童を想定した領域ではない点と,領域ごとの質問項目の違いから,領域間の影響の検討が難しい点が課題である。
児童用の尺度の領域には,学校生活で扱われるコンピテンス領域(勉強,運動など)が考えられる。また領域間の比較は,項目を全体的な他律的セルフ・エスティームと共通の質問項目を用い,それを領域ごとに問うことで可能になると考えられる。そこで,本研究では,コンピテンス領域別の他律的セルフ・エスティーム尺度の開発を行い,内的整合性と再検査による信頼性,担任教員の児童ノミネートによる妥当性の検討を行った。
方 法
調査時期・調査対象 1回目の調査は2017年11月下旬から12月上旬,2回目の調査は2018年1月上旬に実施された。小学校 (3校) の4年生から6年生484名 (男子233名,女子251名) を対象に実施した。再検査信頼性は,467名(男子220名,女子247名)を対象に分析を行った。また,各クラスの担任教員18名を対象に,児童ノミネートを行った。
コンピテンス領域別の他律的セルフ・エスティーム尺度 尺度項目は,賀屋ら(2018)の全体的な他律的セルフ・エスティームの尺度項目を用い,「勉強」「運動」「芸術・技術」の領域別にたずねた。項目は「わたし(ぼく)は,友だちよりも,よいところを多くもっている」など7項目から構成されている。評定の方法は,「1.まったくあてはまらない」から「4.とてもよくあてはまる」の4件法とした。
児童ノミネートの基準と項目 尺度の妥当性を検討するため,他律的セルフ・エスティームが高い児童の特徴を「競争意識が高く,他の児童のできや結果が気になる特徴をもつ児童」とし,各領域において,この特徴に対して最も当てはまる児童と最も当てはまらない児童を担任教員に2~3名ずつ(男女を問わず)選出してもらった。選出された児童は,勉強領域で男子48名,女子32名,運動領域で男子51名,女子34名,芸術・技術領域で男子42名,女子36名であった。
結果と考察
信頼性を検討するため,α係数を算出した。その結果,各領域の尺度の内的整合性は,全体,男女ともにα = .90~.93となった。また,再検査信頼性は,r =.75~.81の値が得られ,十分な値が確認された。次に,妥当性の検討では,性×群(当てはまる,当てはまらない)の2要因の分散分析を行った。その結果,全ての領域において群の主効果が有意になり,「当てはまらない」に選出された児童よりも,「当てはまる」に選出された児童の他律的セルフ・エスティーム得点が高い結果となった。勉強領域の結果をTable 1に示す(F(1, 76) = 19.79, p < .001)。これらのことから,児童用のコンピテンス領域別の他律的セルフ・エスティーム尺度の妥当性の一部が示された。