The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PA] ポスター発表 PA(01-78)

Sat. Sep 15, 2018 10:00 AM - 12:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PA67] 調理実習の授業における自己効力感を活かしたアクティブ・ラーニング「主体的・対話的で深い学び」授業実践2

西岡陽子 (大手前短期大学)

Keywords:調理実習, 自己効力感, 食に対する意識変化

問題と目的
 近年,我が国において,国民の食生活をめぐる環境が大きく変化している。
 例えば,自分で食事を作らなくても手軽に食事ができる社会環境である。それらの影響が,栄養の偏りや不規則な食事,肥満や生活習慣病の増加,食の海外への依存,伝統的な食文化の危機,子どもたちの朝食欠食など食の問題が課題となっている。また保護者となった時、子育て環境としての家庭での食事つくり,食生活の変化も大きく変化している。
 学校教育の中で調理実習には,精神的な満足と「おいしさ」の要素,味覚,臭覚,視覚,触覚,聴覚といった五感を通じてかんじるものがあり,おいしさを実感することは,調理を科学的に捉える上で,重要である(文部科学省2011)。精神的な満足や五感をフル活動できる調理実習の授業は,他の教科と違うところである。先行研究では,中学生の調理実習に対する自己効力と課題の重要度の認知と関連(中井2002),調理実習と生徒の調理に対する自己効力感の相互関連性(大森2004)があるが,短期大学生の調理実習履修生の自己効力感関連の研究はない。
 本研究では, 女子短大生を対象として,調理専攻コース外の総合学科短期大学生が,調理実習の履修体験が,履修後に,自己効力の差異が生じているのかを横断研究と縦断研究研究することを目的とし自己効力を高めることのできる調理実習の授業の検討を行った。

方  法
研究1
調査対象者 A短期大学女子学生総合学科65名(有効回答45名)
1. 17  名 2年 28 名  
2.調査期間
1回目 2017年 4月上旬
2回目 2018年 2月中旬
材 料
1.「特性的自己効力感尺度」(23項目)の測定には,成田・中里・河合・佐藤・長田(1995)の尺度を使用した。
2.実習役立ち感の意識調査
座学,実習役立ち感尺度(25項目)を作成して調査をした。3件法 各得点が高いほど役立ち感が高いことを意味する。 
3.振り返りシートを作成し,毎回実習終了後に学生が記入後提出。 記入のキーワードを取り上げ自己効力の意識調査を実施。学生自身の自己評価点記入。

手続き
 本調査は,一斉調査法で自由回答とした。フェイスシートには,実習開始時期と実習10回目終了後の調査を実施予定であるが,統計学的に処理をして研究以外の目的に使用するものではないことを説明し倫理的配慮を行った。毎回授業終了後振り返りシートを記入。

結  果
研究1
 短大生の「特性的自己効力感尺度」,「役立ち感尺度」の因子分析 研究1.各尺度の因子構造
特性的自己効力感,役立ち感尺度の2つの尺度について全て最尤法・プロマックス回転による因子分析を行った。この結果,「特性的自己効力感尺度」第Ⅰ因子0.890, 「ポジティブ感」 第Ⅱ因子0.700「前向き自己効力感」と命名した。「役立ち感尺度」は, 3因子(20項目)が抽出された。第Ⅰ因子「調理実習の役立ち感」α=.797 ,第Ⅱ因子は, 「座学役立ち感」α=.775を示した。役立ち感に対する信頼性が確認できた。 
研究2
 統計的に調理実習初回の平均点と調理実習10回実施後の平均点の差が統計的に有意か確かめた。「特性的自己効力感尺度」は「ポジティブ感」は,実習後得点は高く有意になったが,「前向き自己効力感」は,有意の差はなかった。役立ち感は, 「調理実習の役立ち感」「座学の役立感」実習後に有意に得点が高かった。

考  察
 本研究の分析結果により女子短期大学生の調理実習履修者の自己効力の分析結果により女子短期大学生が,調理実習を履修することで,調理実習の経験を重ねていくことにより,自己効力の高まる傾向が示唆された。