The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PA] ポスター発表 PA(01-78)

Sat. Sep 15, 2018 10:00 AM - 12:00 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PA68] 外国にルーツをもつ子どもの高校進学

外国人の母親へのインタビューから

齋藤由香利 (京都励学国際学院)

Keywords:外国にルーツをもつ子ども, 高校進学, 母親

目  的
 外国にルーツを持つ生徒の高校進学率は全国平均に比べかなり低いとされるが,将来のキャリアを考慮すると高校進学は乗り越えるべき壁といえる。齋藤(2017)において,外国にルーツをもつ生徒の受験の際に母親が子どもの進学意識に影響を及ぼしている事例が見られ,受験生だけでなく母親への支援の重要性が示唆された。本研究では子どもの受験を乗り越え,高校進学を果たした母親の経験,意識,受けた支援,困難であったことを明らかにし,今後の外国人の母親への支援について検討する。

方  法
調査協力者:子どもの高校受験を経験した外国人の母親2名を対象とした。
調査手続き:同意を得,母親の来日から子どもの高校受験期の経験,意識について半構造化インタビューを実施した。インタビュー時間は一人40分~60分程度であった。
分析方法:本研究では個々の事例に注目するため,事例分析を行った。子どもの高校受験に際しての母親の経験,意識,教育観から,どう考え,行動したのか分析した。

結果と考察
Aさんの事例:Aさんはペルー出身の成人した2人の娘の母親である。日本人男性との結婚を機に来日した。長女の受験前には担任から受験に関する説明等はあったが当時,通訳の派遣制度はなく,少ししか理解できなかったという。次女の受験時は長女の時から10年の年月差があり,長女の助け,母親自身の経験,日本語の上達が助けとなり,勉強,制度の理解がうまく運び,難関と言われる公立高校に進学した。Aさんは教育に関し「将来のために子どもは勉強しないといけない」と考え,それはAさん自身が親から教えられてきたことであった。
Bさんの事例:Bさんはインドネシア出身の16歳の男の子の母親である。Bさんは来日歴が長く,日本語が堪能である。しかし,三者面談などの短い時間では高校制度について十分な理解は得られず,外国人だからという配慮もなく,不十分な対応で受験制度や学校の選び方等についてわからないままであったという。そのため友達から情報,助言を得て,子どもの進学を果たした。Bさんは教育に関し「教育はなくならない。勉強は大切。武器になるから」と述べた。
 以上の事例から母親らは困難な中,何らかの支援を得,不十分を補い,子どもを支援していた。その根底には教育を重要視する教育観があることが示唆される。この教育観は母親らの親から引き継がれてきたものであり,母親への支援によって,その教育観が子どもに伝わり,世代を超えた支援に繋がると考えられる。まずは母親や子どもの周囲の人が状況を知り,困りや教育観に気づく必要がある。今後更にデータを収集し分析を深めたいと考えている。